亜鉛サプリ ─ 収録した3件が示していること、示していないこと
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亜鉛サプリは本当に効果があるのか?テストステロンを上げるって本当?
収録しているのは3件である。 テストステロン。 Prasad ら(1996)は3つの検討を報告している——40名の横断研究で細胞内亜鉛とテストステロンに相関があったこと、若年男性4名で食事の亜鉛を20週間制限するとテストステロンが有意に低下したこと(39.9→10.6 nmol/L、p=0.005)、境界域の欠乏がある高齢男性9名に6か月補給するとテストステロンが上昇したこと(8.3→16.0 nmol/L、p=0.02)。いずれも無作為化もプラセボ対照も無く、対象は4名と9名である。 風邪。 Hemilä ら(2017)は酢酸亜鉛トローチの3試験・199名の個別患者データを統合し、回復の率比3.1(95%CI 2.1〜4.7)、5日目で亜鉛群70%対プラセボ群27%を報告している。用いられたのは酢酸亜鉛トローチで、元素亜鉛として1日80〜92mgである。これが日常の補給量として適切かどうかは判定できない。
亜鉛の役割 ─ 収録したレビューが述べている範囲
Rink & Gabriel(2000)は、亜鉛が300を超える酵素の補因子であり、さまざまな臓器機能に影響することで免疫系に二次的な効果を持つとしている。また白血球(leucocytes)の産生・成熟・機能に対する直接の効果があるとしている。 同レビューは「神経系・生殖系・免疫系は、亜鉛の欠乏によって特に影響を受ける。体内の亜鉛レベルが上がった場合も同様である」と述べている。 ただしこれは体内のレベルについての記述であり、摂取量についてのものではない。抄録に用量・過剰摂取・用量反応の検討は無い。
- 300を超える酵素
- 亜鉛が補因子として関わる酵素の数(Rink & Gabriel 2000)
テストステロン ─ 収録した論文が実際に調べた3つのこと
Prasad ら(1996)は3つの検討を1本の論文にまとめている。 (1)横断研究。 20〜80歳の正常男性40名で、細胞内の亜鉛濃度と血清テストステロンに有意な相関があった(リンパ球の亜鉛 対 テストステロン r=0.43、p=0.006/顆粒球の亜鉛 対 テストステロン r=0.30、p=0.03)。相関であって因果ではない。 (2)食事による亜鉛制限。 正常な若年男性4名(27.5±0.5歳)で食事の亜鉛を制限したところ、20週間後に血清テストステロンが有意に低下した(39.9±7.1 → 10.6±3.6 nmol/L、p=0.005)。 (3)補給。 境界域の亜鉛欠乏があった正常な高齢男性9名(64±9歳)に、グルコン酸亜鉛として1日459 μmol を投与した。6か月の補給で血清テストステロンが 8.3±6.3 から 16.0±4.4 nmol/L へ上昇した(p=0.02)。 いずれも無作為化もプラセボ対照もない。 対象人数は4名・9名で、対照群が置かれていない。
- 39.9 → 10.6 nmol/L
- 食事の亜鉛を20週間制限した若年男性4名の血清テストステロン(p=0.005)
- 8.3 → 16.0 nmol/L
- 境界域の欠乏がある高齢男性9名に6か月補給した結果(p=0.02。無作為化・対照群なし)
風邪 ─ 収録したメタ分析が実際に測ったこと
Hemilä ら(2017)が行ったのは、酢酸亜鉛トローチの無作為化プラセボ対照試験3件・計199名の個別患者データのメタ分析である。評価したのは罹患期間の短縮ではなく回復の速さで、生存時間解析(混合効果Cox回帰)を用いている。 亜鉛群は率比3.1(95%CI 2.1〜4.7)で速く回復した。5日目の時点で、亜鉛群の70%が回復していたのに対しプラセボ群は27%だった (5日目で治癒した人数が2.6倍、必要治療数 NNT=2.3)。効果は年齢・性別・人種・アレルギー・喫煙・開始時の風邪の重症度によって変わらなかった。 重篤な有害事象は3試験のいずれでも観察されていない。 用いられたのは酢酸亜鉛トローチで、元素亜鉛として1日80〜92mgである。 これが日常的な補給の量として適切かどうかを、本記事は判定できない。日常の補給量を示す出典を収録していない。 本記事の情報は教育・参考目的であり、医療上のアドバイスではありません。
- 率比 3.1
- 回復の速さ(95%CI 2.1〜4.7、3試験199名)
- 1日80〜92mg
- 3試験が用いた元素亜鉛の量(酢酸亜鉛トローチ)
訂正履歴訂正1回・撤回した原文20件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。
①「亜鉛が欠乏している場合は、補給によって免疫機能の改善やテストステロンの正常範囲への回復が確認されている」、②「ただし亜鉛が十分な人に追加補給してもテストステロンは上がらない」、③「欠乏かどうかを確認してから摂るのが合理的」、④「一方で亜鉛が十分な男性を対象にした研究では、追加補給によるテストステロンの有意な増加は確認されていない」、⑤「つまり「亜鉛はテストステロンを上げる」は半分正解・半分誤りで、「欠乏していた場合に正常値まで戻す」という表現が正確」——亜鉛が充足している人に補給した試験を収録していない。 Prasad ら(1996)が補給したのは境界域の欠乏がある高齢男性9名だけで、充足者との比較は行っていない。「正常範囲への回復」という表現も同抄録には無い。
⑥「免疫細胞(T細胞・NK細胞)の生産と活性化、テストステロンをはじめとする性ホルモンの合成、タンパク質・DNA合成に不可欠」、⑦「筋肉の修復と成長を支える基盤となるミネラルでもある」、⑧「不足すると免疫力の低下・傷の治りが遅い・性欲の低下・疲労感などが現れる」——Rink & Gabriel(2000)が述べているのは白血球(leucocytes)の産生・成熟・機能に対する直接の効果であって、T細胞・NK細胞という細胞名の特定ではない。性ホルモンの合成もタンパク質・DNA合成も筋肉の修復も、収録した3件の抄録に記載が無い。
⑨「亜鉛はNK細胞やT細胞などの免疫細胞の生産に必要なため、欠乏すると感染症への抵抗力が低下する」、⑩「メタ分析(Hemilä ら, 2017)では、亜鉛ローゼンジ(トローチ型)の摂取が風邪の罹患期間を平均2〜3日短縮させることが示されている」、⑪「特に風邪の症状が出て24時間以内に摂取を開始した場合に効果が顕著だった」——Hemilä ら(2017)が評価したのは罹患期間の短縮ではなく回復の速さ(率比3.1)で、2〜3日という数値も、開始時刻による違いの解析も抄録に無い。
⑫「日本の推奨量は成人男性で11 mg/日、女性で8 mg/日」、⑬「サプリで補う場合、一般的に15〜30 mgが適切な範囲とされる」、⑭「長期間に50 mg/日以上の高用量を摂ると、銅の吸収を阻害して銅欠乏を引き起こす可能性があるため注意が必要」、⑮「また高用量では吐き気・消化器症状が生じることがある」、⑯「亜鉛サプリを選ぶ際は、グルコン酸亜鉛・ピコリン酸亜鉛などの吸収率の高い形態を選ぶのが望ましい」——推奨量の資料も、用量帯を比較した試験も、亜鉛と銅の相互作用を測った研究も、形態ごとの吸収率を比べた試験も収録していない。Prasad ら(1996)が用いたのはグルコン酸亜鉛だが、他の形態と比べたものではない。
見出しとタイトルにも撤回した命題が残っていた。⑰「亜鉛サプリのエビデンス:免疫・テストステロン・筋肉への効果と注意点」(タイトル。筋肉への効果を扱った出典を収録していない)、⑱「亜鉛の役割:免疫・ホルモン・タンパク合成」(第1節)、⑲「テストステロンへの影響:欠乏者にのみ有効」(第2節。「欠乏者にのみ」は充足者との比較が無い)、⑳「推奨量と注意点:銅との拮抗に注意」(第4節)。このほか第3節の見出し「免疫サポートの根拠」も撤回したが、12文字未満で `removed` の最小長を満たさないためここに原文で記録する(現在は「風邪 ─ 収録したメタ分析が実際に測ったこと」)。
統計カードも公開時から入れ替わっている。「約2倍」/「欠乏者での亜鉛補給後テストステロン増加(正常範囲内)」と「45mg/日」/「研究で使用された用量(6ヶ月間)」は、抄録の値(8.3→16.0 nmol/L、グルコン酸亜鉛459 μmol/日)に置き換えられている。「2〜3日」/「亜鉛ローゼンジによる風邪罹患期間の短縮」は⑩と同じ理由で「率比 3.1」に、「300種以上」/「亜鉛が関与する酵素反応数」は抄録の表現(補因子として関わる酵素の数)に合わせて改められている。値とラベルが別フィールドで日本語として連続した原文を取り出せないため、いずれも `removed` には収められない。
この結果、「用量・形態・銅との関係について」の節は収録した出典から書けることが何も残らなかったため、節ごと削除した(末尾の免責文は前の節へ移した)。
撤回した原文20件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
亜鉛が欠乏している場合は、補給によって免疫機能の改善やテストステロンの正常範囲への回復が確認されている。
ただし亜鉛が十分な人に追加補給してもテストステロンは上がらない。
欠乏かどうかを確認してから摂るのが合理的。
一方で亜鉛が十分な男性を対象にした研究では、追加補給によるテストステロンの有意な増加は確認されていない。
つまり「亜鉛はテストステロンを上げる」は半分正解・半分誤りで、「欠乏していた場合に正常値まで戻す」という表現が正確。
免疫細胞(T細胞・NK細胞)の生産と活性化、テストステロンをはじめとする性ホルモンの合成、タンパク質・DNA合成に不可欠。
筋肉の修復と成長を支える基盤となるミネラルでもある。
不足すると免疫力の低下・傷の治りが遅い・性欲の低下・疲労感などが現れる。
亜鉛はNK細胞やT細胞などの免疫細胞の生産に必要なため、欠乏すると感染症への抵抗力が低下する。
メタ分析(Hemilä ら, 2017)では、亜鉛ローゼンジ(トローチ型)の摂取が風邪の罹患期間を平均2〜3日短縮させることが示されている。
特に風邪の症状が出て24時間以内に摂取を開始した場合に効果が顕著だった。
日本の推奨量は成人男性で11 mg/日、女性で8 mg/日。
サプリで補う場合、一般的に15〜30 mgが適切な範囲とされる。
長期間に50 mg/日以上の高用量を摂ると、銅の吸収を阻害して銅欠乏を引き起こす可能性があるため注意が必要。
また高用量では吐き気・消化器症状が生じることがある。
亜鉛サプリを選ぶ際は、グルコン酸亜鉛・ピコリン酸亜鉛などの吸収率の高い形態を選ぶのが望ましい。
亜鉛サプリのエビデンス:免疫・テストステロン・筋肉への効果と注意点
亜鉛の役割:免疫・ホルモン・タンパク合成
テストステロンへの影響:欠乏者にのみ有効
推奨量と注意点:銅との拮抗に注意
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吉崎 槙吾
