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研究 vs 勘

クレアチンモノハイドレートとクレアルカリンについて、収録した出典が言える範囲

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「クレアルカリンはpH調整でモノハイドレートより吸収率が高く、少量で同等の効果が得られる」という主張は根強い。価格差を示せる出典も、形態間の優劣を比べた研究も、本記事は収録していない。

Round1

クレアルカリンはモノハイドレートより吸収率・筋肉蓄積量が高いか

言われていること

クレアルカリン製品のマーケティング、一部のサプリ系YouTuber

クレアルカリンはpHを調整することでクレアチンが胃酸によって分解(クレアチニン化)されるのを防ぐ。そのためモノハイドレートより吸収率が高く、半分以下の量で同等の筋クレアチン貯蔵量が得られる。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Jäger ら(2011)の抄録が述べているのは次のことである。 クレアチンモノハイドレート(CM)は最も広く研究され、サプリメントで最も一般的に使われてきた形態であり、補給によって筋のクレアチンおよびホスホクレアチン濃度が約15〜40%高まり、無酸素運動能力が向上し、トレーニング量が増えて筋力・パワー・筋量の向上につながることが一貫して示されている。 CMは通常の消化過程で分解されず、経口摂取したCMのほぼ99%が筋に取り込まれるか尿中に排泄される。文献上、医学的に重大な副作用は報告されていない。 新しい形態については、単独でも他の栄養素と組み合わせても、CMより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無い(little to no evidence)と結論している。 同レビューはクレアルカリンに絞った直接比較を扱ったものではない。
判定

収録している Jäger ら(2011)は、新しい形態のクレアチンがモノハイドレートより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無いと結論している。ただしクレアルカリンに絞った直接比較を扱ったものではない。

信頼度:中程度の根拠
Round2

クレアルカリンはモノハイドレートより消化器症状が少ないか

言われていること

フィットネス系フォーラム、クレアルカリン販売サイト

モノハイドレートはローディング中にお腹が張ったり下痢になることがある。クレアルカリンはpH調整のおかげで消化器への刺激が少なく、副作用を気にせず使える。

VS

研究が示すこと

  • 消化器症状を摂取量別に調べた研究も、クレアルカリンとの比較も、本記事は収録していない。
判定

消化器症状について、収録した出典から何かを示すことはできない。

信頼度:研究待ち
Round3

コストパフォーマンスを考えるとどちらが合理的か

言われていること

サプリメント業界のマーケティング

クレアルカリンは新しい技術で製造されており科学的に進んでいる。少量で済むため、1回あたりのコストを考えれば割高でもない。最新のサプリを使うべきだ。

VS

研究が示すこと

  • 同レビューは、新しい形態のクレアチンがモノハイドレートより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無いと結論しており、またモノハイドレートの安全性・有効性・規制上の位置づけがほぼすべての世界市場で明確に定義されているのに対し、今日の市場にある他の形態の安全性・有効性・規制上の位置づけはそれほど明確でないとも述べている。 なお筆頭著者の所属が Increnovo LLC(サプリメント業界のコンサルティング会社)であることは、論文の書誌情報から確認できる事実である。 収録しているもう1件の Chilibeck ら(2017)は、高齢者(平均57〜70歳)721名を対象とした22件のRCTのメタ分析で、レジスタンストレーニング中のクレアチン補給が除脂肪組織量(平均差1.37kg、95%CI 0.97〜1.76、p<0.00001)、チェストプレスの筋力(SMD 0.35、0.16〜0.53、p=0.0002)、レッグプレスの筋力(SMD 0.24、0.05〜0.43、p=0.01)を有意に増やしたと報告している。
  • ただしこれはモノハイドレートと他形態の比較ではない。
判定

収録している Jäger ら(2011)は、新しい形態がモノハイドレートより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無く、規制上の位置づけも他形態のほうが不明確だとしている。価格やコストパフォーマンスについては同抄録が触れておらず、形態ごとに根拠の量を比べた資料も本記事は収録していない。

信頼度:中程度の根拠
訂正履歴訂正1回・撤回した原文9件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。 ①「高価な新型クレアチンに乗り換えるべきかどうか、系統的レビューのデータで確認する。」——価格差を示せる出典を収録していない。 ②「Jager R ら(2011)による系統的レビュー(1,480名)は、クレアチンモノハイドレートと代替形態(エチルエステル・HCl・バッファード=クレアルカリン等)を比較した結果、クレアルカリンがモノハイドレートを上回る筋クレアチン蓄積量を示したRCTは存在しないことを確認した。」——「1,480名」という人数は抄録に無い。 また同抄録が述べているのは新しい形態全般についてであって、クレアルカリンに絞った直接比較ではない。 ③「モノハイドレートの消化器症状(腹部膨満・下痢)はローディング時(20g/日前後)や一度に大量摂取した場合に起こりやすく、維持量(3〜5g/日)では大半の人に問題が生じない。」④「クレアルカリンがGI症状を有意に改善するという直接比較RCTは現時点で乏しく、この主張を支持するエビデンスは不十分。」⑤「ローディング不要・少量分割摂取で対処できるケースが多い。」⑥「一部の人に当てはまる可能性はあるが、根拠は乏しい。」⑦「モノハイドレートのGI症状は摂取量と方法で対処できることが多く、クレアルカリンに乗り換える積極的な理由にはならない。」——消化器症状を摂取量別に調べた研究も、クレアルカリンとの比較も収録していない。④の「直接比較RCTは乏しい」という研究量の評価も、そう言えるだけの検索を行っていない。 ⑧「クレアルカリンが数倍高いという事実は市場の観察であって、この論文の所見ではない。」⑨「根拠の量と明確さだけで見ても、モノハイドレートを選ぶ理由は十分にある。」——価格差を示せる出典も、形態ごとに根拠の量を比べた資料も収録していない。 なお「クレアチンが胃酸で大量に分解されるという前提は誇張されている可能性がある」は撤回していない。 収録している Jäger ら(2011)の抄録は、モノハイドレートが通常の消化過程で分解されず、経口摂取したもののほぼ99%が筋に取り込まれるか尿中に排泄されると、より強い形で述べている。本文はその記述に置き換えてある。 あわせて、この記事は一時「Jäger ら(2011)は PubMed に抄録が無い」として同レビューへの帰属をすべて撤回していたが、これは誤りだった。抄録は存在し PMC(PMC3080578)にも公開されている。PubMed の efetch が本文を返さなかっただけである。同レビューが述べる範囲は本文に復元してある。この判断の誤りは撤回ではなく訂正なので `removed` には収めていない。
    撤回した原文9件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. 高価な新型クレアチンに乗り換えるべきかどうか、系統的レビューのデータで確認する。
    2. Jager R ら(2011)による系統的レビュー(1,480名)は、クレアチンモノハイドレートと代替形態(エチルエステル・HCl・バッファード=クレアルカリン等)を比較した結果、クレアルカリンがモノハイドレートを上回る筋クレアチン蓄積量を示したRCTは存在しないことを確認した。
    3. モノハイドレートの消化器症状(腹部膨満・下痢)はローディング時(20g/日前後)や一度に大量摂取した場合に起こりやすく、維持量(3〜5g/日)では大半の人に問題が生じない。
    4. クレアルカリンがGI症状を有意に改善するという直接比較RCTは現時点で乏しく、この主張を支持するエビデンスは不十分。
    5. ローディング不要・少量分割摂取で対処できるケースが多い。
    6. 一部の人に当てはまる可能性はあるが、根拠は乏しい。
    7. モノハイドレートのGI症状は摂取量と方法で対処できることが多く、クレアルカリンに乗り換える積極的な理由にはならない。
    8. クレアルカリンが数倍高いという事実は市場の観察であって、この論文の所見ではない。
    9. 根拠の量と明確さだけで見ても、モノハイドレートを選ぶ理由は十分にある。

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  • クレアチン

    高齢者では、レジスタンストレーニングにクレアチンを加えると除脂肪量と筋力の増加が大きかった。 22件のRCT(計721名、平均年齢57〜70歳)を統合したメタ分析で、除脂肪量は平均差 +1.37kg(95%CI 0.97〜1.76、p<0.00001)、チェストプレス筋力は標準化平均差0.35(p=0.0002)、レッグプレス筋力は同0.24(p=0.01)だった(Chilibeck 2017)。若年者を対象にした同種のメタ分析を、本サイトはまだ収録していない。

  • クレアチンHCl

    新しい形態がモノハイドレートより優れているという証拠は、ほとんど無い。 クレアチンモノハイドレート(CM)と市場の新しい形態を比較したレビューは、「新しい形態については、単独でも他の栄養素と組み合わせても、CMより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無い」と結論している。さらに「CMの安全性・有効性・規制上の位置づけがほぼすべての市場で明確なのに対し、他の形態については不明瞭」だとしている(Jäger 2011)。

    購入対象は塩酸塩ですが、収録した出典が塩酸塩そのものを評価したものではありません。 新しい形態のクレアチンを扱ったレビューは「新しい形態については、単独でも他の栄養素と組み合わせても、モノハイドレートより有効あるいは安全だという証拠はほとんど無い」と結論しています(Jäger 2011)——これは塩酸塩を含むクラス全体についての結論で、塩酸塩固有のデータではありません。吸収がほぼ99%という所見と、筋内濃度を15〜40%高めるという所見はモノハイドレートについてのものです。塩酸塩とモノハイドレートを直接比較した試験は収録していません。

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吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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