クレアチンは脳にも効くのか? 記憶力・認知機能との関係を研究で確認する
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クレアチンって脳にも効果があるって聞いたけど、頭が良くなるの?
クレアチンは筋肉だけでなく脳のエネルギー代謝にも関わっており、研究では特に睡眠不足の状態や、食事からのクレアチン摂取が少ないベジタリアンで、記憶力・処理速度など一部の認知課題のスコアに改善が報告されている。収録している Avgerinos ら(2018)が報告しているのは、若年者では認知課題の成績が変化しなかったことと、多くの認知領域で結果が一致しなかったことである。
なぜクレアチンが脳に関係するのか
クレアチンは筋肉だけでなく、脳でも使われている。 収録している Rae ら(2003)は、クレアチンが脳のエネルギー恒常性で中心的な役割を果たし、細胞質とミトコンドリアのATPおよびADPのプールに対する時間的・空間的な緩衝役になっていると述べている。これが研究の出発点になっている。
睡眠不足時には、単回摂取でも一部の課題成績が改善
21時間に満たない断眠下でクレアチンを単回摂取させた試験(Gordji-Nejad ら 2024)では、PCr/Pi・ATP・tCr/tNAA が変化し、pHの低下が防がれ、認知パフォーマンスと処理速度が改善したと報告されている。この試験で使われたのは体重1kgあたり0.35gという単回の急性摂取である。収録している Rae ら(2003)が用いたのは1日5gを6週間である。日常的な少量摂取や、複数日にわたる摂取でも同じ効果が出るかは、この研究だけでは分からない。
- 0.35g/kg
- 断眠試験で使われた単回摂取量
- 21時間
- この試験での断眠時間
ベジタリアンでは食事から摂るクレアチンが少ない
クレアチンは体内でも合成されるが、赤身肉や魚などの食品からも摂取される。そのため肉や魚をほとんど食べないベジタリアン・ビーガンは、食事から摂るクレアチンが少ない。45名のベジタリアンを対象にした二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験では、1日5gを6週間摂取したグループで、ワーキングメモリ課題(逆唱課題)と推論課題(レーヴン漸進的マトリックス)の成績がプラセボと比べて有意に改善した。ただしこの試験は脳内のクレアチン濃度を測定しておらず、「脳内クレアチンが少なかったから改善した」という機序まで示したものではない。食事からの摂取が少ない集団で改善が観察された、というところまでが言えることになる。
- 5g/日 × 6週間
- ベジタリアン対象試験の摂取量
健常な若年者では認知課題の成績が変化しなかった
6件のRCT・281名を対象にした系統的レビュー(Avgerinos ら 2018)は、短期記憶と知能/推論はクレアチン投与で改善しうるという証拠があった一方、長期記憶・空間記憶・記憶走査・注意・実行機能・反応抑制・語流暢性・反応時間・精神的疲労では結果が一致しなかったとしている。若年者では認知課題の成績は変化しなかった。ベジタリアンは肉食者より記憶課題でよく反応したが、他の認知領域では差が見られなかった。 著者らは、高齢者やストレス下にある人での有益性の可能性を示唆しつつ、他の認知領域への効果は不明のままだと結論している。
用量と期間、そして言えないこと
ここまでの研究で使われた摂取量は2通りである。慢性摂取の試験(Rae ら 2003)で使われたのは1日5gを6週間である。断眠下の試験で使われたのは、体重1kgあたり0.35gの単回摂取である。収録した抄録は投与量を分類しておらず、維持量との比較も行っていない。 一方で、これらの研究はいずれも一部の認知課題のスコア改善を示す範囲にとどまり、認知症の予防やアルツハイマー病への効果を示したものではない。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文15件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 収録している3件(Avgerinos 2018 の系統的レビュー、Gordji-Nejad 2024 の断眠下RCT、Rae 2003 のベジタリアン対象RCT)の抄録が報告しているのは、領域ごと・集団ごとの結果と投与条件までで、効果量の大小も、維持量との比較も述べていない。 それにもかかわらず「効果は小さく一貫しない」「頭が良くなるサプリではない」と評価し、脳のエネルギー消費の数値や課題ごとの内訳、被験者数まで書いていた。該当する記述を本文から撤回して訂正履歴に移した。 ①「ただし十分な睡眠をとれている健常な若年者では効果は小さく一貫しない。」(総括)── 若年者で効果が「小さく一貫しない」という評価。Avgerinos ら(2018)が報告しているのは、若年者では認知課題の成績が変化しなかったことと、多くの認知領域で結果が一致しなかったことで、効果量の大小ではない。 ②「『頭が良くなる』サプリではない。」(総括)── 「頭が良くなるサプリではない」という総括。収録した出典はそうした評価を述べていない。 ③「脳は体重の2%程度の重さしかないのに、体全体のエネルギー消費の20%前後を使うとされる、エネルギー消費の大きい組織だ。」(第1節)── 脳の重量比とエネルギー消費の割合。この値を示せる出典を収録していない。 ④「クレアチンはクレアチンリン酸として、ATP(細胞のエネルギー通貨)を素早く再合成する『緩衝役』を担っており、この仕組みが脳のエネルギー需要が高まる場面で働くのではないか、というのが研究の出発点になっている。」(第1節)── クレアチンリン酸がATPを再合成する緩衝役だという機序の説明。収録している Rae ら(2003)が述べているのは、クレアチンが脳のエネルギー恒常性で中心的な役割を果たし、ATP・ADPのプールに対する時間的・空間的な緩衝役になっているということである。 ⑤「21時間の断眠下で被験者にクレアチンを単回摂取させた二重盲検クロスオーバー試験では、プラセボと比べて言語・論理・数的処理課題の処理速度や、単語記憶課題の成績が有意に改善した。」(第2節)── 課題ごとの結果。Gordji-Nejad ら(2024)の抄録は課題別の内訳を報告していない。 ⑥「ただしこの試験で使われたのは体重1kgあたり0.35g(体重75kgでおよそ26g相当)という、通常の維持量(1日3〜5g)よりはるかに多い単回の急性摂取であり、被験者も15名と少ない。」(第2節)── 命題は3つある。(a) 体重75kgで約26g相当という換算、(b) 通常の維持量(1日3〜5g)より多いという比較、(c) 被験者15名という人数。維持量の目安も被験者数も、抄録に無い。 ⑦「健常な若年者では効果が小さく一貫しない」(第4節の旧見出し)── 「効果が小さく一貫しない」という評価が見出しに入っていた。 ⑧「6件のRCT・281名を対象にした系統的レビューでは、高齢者では短期記憶・推論課題の成績向上が報告された一方、十分な睡眠をとれている健常な若年者では認知課題の成績に目立った変化はみられなかった。」(第4節)── 改善を高齢者に限定した記述。抄録は改善を集団で限定せずに述べている。 ⑨「研究間で摂取量・摂取期間・測定した認知課題がバラバラで、定量的なメタ分析(複数研究の効果量を統合する解析)ができないほど結果にばらつきがあったことも報告されている。」(第4節)── 定量的なメタ分析ができないほどばらつきがあったという記述。抄録はそう述べていない。 ⑩「『クレアチンを飲めば誰でも頭が冴える』とは言えない。」(第4節)── 「誰でも頭が冴えるとは言えない」という総括。抄録が報告しているのは領域ごと・集団ごとの結果である。 ⑪「慢性摂取の試験で使われた1日5g前後を数週間というやり方は、筋トレ目的で使われる1日3〜5gの維持量に近い。」(第5節)── 慢性摂取の量が筋トレ目的の維持量に近いという比較。維持量の目安を示せる出典を収録していない。 ⑫「一方、断眠下の試験で使われた体重1kgあたり0.35gの単回摂取は、体重70kgなら約25gに相当する実験的な大量投与であり、日常的な維持量の延長として読むことはできない。」(第5節)── 命題は3つある。(a) 体重70kgで約25gという換算、(b) 「実験的な大量投与」という分類、(c) 維持量の延長として読めないという判断。抄録は投与量を分類しておらず、維持量との比較も行っていない。 ⑬「維持量を飲んでいれば断眠時の効果が得られる、という意味ではない。」(第5節)── 維持量では断眠時の効果が得られないという判断。 ⑭「健康な脳への影響についても、効果量は小さく条件次第という前提を外さずに読む必要がある。」(第5節)── 効果量が小さく条件次第だという評価。収録した出典は効果量の大小を述べていない。 ⑮「ここまでの研究で使われた摂取量は2種類あり、性質がまったく違う。」(第5節)── 2通りの投与量を「性質がまったく違う」と分類していた。収録した抄録は投与量を分類しておらず、比較もしていない。本文は投与条件を並べるだけの書き方に改めた。
撤回した原文15件
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ただし十分な睡眠をとれている健常な若年者では効果は小さく一貫しない。
『頭が良くなる』サプリではない。
脳は体重の2%程度の重さしかないのに、体全体のエネルギー消費の20%前後を使うとされる、エネルギー消費の大きい組織だ。
クレアチンはクレアチンリン酸として、ATP(細胞のエネルギー通貨)を素早く再合成する『緩衝役』を担っており、この仕組みが脳のエネルギー需要が高まる場面で働くのではないか、というのが研究の出発点になっている。
21時間の断眠下で被験者にクレアチンを単回摂取させた二重盲検クロスオーバー試験では、プラセボと比べて言語・論理・数的処理課題の処理速度や、単語記憶課題の成績が有意に改善した。
ただしこの試験で使われたのは体重1kgあたり0.35g(体重75kgでおよそ26g相当)という、通常の維持量(1日3〜5g)よりはるかに多い単回の急性摂取であり、被験者も15名と少ない。
健常な若年者では効果が小さく一貫しない
6件のRCT・281名を対象にした系統的レビューでは、高齢者では短期記憶・推論課題の成績向上が報告された一方、十分な睡眠をとれている健常な若年者では認知課題の成績に目立った変化はみられなかった。
研究間で摂取量・摂取期間・測定した認知課題がバラバラで、定量的なメタ分析(複数研究の効果量を統合する解析)ができないほど結果にばらつきがあったことも報告されている。
『クレアチンを飲めば誰でも頭が冴える』とは言えない。
慢性摂取の試験で使われた1日5g前後を数週間というやり方は、筋トレ目的で使われる1日3〜5gの維持量に近い。
一方、断眠下の試験で使われた体重1kgあたり0.35gの単回摂取は、体重70kgなら約25gに相当する実験的な大量投与であり、日常的な維持量の延長として読むことはできない。
維持量を飲んでいれば断眠時の効果が得られる、という意味ではない。
健康な脳への影響についても、効果量は小さく条件次第という前提を外さずに読む必要がある。
ここまでの研究で使われた摂取量は2種類あり、性質がまったく違う。
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