
グリシン(3g就寝前)は睡眠の質を改善するか
言われていること
「サプリは効かない」懐疑派・一般的な認識
アミノ酸を飲んでも脳の神経伝達には影響しない。グリシンが睡眠を改善するなんて聞いたことがないし、科学的根拠がない。
研究が示すこと
- Bannai ら(2012)は、睡眠時間を通常より25%減らした状態を3晩続けた健常者に、就寝前グリシン3gを摂らせた。
- 視覚アナログ尺度で疲労感は有意に減少し、作業成績テストのうち精神運動覚醒検査(PVT)にも有意な改善が認められている。
- ただし眠気については「減少の傾向」であって有意差には届いていない。
- 機序として本サイトでは体温低下を挙げていたが、この論文が報告しているのはそこではない——血漿メラトニン濃度も時計遺伝子(Bmal1・Per2)の発現も変化せず、変化したのは視交叉上核の神経ペプチド(アルギニンバソプレシン・血管作動性腸ペプチド)だった。
- 著者らは、概日時計そのものは変わらないがSCNの機能が調節され、それが間接的に眠気と疲労の改善に寄与しうる、という慎重な言い方をしている。
- なお著者らは味の素株式会社の研究所に所属しており、同社はグリシンを製造・販売している。
睡眠を削った翌日の疲労感と反応課題の成績は、グリシン3gで改善している。ただし眠気そのものは有意差に届いておらず、「体温を下げて眠くする」という説明もこの論文の報告ではない。効果があるとしても、睡眠時間そのものの代わりになるものではない。メーカー所属の研究である点も併せて割り引いて読みたい。
GABAサプリは睡眠を改善するか
言われていること
GABAサプリマーケティング・リラクゼーション系情報
GABAは脳の主要な抑制性神経伝達物質だから、GABAサプリを飲めば脳がリラックスして確実に睡眠が改善する。GABAはメラトニンより強力な睡眠補助剤だ。
研究が示すこと
- GABAの経口摂取での血液脳関門(BBB)通過については議論が続いており、大量のGABAが末梢から中枢神経系に移行するとは考えにくいとする薬理学的な見解が多い。
- 一部の研究でGABAサプリが主観的リラクゼーション感・ストレスバイオマーカーに影響を示したが、これは腸管内のGABA受容体(腸内神経系)やHPA軸への間接的な作用によるとされる。
- メラトニン・グリシンと比較して直接的な中枢睡眠改善効果のRCTエビデンスはGABAでは弱い。
- 「脳に直接作用」というマーケティングは現時点では科学的根拠が薄い。
経口GABAが脳に直接作用して睡眠を改善するというエビデンスは弱い。間接的なリラクゼーション効果は一部示されるが、グリシン・メラトニンより優先度は低い。
グリシンはトレーニーの腱・靭帯など結合組織の回復にも役立つか
言われていること
アミノ酸補給・サプリマーケティングの一般論
グリシンはコラーゲンの主成分だから、サプリで飲めば腱や靭帯の修復が進んで回復が早まる。
研究が示すこと
- グリシンはコラーゲン分子の約1/3を占める主要構成アミノ酸で、体内のコラーゲン合成に不可欠なのは事実。
- ただし「グリシン単体のサプリで腱・靭帯の修復が高まる」ことを直接示した研究は、本サイトが収録している範囲には無い。
- 近いのは Shaw ら(2017)で、運動1時間前にビタミンC強化ゼラチン15gを摂ると、血中のコラーゲンI型アミノ末端プロペプチド(PINP)が2倍になった。
- ただしPINPは運動だけでも上がっており(プラセボ群で53.9%)、15g群でのみさらに有意な増加があったという関係である。さらに著者らは「この増加が腱・靭帯・軟骨のコラーゲン合成による可能性は極めて低い」「血中PINPは一般に骨代謝のマーカー」と明記し、生体内の結果は骨のコラーゲン合成を反映すると考えられるとしている。ただし力学特性を測ったのは被験者の腱ではなく、その血清で処理した組織工学的に作製した靭帯であり、被験者は8名と極めて小規模である。
- ケガの発生率や関節痛は測定していない。
グリシン単体で結合組織が強くなるという根拠は、本サイトには無い。ゼラチン+ビタミンCについては合成マーカーが動いたという小規模な結果があるが、実際のケガの減少まで示した研究ではない。
関連するサプリ
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メラトニン原発性睡眠障害では、入眠潜時の短縮と睡眠の質の改善が報告されている。 成人・小児の19件のRCT(計1,683名)のメタ分析で、入眠潜時が平均7.06分短縮(95%CI 4.37〜9.75、p<0.001)、総睡眠時間が8.25分延長(95%CI 1.74〜14.75、p=0.013)、睡眠の質の標準化平均差は0.22(95%CI 0.12〜0.32、p<0.001)だった(Ferracioli-Oda 2013)。著者ら自身が効果を「控えめ」と表現している。

コラーゲンペプチドこの試験が用いたのはビタミンC強化ゼラチンであり、加水分解コラーゲンペプチドではない。 ゼラチンと加水分解コラーゲンは同じ製剤ではないため、以下はゼラチンの結果をコラーゲン製品に当てはめた外挿である。
収録した2件のうち、コラーゲン合成マーカーを測ったRCT(男性8名)が用いた製剤は購入対象と一致しません。 同試験の介入はビタミンC強化ゼラチンで、加水分解コラーゲンではありません。もう1件のメタ分析(変形性関節症のサプリ20種を統合)にはコラーゲン加水分解物が含まれ、関節の疼痛・機能を扱っていますが、著者らはエビデンスの質を「非常に低い」と評価し、中期・長期では臨床的に意味のある改善を示したサプリは無かったとしています。皮膚への効果を評価した研究は収録していません。
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出典
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吉崎 槙吾
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原発性睡眠障害を対象としたメタ分析では、メラトニンは入眠潜時を平均約7分短縮し、総睡眠時間を約8分延長した。著者ら自身が効果を「控えめ」と表現している。 時差ぼけについては別のコクランレビューがあり、目的地の就寝時刻近くに摂った場合の軽減が報告されている。用量については、原発性睡眠障害のメタ分析から「何mgが最適か」を決めることはできない。日本ではメラトニンは医薬品に該当するため、使用は医師に相談すること。
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吉村 浩嗣