
温浴と冷水浴について、収録した出典が言える範囲
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トレーニング後の回復手段として「温浴・ホットバス」と「冷水浴・アイスバス」は対照的な方法として語られることが多い。「熱で血流を上げる」「冷やして炎症を止める」という説明がよくなされるが、どちらも収録した出典が検証したものではない。 収録しているのは、就寝前の加温と睡眠(Haghayegh 2019)、冷水浴と筋肉痛(Bleakley 2012。温水浴・対比浴との比較も含む)、冷水浴と筋線維の肥大(Fyfe 2019)である。 Bleakley(2012)は冷水浴と温水浴を比べた4件を統合しているが、24・48・72時間のいずれでも痛みに差が出ておらず、組み入れ試験はいずれも小規模で質が低いと評価されている。2件の統合では自己評価による疲労が有意に低かった(MD -1.70)一方、著者らはそれ以外のアウトカムや比較について結論するには証拠が不十分だとしている。どちらが総合的に優れているかは、ここからは結論できない。
データで、白黒つけよう。
運動後の温浴はDOMSと筋肉回復に効果的だ
言われていること
フィットネス一般知識、スポーツトレーナーの習慣的指導
温かいお風呂に浸かると血流が増えて筋肉の乳酸が流れ、翌日の筋肉痛が軽くなる。
研究が示すこと
- 収録している Haghayegh ら(2019)は、就寝前の温浴・シャワーによる受動的な加温と睡眠についての系統的レビュー・メタ分析である(5,322件から17件が組み入れ基準を満たし、13件が定量的な統合に使われた)。 40〜42.5℃の加温は、主観的な睡眠の質と睡眠効率の改善と関連し、就寝1〜2時間前に10分程度行うだけで入眠潜時が有意に短縮した。 著者らは、手のひらと足裏への血流増加によって深部体温が下がり、末梢と中枢の皮膚温の勾配が大きくなって放熱が進むという機序と整合的だとしつつ、報告されている研究が比較的少なく、最適な時刻・時間や正確な機序については追加の検討が必要だと述べている。 同メタ分析はDOMSも筋回復も扱っていない。
収録している Haghayegh ら(2019)が示すのは、就寝1〜2時間前の40〜42.5℃の加温が主観的な睡眠の質・睡眠効率と関連し、入眠潜時を有意に短縮したことまでである。
アイスバス(冷水浴)は温浴より回復が優れている
言われていること
スポーツメディア、エリートアスリートの回復ルーティン紹介
プロアスリートもアイスバスを使う。冷水浴は炎症を止め、DOMSを大幅に軽減する効果がある。温浴より科学的に優れている。
研究が示すこと
- Bleakley ら(2012)のコクランレビューでは、15℃未満の冷水浴が安静・無介入と比べて運動後の筋肉痛を有意に軽減することが示されている(標準化平均差は24時間で-0.55、48時間で-0.66、72時間で-0.93、96時間で-0.58)。
- 2件の統合では、冷水浴群のほうが自己評価による疲労が有意に低かった(平均差 -1.70、95%CI -2.49〜-0.90、10段階尺度)。身体的な回復感は改善しうる方向だったが有意には達していない(平均差 0.97、95%CI -0.10〜2.05)。 ただし著者らは、それ以外のアウトカムや他の比較について結論するには証拠が不十分だと明記している。
- 対比浴や温水浴と比べた場合には痛みに差が出ておらず、17件はいずれも小規模で研究の質は低いと評価されている。
- 収録している Fyfe ら(2019)は、男性16名が7週間・週3回のレジスタンストレーニングを行い、各セッション後に冷水浴(10℃で15分、8名)または受動的回復(23℃で15分、8名)を行った試験である。レッグプレス1RMの改善は両群で同程度だった一方、II型線維の断面積の増加は冷水浴群で減弱した(-1,959±1,675µm²、効果量 -1.37±0.99)。 著者らは、運動後の冷水浴がレジスタンストレーニングによる筋線維の肥大を鈍らせたが最大筋力は鈍らせておらず、筋肥大を狙うなら運動後の冷水浴は避けるべきだと述べている。
収録している Bleakley ら(2012)のコクランレビューは、15℃未満の冷水浴が安静・無介入と比べて運動後の筋肉痛を有意に軽減したと報告している(標準化平均差は24時間で-0.55、48時間で-0.66、72時間で-0.93、96時間で-0.58)。ただし著者らは、それ以外のアウトカムや他の比較について結論するには証拠が不十分だとし、組み入れた17件はいずれも小規模で研究の質は低いと評価している。収録している Fyfe ら(2019)では、運動後の冷水浴でII型線維の断面積の増加が減弱した一方、レッグプレス1RMの改善は両群で同程度だった(16名・7週間)。収録している Bleakley ら(2012)は、冷水浴と温水浴を比べた4件についても統合しており、24・48・72時間のいずれでも痛みに差が出ていない。対比浴と比べた5件でも、4つの追跡時点すべてで差が無かった。
訂正履歴訂正3回・撤回した原文8件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 温浴について書いていた3点——「リラクゼーション・副交感神経活性化・主観的回復感に有効(Lateef 2010)」「乳酸は運動後30〜60分でほぼ代謝される」「温浴のDOMSへの直接効果を示した大規模RCTは少ない」——をすべて撤回した。Lateef(2010)を本記事は収録しておらず、乳酸の動態を測った研究も収録しておらず、研究量の評価に足る検索も行っていない。
撤回した原文3件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
温浴(39〜42℃)はリラクゼーション・副交感神経活性化・主観的回復感の改善に有効であるというエビデンスがある
ただし「乳酸を流す」という説明は不正確で、運動中の乳酸は運動後30〜60分でほぼ代謝されてしまう
温浴によるDOMSへの直接効果を示した大規模RCTは少ない
- 「温浴は睡眠改善を通じた間接的な回復促進に有効」「睡眠の質改善という実証済みのルートで回復に貢献する」という判定を撤回した。睡眠の改善が運動からの回復につながるかを調べた研究を収録していない。Haghayegh ら(2019)が示すのは、就寝1〜2時間前の40〜42.5℃の加温が主観的な睡眠の質・睡眠効率と関連し、入眠潜時を有意に短縮したことまでで、同メタ分析はDOMSも筋回復も扱っていない。
撤回した原文2件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
温浴はリラクゼーション・睡眠改善を通じた間接的な回復促進に有効
就寝前の温浴(10〜15分、40〜42℃)は睡眠の質改善という実証済みのルートで回復に貢献する
- 「アイスバスは競技間の回復に有効」という判定と、「温浴とアイスバスは目的によって使い分けるべき」という助言を撤回した。競技間の回復を調べた研究は収録しておらず、Bleakley ら(2012)が冷水浴と温水浴を比べた4件では24・48・72時間のいずれでも痛みに差が出ていない。組み入れた試験はいずれも小規模で質が低いと評価されている。あわせて、同レビューが知覚的な回復について結論していないと書いていたのも撤回した(疲労の結果は報告されている)。
撤回した原文3件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
アイスバスはDOMSの短期軽減・競技間の回復に有効だが、筋肥大目的のトレーニングには逆効果の可能性がある
「温浴 vs アイスバス」は目的によって使い分けるべきで、普遍的な「どちらが優れている」という答えはない
知覚的な回復やパフォーマンスの回復についてこのレビューは結論していない
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出典
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次に読む
- 解説
冷水浴(アイスバス)について、収録した出典が言える範囲
収録している Bleakley ら(2012)のコクランレビューが示すのは、受動的な介入(安静または無介入)と比べたときの筋肉痛の軽減である。 運動後24時間(SMD −0.55、95%CI −0.84〜−0.27、10試験)、48時間(−0.66、−0.97〜−0.35、8試験)、72時間(−0.93、−1.36〜−0.51、4試験)、96時間(−0.58、−1.00〜−0.16、5試験)のいずれでも統計的に有意だった。ただし結果は異質性が高い。 Roberts ら(2015)は、12週間のトレーニング後に筋力と筋量の増加がアクティブリカバリー群のほうが冷水浴群より大きかったと報告している(P<0.05)。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
アクティブリカバリー vs 完全休養:回復を早めるのはどちらか? 研究で比較する
「オフ日に軽く動いた方が回復が早い」と言う人もいれば、「休みの日は完全に休むのが一番」という声もある。アクティブリカバリー(軽い運動による積極的回復)と完全休養(何もしない)を、回復指標の観点から比較する。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「コンプレッションウェアで回復が早まる」は本当か? スポーツ用タイツ・スリーブの効果を検証
コンプレッション(加圧)タイツ・スリーブ・ソックスは多くのアスリートが運動後の回復用に使用している。「血流が改善してDOMSが減る」「筋肉の振動を抑えてダメージが軽くなる」という説があるが、研究的な根拠はどこまであるのか。
吉崎 槙吾


