冷水浴(アイスバス)について、収録した出典が言える範囲
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冷水浴の筋肉痛への効果と、長期の適応への影響について、収録した研究は何を示し、何を示していないのか?
収録している Bleakley ら(2012)のコクランレビューが示すのは、受動的な介入(安静または無介入)と比べたときの筋肉痛の軽減である。 運動後24時間(SMD −0.55、95%CI −0.84〜−0.27、10試験)、48時間(−0.66、−0.97〜−0.35、8試験)、72時間(−0.93、−1.36〜−0.51、4試験)、96時間(−0.58、−1.00〜−0.16、5試験)のいずれでも統計的に有意だった。ただし結果は異質性が高い。 Roberts ら(2015)は、12週間のトレーニング後に筋力と筋量の増加がアクティブリカバリー群のほうが冷水浴群より大きかったと報告している(P<0.05)。
筋肉痛への効果 ─ 収録したコクランレビューが示す範囲
収録している Bleakley ら(2012)のコクランレビューは、17件の小規模試験(計366名)を統合したものである。研究の質は低く、冷水浴の温度・時間・頻度も、運動内容や設定も試験間でばらついていた。大半の試験は、あらかじめ定めた有害事象の能動的な監視を行っていない。 14件が冷水浴と受動的介入(安静または無介入)を比べており、筋肉痛の統合結果は運動後24時間(SMD −0.55、95%CI −0.84〜−0.27、10試験)、48時間(−0.66、−0.97〜−0.35、8試験)、72時間(−0.93、−1.36〜−0.51、4試験)、96時間(−0.58、−1.00〜−0.16、5試験)のいずれでも冷水浴に有利で有意だった。結果は異質性が高い。 探索的なサブグループ解析では、クロスオーバー設計またはランニングを用いた試験でより大きな効果が示された。 2件の統合では、冷水浴群は疲労感の評価が有意に低く(MD −1.70、95%CI −2.49〜−0.90、10段階)、身体的な回復感の評価も改善しうる(MD 0.97、95%CI −0.10〜2.05)とされたが、これは冷水浴の直後の時点である。 5件が冷水浴と交代浴を比べたが、直後・24・48・72時間のいずれでも痛みに差の証拠は無かった。温水浴と比べた4件でも同様である。
長期使用で筋肥大を阻害する可能性
Roberts ら(2015)は2つの研究を行っている。ひとつは、身体的に活動的な男性21名が12週間(週2日)の筋力トレーニングを行い、各セッション後に10分の冷水浴またはアクティブリカバリーを行ったものである。 筋力と筋量の増加はアクティブリカバリー群のほうが冷水浴群より大きかった(P<0.05)。 等速性の仕事量(19%)、タイプII線維の断面積(17%)、線維あたりの筋核数(26%)はアクティブリカバリー群で増加したが(いずれもP<0.05)、冷水浴群では増加しなかった。 もうひとつは、活動的な男性9名が片脚の筋力運動を行い、その後に冷水浴またはアクティブリカバリーを行ったものである。 NCAM陽性およびPax7陽性の衛星細胞数はアクティブリカバリーのほうが冷水浴より多く(P<0.05)、p70S6キナーゼのリン酸化もアクティブリカバリーのほうが大きかった(P<0.05)。 著者らは、冷水浴が衛星細胞数と筋肥大を調節するキナーゼの活性の急性変化を減弱させ、これが長期のトレーニングによる筋力・筋肥大の伸びの小ささにつながりうるとし、運動後の回復手段として日常的に冷水浴を用いることは再考されるべきだと述べている。
使いどころについて ─ 検討した出典が無い
場面ごとの適否を比べた研究を、本記事は収録していない。 収録している Roberts ら(2015)が述べているのは、運動後の回復手段として日常的に用いることは再考されるべきだということまでである。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文9件
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- 要約に書いていた「冷水浴(10〜15℃、10〜20分)はDOMS(遅発性筋肉痛)の主観的な痛みを軽減し、一時的な筋力回復を早める効果が複数の研究で示されている」「ただし長期的に習慣化すると筋肥大の適応を一部阻害する可能性があり、筋肥大目的のトレーニーには使い方の注意が必要」、第1節の「Bleakley ら(2012)のメタ分析を含む複数のメタ分析では、冷水浴がDOMS(筋肉痛)の主観的評価を中程度に軽減する効果(効果量d≈0.4)が示されている」「血管収縮による炎症性サイトカインの移動抑制、神経伝導速度の低下による痛覚減退が主なメカニズムと考えられる」「24〜48時間後の疲労感・知覚的回復感にも改善効果がある」、第2節の「炎症は筋肥大に必要なシグナルの一部であり、慢性的な炎症抑制が適応反応を鈍らせると考えられる」「週に頻繁に行うことは筋肥大目的のトレーニーには推奨されない」、第3節の「冷水浴が最も適するのは①翌日の試合・競技のために回復を最速化したい時、②週に複数回試合がある競技期間(バスケ・サッカーのトーナメントなど)、③筋肉痛が激しく日常生活への影響を最小化したい時」「筋肥大を目的としたオフシーズントレーニング中には、毎回使うのは避けることを推奨する」——をすべて撤回した。収録している Bleakley ら(2012)は15℃未満の冷水浴を対象としているが、温度・時間・頻度は試験間でばらついており、筋力の回復も機序も扱っていない。効果量は d≈0.4 ではなく、24〜96時間の各時点で SMD −0.55〜−0.93 である。疲労感と身体的な回復感について報告されているのは冷水浴の直後の時点であって、24〜48時間後ではない。Roberts ら(2015)の抄録が挙げているのは衛星細胞と p70S6 キナーゼであって、炎症ではない。頻度を比べた研究も、場面ごとの適否を比べた研究も、本記事は収録していない。
撤回した原文9件
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冷水浴(10〜15℃、10〜20分)はDOMS(遅発性筋肉痛)の主観的な痛みを軽減し、一時的な筋力回復を早める効果が複数の研究で示されている
ただし長期的に習慣化すると筋肥大の適応を一部阻害する可能性があり、筋肥大目的のトレーニーには使い方の注意が必要
Bleakleyら(2012)のメタ分析を含む複数のメタ分析では、冷水浴がDOMS(筋肉痛)の主観的評価を中程度に軽減する効果(効果量d≈0.4)が示されている
血管収縮による炎症性サイトカインの移動抑制、神経伝導速度の低下による痛覚減退が主なメカニズムと考えられる
24〜48時間後の疲労感・知覚的回復感にも改善効果がある
炎症は筋肥大に必要なシグナルの一部であり、慢性的な炎症抑制が適応反応を鈍らせると考えられる
週に頻繁に行うことは筋肥大目的のトレーニーには推奨されない
冷水浴が最も適するのは①翌日の試合・競技のために回復を最速化したい時、②週に複数回試合がある競技期間(バスケ・サッカーのトーナメントなど)、③筋肉痛が激しく日常生活への影響を最小化したい時
筋肥大を目的としたオフシーズントレーニング中には、毎回使うのは避けることを推奨する
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出典
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- 解説
クルクミンは筋肉痛に効くのか? メタ分析が示せる範囲と吸収の問題
10件のRCTを統合したメタ分析(Beba 2022)では、クルクミン補給により筋肉痛(VAS −0.56)・血中CK(−65.98 IU/L)・TNF-α(−0.22 pg/ml)が低下し、最大随意収縮(+3.10)と関節可動域(+6.49°)が改善した。一方、IL-6 と IL-8 には有意な変化が認められていない。 用量反応解析では TNF-α について非線形の関連が示されており、増やせば比例して効くという関係ではない。著者らは「DOMSのいくつかの側面を改善しうる」という留保つきの結論に留め、長期的な影響と安全性にはより質の高い研究が必要としている。 吸収については、Hewlings & Kalman(2017)がクルクミン単体では利益が得られないとし、ピペリンとの複合体でバイオアベイラビリティが2000%増加したという報告を引いている。 NF-κB の機序、バイオアベイラビリティ約1%という数値、リポソーム型などの製剤、NSAIDsとの副作用の比較については、いずれも出典を示せない。 なお収録している抗酸化のレビュー(Yavari 2015)は、サプリメントではなく天然の抗酸化物質が豊富な食事を勧めている。
吉崎 槙吾
- 解説
フォームローラーについて、収録した出典が言える範囲
収録している Cheatham ら(2015)は、激しい運動後の筋パフォーマンスの低下と遅発性筋肉痛を軽減しうると述べている(「しうる」という限定つき)。 同レビューは、フォームローラーまたはローラーマッサージャーによる自己筋膜リリースが、筋パフォーマンスに悪影響を与えずに関節可動域を短期的に高めるように見えること、激しい運動後の筋パフォーマンスの低下と遅発性筋肉痛を軽減しうることを述べている。運動前の短時間の実施は筋パフォーマンスに影響しないようだとしている。 著者らは、この領域の文献はまだ出現しつつある段階で、方法の異質性のため最適なプロトコルについての合意は現時点で無いと結論している(エビデンスレベル2c)。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
温浴と冷水浴について、収録した出典が言える範囲
トレーニング後の回復手段として「温浴・ホットバス」と「冷水浴・アイスバス」は対照的な方法として語られることが多い。「熱で血流を上げる」「冷やして炎症を止める」という説明がよくなされるが、どちらも収録した出典が検証したものではない。 収録しているのは、就寝前の加温と睡眠(Haghayegh 2019)、冷水浴と筋肉痛(Bleakley 2012。温水浴・対比浴との比較も含む)、冷水浴と筋線維の肥大(Fyfe 2019)である。 Bleakley(2012)は冷水浴と温水浴を比べた4件を統合しているが、24・48・72時間のいずれでも痛みに差が出ておらず、組み入れ試験はいずれも小規模で質が低いと評価されている。2件の統合では自己評価による疲労が有意に低かった(MD -1.70)一方、著者らはそれ以外のアウトカムや比較について結論するには証拠が不十分だとしている。どちらが総合的に優れているかは、ここからは結論できない。
吉崎 槙吾

