
ホエイは他のプロテインより運動後の筋タンパク合成を高めるか
言われていること
「カロリーが全て」派・簡素な栄養情報
プロテインはどれを飲んでも同じ。タンパク質量だけを揃えれば、ソイでもカゼインでもホエイと同じ効果がある。種類の違いなんて気にしすぎ。
研究が示すこと
- 収録している Tang ら(2009)は3群の比較介入である(抄録は無作為割付を述べていない)。同試験では、必須アミノ酸を10gに揃えたうえでレジスタンス運動後の筋タンパク質合成を比べ、ホエイ加水分解物>大豆>カゼインの順になった。
- ホエイはカゼインより約122%(p<0.01)、大豆より31%(p<0.05)高い。
- ここで見落とされがちなのは、大豆もカゼインを大きく上回っている点である(運動後69%、安静時64%、いずれも p<0.01)。
- つまり「ホエイが一番」ではあるが「大豆とカゼインが同程度」ではない。
- ホエイは血中の必須アミノ酸・分岐鎖アミノ酸・ロイシン濃度を他の2つより大きく上昇させており、著者らは消化の速さかロイシン含量のわずかな差が関係している可能性を挙げている。
急性の筋タンパク質合成ではホエイが最も高い。ただし大豆はカゼインを大きく上回っている。各群6名の急性試験であり、長期の筋肥大を測ったものではない点は割り引きたい。
カゼインは就寝前プロテインとして特別な意義があるか
言われていること
プロテインタイミングを軽視する立場
就寝前はどのプロテインを飲んでも同じ。吸収速度の差なんて体感ではわからないし、夜に飲むプロテインは関係ない。
研究が示すこと
- Res ら(2012)のRCTは、健常な若年男性16名が夕方(20時)にレジスタンス運動を行い、直後に回復用の栄養(タンパク質20g・糖質60g)を摂ったうえで、就寝30分前(23時30分)にカゼイン40gを含む飲料またはプラセボを摂り、夜間7.5時間の代謝を追ったものである。
- カゼインは睡眠中に消化・吸収され、全身のタンパク質合成速度(311対246 μmol/kg per 7.5h)と正味のタンパク質収支(61対−11)を有意に改善した(いずれもP<0.01)。 一方、混合筋タンパク質合成速度は約22%高かったものの、有意性は境界域だった(0.059対0.048 %/h、P=0.05)。
収録した Res ら(2012)では、就寝前40gのカゼインが全身のタンパク質合成と正味の収支を有意に改善した(16名・夜間7.5時間)。ただし混合筋タンパク質合成の差は境界域(P=0.05)。
植物性プロテイン(ソイ)はホエイに劣るか
言われていること
動物性プロテイン絶対主義・一部のスポーツ栄養情報
植物性プロテインは動物性に比べて確実に劣る。アミノ酸の質が低いし、ロイシンも少ないから筋肥大効果が弱い。菜食主義者はどうしても筋肉がつきにくい。
研究が示すこと
- 大豆プロテインは、Tang ら(2009)の比較でカゼインを大きく上回っている(運動後の筋タンパク質合成で69%、安静時で64%、いずれも p<0.01)。
- ホエイのほうが31%高かった(p<0.05。
- これは「大豆が31%低い」という意味ではなく、ホエイを基準に言い直すと大豆は約24%低い計算になる)。
- なおアミノ酸スコアやロイシン含量の具体的な数値も、収録しているこの試験の抄録には記載が無い。
収録した Tang ら(2009)では、必須アミノ酸を10gに揃えた急性の比較で、筋タンパク質合成はホエイ>大豆>カゼインの順だった。大豆はカゼインを大きく上回っている。同試験は必須アミノ酸量を揃えた設計であり、異なる用量も長期の筋肥大も検討していない。各群6名の急性試験である。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文9件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。収録している2件(Tang ら 2009・Res ら 2012)は、消化にかかる時間の数値も、ホエイとカゼインの吸収速度の比較も、長期の筋肥大も、総摂取量の充足度による違いも扱っていない。Res ら(2012)はカゼインが睡眠中に消化・吸収されたこと自体は報告しているが、何時間かかるかは示していない。
①「カゼインは消化・吸収が緩やかで(6〜8時間)、睡眠中も持続的にアミノ酸を血中に供給できる」、②「ホエイは30〜60分でピークを迎え急速に低下するため夜間供給には不向き」、③「1日の総タンパク質量が不足している場合に就寝前のカゼインが特に有用とされる」——Res ら(2012)が比べたのはカゼインとプラセボであって、ホエイとの比較も総摂取量による違いも扱っていない。6〜8時間・30〜60分という時間の目安も抄録に無い。
④「「植物性だから見劣りする」という位置づけではない」と、第1ラウンドの判定にあった「「植物性だから最下位」ではない」——Tang ら(2009)が比べた植物性のタンパク質は大豆だけであり、植物性プロテイン全般を評価できる設計ではない。⑤「長期の筋肥大を比べた研究では大豆とホエイの差は小さいか有意でないケースもある」、⑥「ソイはホエイより急性MPS刺激はやや劣るが、量の調整で差を縮小できる」、⑦「長期的な筋肥大差は小さい」、⑧「植物性でも十分な筋肥大は可能」——長期の筋肥大を比べた研究を収録しておらず、同試験は必須アミノ酸量を10gに揃えた設計なので異なる用量も検討していない。 各群6名の急性試験である。
撤回した原文9件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
カゼインは消化・吸収が緩やかで(6〜8時間)、睡眠中も持続的にアミノ酸を血中に供給できる。
ホエイは30〜60分でピークを迎え急速に低下するため夜間供給には不向き。
1日の総タンパク質量が不足している場合に就寝前のカゼインが特に有用とされる。
「植物性だから最下位」ではない。
「植物性だから見劣りする」という位置づけではない。
長期の筋肥大を比べた研究では大豆とホエイの差は小さいか有意でないケースもある。
ソイはホエイより急性MPS刺激はやや劣るが、量の調整で差を縮小できる。
長期的な筋肥大差は小さい。
植物性でも十分な筋肥大は可能。
関連するサプリ
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ソイプロテイン(大豆プロテイン)運動後の筋タンパク質合成は、ホエイのほうが大豆より31%高かった(p<0.05)。若年男性18名(各群6名)に必須アミノ酸10g相当を摂取させた試験による(これは「大豆が31%低い」という意味ではない。ホエイを基準に言い直すと、大豆は約24%低い計算になる)。一方、大豆はミセラーカゼインより高く(安静時64%・運動後69%、いずれも p<0.01)、「植物性だから劣る」という単純な話ではない(Tang 2009)。各群6名の急性反応の試験であり、長期の筋肥大は測定していない。

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関連する研究
出典
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次に読む
- 解説
ホエイプロテインについて、収録した出典が言える範囲
収録している出典が示すのは次の2点である。Castro ら(2019)のメタ分析(8件・246名)では、ホエイプロテインの補給が脂肪量の減少では有意な効果を示した一方(加重平均差 −0.96、95%CI −1.37〜−0.55、p<0.001)、除脂肪量についてはどのシナリオでも有意な効果が無かった(p>0.05)。 国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド(Jäger ら 2017)は、1回あたりの一般的な推奨として体重1kgあたり0.25g、または絶対量として20〜40gを挙げ、1日あたりでは1.4〜2.0 g/kgが多くの運動者に十分だとしている。
吉村 浩嗣
- 解説
サプリはいつ飲むか ─ 収録した研究が示している投与条件
成分ごとに、収録した出典が実際に示している範囲だけを書く。 カフェイン。 Grgic ら(2020)は21件のメタ分析を対象としたアンブレラレビューで、有酸素持久力・筋力・筋持久力・パワー・跳躍・移動速度でエルゴジェニックだったとしている。ただし95%予測区間を考慮するとすべての解析が効果の向きを確定的に示したわけではなく、証拠の質は概して中程度、個々の研究の多くは若い男性が対象である。摂取のタイミングを比較したものではない。 クレアチン。 運動の直前と直後を比べたRCT(男性19名・4週間、Antonio & Ciccone 2013)では、除脂肪量とベンチプレス1RMは増えたが、群と時間の交互作用はいずれの指標でも有意ではなかった。 著者らの「運動直後のほうが優れている」という結論は magnitude-based inference によるもので、有意差ではない。 プロテイン。 12時間で80gを分けた3通りのうち、20gを3時間ごとに4回が最も高かった(Areta 2013)。1日の総量も食事の回数も比べていない。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「高いプロテインほど質が高い」は本当か? 通説 vs 研究
「安いプロテインは粗悪品、高いほど筋肉がつく」という話はジムでも通販レビューでもよく見かける。しかし価格は本当に筋肥大効果と連動しているのか。ホエイの種類による違いも含め、3つの論点から研究データで検証する。
吉崎 槙吾