
ZMAは鍛えている人のテストステロンを上げるか
言われていること
Brilla & Conte (2000) /サプリ広告・一般的な通説
ZMAは自然にテストステロンを高めるから、飲めば筋力も筋肥大も伸びる。これはブロではなく研究でも証明されている。
研究が示すこと
- 収録している Koehler ら(2009)は、試験前の亜鉛摂取量が1日11.9〜23.2mgだった健康で運動習慣のある22〜33歳の男性14名を対象に、ZMAの摂取が血清テストステロンを上げるかを調べたものである。 ZMAの摂取で血清亜鉛(P=0.031)と尿中亜鉛排泄(P=0.035)が有意に増え、尿pH(P=0.011)と尿流量(P=0.045)も上昇した。一方、血清総テストステロンと遊離テストステロンには有意な変化が無く、テストステロン代謝物の尿中排泄パターンも有意には変わらなかった。 著者らは、亜鉛が足りている食事をとっている被験者では、ZMAの使用が血清テストステロン値およびテストステロンの代謝に有意な影響を与えないことを示唆すると結論している。同抄録は投与期間もプラセボ対照の有無も報告していない。 収録している Wilborn ら(2004)は、レジスタンストレーニング経験のある男性42名(27±9歳、178±8cm、85±15kg、体脂肪18.6±6%)を除脂肪量で層別し、二重盲検でデキストロースのプラセボまたはZMAを就寝30〜60分前に摂らせ、8週間の標準化されたレジスタンストレーニングを行わせたRCTである。 ZMAは血清亜鉛を11〜17%高めたが有意ではなく(p=0.12)、同化・異化ホルモンの状態、体組成、ベンチプレスとレッグプレスの1RM、上半身・下半身の筋持久力、自転車の無酸素性能力のいずれにも群間差が無かった。 著者らは、訓練中のZMA補給がレジスタンストレーニング経験者の訓練適応を高めるようには見えないと結論している。
収録した2件は、いずれもZMAの補給でテストステロンが上がることを示していない(Koehler 2009:亜鉛が足りている男性14名で血清総・遊離テストステロンに有意な変化なし。Wilborn 2004:訓練経験者42名・8週間でホルモン・体組成・筋力・筋持久力のいずれにも群間差なし)。
ZMAは睡眠の質・回復を改善するか
言われていること
ZMAユーザーの体感談・フィットネス系SNS
ZMAを寝る前に飲むと眠りが深くなり、トレーニング後の回復も早まる。亜鉛とマグネシウムのリラックス効果とビタミンB6の神経サポートが組み合わさって効くはずだ。
研究が示すこと
- マグネシウム単独については、原発性不眠症の高齢者46名を対象にした二重盲検RCT(Abbasi et al. 2012)で、睡眠時間(p=0.002)や睡眠効率(p=0.03)の有意な改善が報告されている。
- 同試験の対象は原発性不眠症の高齢者46名で、1日500mgのマグネシウムまたはプラセボを8週間投与している。睡眠時間(P=0.002)・睡眠効率(P=0.03)に加え、血清レニン(P<0.001)とメラトニン(P=0.007)が有意に増加し、不眠重症度指標(P=0.006)・入眠潜時(P=0.02)・血清コルチゾール(P=0.008)が有意に低下した。早朝覚醒(P=0.08)と血清マグネシウム濃度(P=0.06)は境界的で、総睡眠時間(P=0.37)には群間差が出ていない。
収録している Abbasi ら(2012)が示すのは、原発性不眠症の高齢者46名で1日500mgのマグネシウムが睡眠ログ上の睡眠時間(P=0.002)・睡眠効率(P=0.03)・不眠重症度指標(P=0.006)・入眠潜時(P=0.02)を改善したことまでである。同抄録は、総睡眠時間には群間差が出ていない(P=0.37)と明記している。
亜鉛そのものはテストステロンを上げるのか
言われていること
一般的な通説
亜鉛はテストステロンを上げるミネラルだから、補えば誰でも上がる。
研究が示すこと
- Prasad et al.(1996)は3つの異なる検討を報告している。
- 20〜80歳の健康な男性40名の横断解析では、細胞内亜鉛濃度と血清テストステロンに関連がみられた。
- 若年男性4名で食事性亜鉛を制限して境界域の欠乏を誘導した検討では、20週間後に血清テストステロンが大きく低下した。
- そして境界域の亜鉛欠乏があった高齢男性9名(64±9歳)に3〜6ヶ月の亜鉛補給を行うと、血清テストステロンが8.3±6.3から16.0±4.4 nmol/Lへ上昇した(p=0.02)。
- 収録した範囲で言えるのは、亜鉛が足りている男性を対象とした2件で、血清テストステロンに有意な変化が見られなかったということまでである(Koehler 2009:14名、総・遊離テストステロンとテストステロン代謝物の尿中排泄パターンに有意な変化なし。ただし血清亜鉛 P=0.031、尿中亜鉛排泄 P=0.035、尿pH P=0.011、尿流量 P=0.045 は有意に上昇している。Wilborn 2004:42名、同化・異化ホルモン・体組成・筋力・筋持久力・無酸素性能力に群間差なし)。
収録している Prasad ら(1996)で血清テストステロンの上昇が示されたのは、境界域の亜鉛欠乏があった高齢男性9名(64±9歳)に3〜6ヶ月補給した検討である(8.3±6.3→16.0±4.4 nmol/L、p=0.02)。収録した範囲で言えるのは、亜鉛が足りている男性を対象とした2件(Koehler 2009・Wilborn 2004)で血清テストステロンとトレーニング適応に有意な変化が見られなかった、ということまでである。Koehler では血清亜鉛・尿中亜鉛排泄・尿pH・尿流量が有意に上昇しており、「何も変わらなかった」わけではない。
では亜鉛・マグネシウムを飲む意味はないのか
言われていること
反動的な通説
テストが上がらないなら飲むだけ無駄。
研究が示すこと
- 収録した出典から言えるのは、Prasad ら(1996)で血清テストステロンの上昇が示されたのが境界域の亜鉛欠乏があった高齢男性9名という限られた集団だったことと、Koehler ら(2009)・Wilborn ら(2004)で亜鉛が足りている男性への追加補給に血清テストステロンとトレーニング適応の有意な変化が見られなかったことまでである。Koehler では血清亜鉛・尿中亜鉛排泄・尿pH・尿流量が有意に上昇している。
収録した出典が示すのは、境界域の欠乏があった高齢男性9名で補給によりテストステロンが上昇したこと(Prasad 1996)と、亜鉛が足りている男性への追加補給で血清テストステロンとトレーニング適応に有意な変化が無かったこと(Koehler 2009・Wilborn 2004)までである。
訂正履歴訂正4回・撤回した原文10件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 「Brilla & Conte(2000)は利益相反が指摘されている」という記述を撤回した。指摘の所在を示せる資料を収録していない(同論文はASEPのPDFとして公開されており、識別子で解決できる抄録を取得できていない)。あわせて「独立した2つのRCTで再現できた例は現時点で存在しない」という文献横断の評価も撤回した。そう言えるだけの検索を行っていない。
撤回した原文2件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
ZMAの『テストステロンを上げる』という主張の出どころは、ZMAの特許保持者自身が共著者に名を連ねたBrilla & Conte(2000)の研究で、利益相反が指摘されている
独立した2つのRCTでテストステロン上昇や筋力・体組成の改善を再現できた例は現時点で存在しない
- マグネシウムの節で書いていた「若年アスリートへの外挿には慎重を要する」「ZMAという配合そのものの独立したエビデンスは乏しく、マグネシウム単体の効果を配合の手柄にしている」「若年トレーニーでの効果は未確立」「単体摂取のほうが費用対効果は高い」——をすべて撤回した。若年者を対象とした比較も、配合と単体を比べた研究も、費用対効果を扱った資料も収録していない。
撤回した原文3件
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ただし対象は不眠を抱える高齢者であり、若年アスリートへの外挿には慎重を要する
『ZMA』という亜鉛・マグネシウム・B6の特定配合そのものが睡眠や回復を改善するという独立したエビデンスは乏しく、マグネシウム単体の効果をZMA全体の手柄にしているケースが多いとみられる
若年トレーニーでの効果は未確立。マグネシウムが目的なら単体摂取のほうが費用対効果は高い
- Prasad ら(1996)の解釈として書いていた「上がったのは正常範囲へ戻ったという性質の変化である」「足りている人が上乗せで飲んでも上がらない」を撤回した。同抄録は基準範囲を示しておらず、収録した範囲で言えるのは、亜鉛が足りている男性を対象とした2件(Koehler 2009・Wilborn 2004)で有意な変化が見られなかったというところまでである。「亜鉛が足りている男性での上昇は独立した研究で確認されていない」という文献横断の否定も撤回した。
撤回した原文2件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
亜鉛の効果は「欠乏を補って正常範囲へ戻す」ものであって「ブースト」ではない
上昇が示されたのは境界域の欠乏があった高齢男性9名という小規模な集団であり、足りている人が上乗せで飲んでも上がらない
- 使い方について書いていた「亜鉛は免疫をはじめ多くの酵素反応に関わる必須ミネラルで、不足すれば体調面に影響が出る」「食事で不足しがちな人のミネラル補給という使い方は理にかなう」「まず食事からの摂取量を確認し、必要なら専門家の判断・検査で確認する」——をすべて撤回した。亜鉛の生理的役割を扱った資料も、摂取量の確認手順を検討した資料も収録していない。
撤回した原文3件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
亜鉛は免疫をはじめ多くの酵素反応に関わる必須ミネラルであり、不足すれば体調面に影響が出る栄養素であることに変わりはない
自己判断で『自分は不足しているはず』と決めつけるのではなく、まず食事からの摂取量を確認し、必要なら専門家の判断や採血などの検査で確認するのが望ましい
食事で不足しがちな人のミネラル補給という使い方は理にかなうが、これはあくまで欠乏の是正であり、足りている人への上乗せ効果を狙うものではない
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出典
- Koehler K, et al. (2009) Eur J Clin Nutr — 高用量亜鉛サプリ投与後の血清テストステロンと尿中ステロイド代謝物排泄
- Prasad AS, et al. (1996) Nutrition — 健康成人の亜鉛栄養状態と血清テストステロン
- Brilla LR & Conte V (2000) J Exercise Physiology Online 3(4):26-36 — 新規亜鉛マグネシウム配合がホルモンと筋力に与える影響
- Abbasi B, et al. (2012) J Res Med Sci — マグネシウム補給と高齢者の原発性不眠症:二重盲検RCT
- Wilborn CD, et al. (2004) J Int Soc Sports Nutr — ZMA補給とトレーニング適応・同化異化マーカーへの影響
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- 解説
マグネシウムの睡眠・筋けいれんへの効果:収録した研究が示せる範囲
マグネシウムについて本記事が収録しているのは、高齢者の睡眠を調べた試験2件と、けいれんを調べたCochraneレビュー1件である。 Abbasi ら(2012)は原発性不眠症の高齢者46名に500mg/日を8週間投与し、不眠重症度指数(p=0.006)・睡眠効率(p=0.03)・入眠潜時(p=0.02)が改善したが、総睡眠時間には群間差が出ていない(p=0.37)。Nielsen ら(2010)では睡眠の質(PSQI)が改善したものの、マグネシウム群でもプラセボ群でも同様であり、マグネシウムの効果ではない。 けいれんについては Garrison ら(2020)が11件735名を統合し、特発性けいれんでプラセボとの有意差を出していない(週あたり回数の差 −0.18回、95%CI −0.84〜0.49)。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「マグネシウムは筋肉の痙攣・睡眠・回復に効く」は本当か? 通説 vs 研究
マグネシウムは「筋肉の痙攣に効く」「睡眠の質が上がる」「回復が早まる」と様々な文脈で語られる。実際にサプリとして摂ることで何が変わるのか。
吉崎 槙吾
- 解説
亜鉛サプリ ─ 収録した3件が示していること、示していないこと
収録しているのは3件である。 テストステロン。 Prasad ら(1996)は3つの検討を報告している——40名の横断研究で細胞内亜鉛とテストステロンに相関があったこと、若年男性4名で食事の亜鉛を20週間制限するとテストステロンが有意に低下したこと(39.9→10.6 nmol/L、p=0.005)、境界域の欠乏がある高齢男性9名に6か月補給するとテストステロンが上昇したこと(8.3→16.0 nmol/L、p=0.02)。いずれも無作為化もプラセボ対照も無く、対象は4名と9名である。 風邪。 Hemilä ら(2017)は酢酸亜鉛トローチの3試験・199名の個別患者データを統合し、回復の率比3.1(95%CI 2.1〜4.7)、5日目で亜鉛群70%対プラセボ群27%を報告している。用いられたのは酢酸亜鉛トローチで、元素亜鉛として1日80〜92mgである。これが日常の補給量として適切かどうかは判定できない。
吉崎 槙吾

