亜鉛
多数の酵素・転写因子の働きに必要な必須微量ミネラル。研究で確認されているのは「欠乏を是正すると正常な状態へ戻る」方向の変化であり、足りている人がさらに足しても効果は確認されていない。
研究が進みつつある成分

購入する
(PR)研究で報告されている効果
亜鉛欠乏があるときに限り、テストステロンの回復が報告されている。 若年男性4名で食事性亜鉛を制限すると20週間後に血清テストステロンが39.9→10.6 nmol/Lへ低下し(p=0.005)、境界域の欠乏があった高齢男性9名では3〜6ヶ月の補給で8.3→16.0 nmol/Lへ上昇した(p=0.02)(Prasad 1996)。いずれも欠乏の是正であり、対象人数はごく少ない。
亜鉛が足りている人では、補給してもテストステロンは変わらなかった。 食事性亜鉛11.9〜23.2 mg/日と充足していた運動習慣のある男性14名にZMAを与えた試験では、血清亜鉛と尿中亜鉛排泄は有意に増えた(=きちんと吸収されていた)のに、血清の総・遊離テストステロンにも尿中代謝物にも有意な変化が無かった(Koehler 2009)。
免疫機能への関与は、欠乏によって障害が出るという形で確立している。 ヒトの亜鉛欠乏ではT細胞(ヘルパーT細胞)を中心とした重い免疫機能障害、血清テストステロン低下、除脂肪量の減少が記録されており、細胞レベルではNF-κBの活性化低下を介したIL-2・IL-2受容体αの発現低下が示されている(Prasad 2008)。
運動による汗・尿からの亜鉛損失は、欠乏の一因として挙げられている。 ただし同じ総説は、アスリートのミネラル欠乏の主因はおそらく食事の質であるとし、ミネラル補給がパフォーマンスを高めることを明確に示した研究はほとんど無いと結論している(Clarkson 1991)。汗の損失を補うためにサプリが必要だという主張の裏づけにはならない。
推奨摂取量・タイミング
- 推奨量と耐容上限量は年齢・性別で異なるため、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の該当区分を確認すること。 本サイトは具体的な数値を独自に示さない。
- 亜鉛欠乏の是正を目的とした用量については、本サイトは出典を示せない。 上に挙げた研究は、欠乏を人為的に作った4名と、境界域の欠乏があった高齢男性9名で起きた変化を報告したものであり、欠乏がある人に何mgを何週間与えるべきかを定めたものではない。 欠乏の有無の判断と是正は、検査と管理を伴うため医療機関で相談すること。
- 空腹時の摂取は悪心の原因になりやすいため、食後が望ましい。
注意点
- •高用量の長期摂取は銅欠乏・免疫機能低下を招く可能性がある。
- •空腹時摂取は悪心の原因になりやすいため、食後の摂取が推奨される。
- •上記の根拠はいずれも小規模である(欠乏是正の検討は4名・9名、充足者での試験は14名)。
- •足りている人がテストステロンを上げる目的で摂ることを支持する結果は、本サイトの収録範囲には無い。 摂取量を判断するなら、まず食事からの摂取量を把握することが先になる。
- •本情報は教育・参考目的であり、疾患の診断・治療を意図しない。
根拠となる研究
健康成人の亜鉛栄養状態と血清テストステロン
Nutrition, 1996
健康成人における亜鉛の栄養状態と血清テストステロンの関係を、3つの検討で調べた研究。20〜80歳の男性40名の横断解析では、リンパ球亜鉛(r=0.43, p=0.006)・顆粒球亜鉛(r=0.30, p=0.03)と血清テストステロンに正の相関がみられた。若年男性4名で食事性亜鉛を制限したところ、20週間後に血清テストステロンが39.9±7.1から10.6±3.6 nmol/Lへ低下した(p=0.005)。境界域の亜鉛欠乏があった高齢男性9名に3〜6ヶ月の亜鉛補給を行うと、血清テストステロンは8.3±6.3から16.0±4.4 nmol/Lへ上昇した(p=0.02)。いずれも無作為化もプラセボ対照も無く、介入部分は4名と9名である。 「欠乏を是正すると正常範囲へ戻る」という解釈は撤回した。抄録は正常範囲への回復とも述べておらず、亜鉛が足りている人に補給した検討も含まれていないため、充足者で上がるとも上がらないとも判定できない。
高用量亜鉛サプリ投与後の血清テストステロンと尿中ステロイドホルモン代謝物排泄 ― RCT
European Journal of Clinical Nutrition, 2009
健康で定期的に運動している男性14名(22〜33歳)を対象にしたプラセボ対照試験。全員が試験開始前から食事性亜鉛摂取量11.9〜23.2 mg/日と充足していた集団に高用量亜鉛サプリ(ZMA)またはプラセボを夕食後から就寝までの間に8週間摂取させ、血清総テストステロン・遊離テストステロンと、尿中のテストステロンおよび選択されたステロイドホルモン代謝物の排泄パターンを測定した。血清テストステロン(総・遊離とも)に有意な変化はなく、尿中代謝物の排泄パターンにも有意な変化は認められなかった。
出典
- Prasad AS, et al. (1996) Nutrition — 健康成人の亜鉛栄養状態と血清テストステロン(12(5):344-348)
- Koehler K, et al. (2009) Eur J Clin Nutr — 高用量亜鉛サプリ投与後の血清テストステロンと尿中ステロイドホルモン代謝物排泄(RCT、63(1):65-70)
- Prasad AS (2008) Mol Med — ヒトの健康における亜鉛:免疫細胞への影響(14(5-6):353-357)
- Clarkson PM (1991) J Sports Sci — ミネラル:運動パフォーマンスとアスリートのサプリメント補給(9(sup1):91-116)※この成分・この用量帯そのものを評価した研究ではありません(判断の材料として周辺情報を示しています)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」— 年齢・性別ごとの亜鉛の推奨量と耐容上限量
似た働きのサプリ
亜鉛ピコリネート
信頼度: 低亜鉛ピコリネート(ピコリン酸亜鉛)
亜鉛とピコリン酸をキレート結合させた形態。ピコリン酸塩が他の形態より吸収率が高いという説明について、本サイトは出典を示せない。 亜鉛そのものについては、欠乏を是正すると正常な状態へ戻る方向の変化が報告されている一方、足りている人がさらに足しても効果は確認されていない。
テストステロンブースター
信頼度: 低アシュワガンダ・亜鉛・マグネシウム・ビタミンD・トリビュラス等の複合配合
テストステロンの維持・向上を目的とした複合サプリ。この配合そのものを評価した試験は収録していない。以下は個々の成分についての結果である。亜鉛は「欠乏を是正すると正常範囲へ戻る」方向の変化にとどまり、充足している人では変化が無かった。ZMAはトレーニング適応にも効果が無い。 アシュワガンダは男性でテストステロンの上昇が報告されている。
鉄(アイアン)
信頼度: 高鉄(フマル酸第一鉄・ビスグリシン酸鉄等)
赤血球のヘモグロビン合成に必要なミネラル。本サイトが収録している運動パフォーマンスのメタ分析は、対象が生殖年齢の女性に限られる。 鉄過剰は有害であり、欠乏が確認されてから補うのが前提になる。