
プロテインの価格は筋肥大効果に比例するか
言われていること
プロテインレビューサイト・SNSの口コミ
高いプロテインはアミノ酸スコアが高く、吸収がよく、不純物が少ない。だから高価なほど筋肉への効果も高い。安いプロテインはフィラーだらけで意味がない。
研究が示すこと
- Morton ら(2018)はタンパク源を扱っている。 全文(PMC5867436)によれば、事前に定めた4つの共変量(ベースラインのタンパク質摂取量・補給量・年齢・トレーニング経験)とは別に、カテゴリ変数として「タンパク質補給源(ホエイ 対 大豆)」を含む単変量メタ回帰を追加で行っている(カゼインや えんどう豆のみを与えた研究群が少なかったため、この2つに限定している)。
- 著者らはこの手法を仮説生成的と位置づけており、有意だったのは「全身のレジスタンストレーニングであること」(調整R²=76%、p=0.01)と「監督下であること」(58%、p=0.047)が1RMの変化に対して、の2つだけで、除脂肪量の変化にはどの変数も影響しなかった。 つまりホエイ対大豆の違いは、この解析で有意な要因として出ていない。 なお同メタ分析は、WPIとWPCのような製品形態の直接比較も、価格も扱っていない。 本記事は、価格と筋肥大効果の関係を調べた研究を収録していない。
ホエイ・アイソレート・ハイドロリセートで筋肥大効果に大差はあるか
言われていること
プロテインメーカーのマーケティング・サプリ系YouTuber
アイソレートは純度が高く脂質・乳糖ゼロ、ハイドロリセートは最速吸収で筋合成が爆発的に高まる。コンセントレートは安いだけで筋肉に対する効果は劣る。
研究が示すこと
- 収録2件が実際に測っているのは次のことである。
- Tang ら(2009)は、健康な若年男性を1群6名の3群に分け、片脚のレジスタンス運動のあとに必須アミノ酸10g相当のホエイ加水分解物・ミセルカゼイン・大豆分離タンパクのいずれかを摂取させ、混合筋タンパク質合成(MPS)を数時間の範囲で測った急性の試験である。
- 安静時のMPSは速いタンパク質のほうが高く(ホエイ0.091/大豆0.078/カゼイン0.047 %/h)、ホエイはカゼインより約93%高く(P<0.01)、大豆より約18%高かった(P=0.067)。 運動後も同じ順序で、ホエイはカゼインより約122%(P<0.01)、大豆より31%高かった(P<0.05)。 West ら(2011)は、健康な男性8名がホエイ25gを一度に飲む(BOLUS)か、20分ごとに2.5gずつ10回に分けて飲む(PULSE)かを比べた試験である。
- つまり比べているのはホエイの摂り方であって、タンパク質の種類ではない。 必須アミノ酸の曲線下面積が同じでも、BOLUSのほうがMPSが高く(運動後1〜3時間で95%対42%、3〜5時間で193%対121%、いずれもP<0.05)、Akt–mTOR経路のリン酸化の変化も大きかった。 アイソレートとコンセントレートを比べた研究も、乳糖不耐や脂質制限のある人での比較も、収録4件は行っていない。
ホエイ・カゼイン・大豆のあいだで、数時間の範囲の筋タンパク質合成には差がある(ホエイ>大豆>カゼイン)。ただし数週間の筋肥大に差が出るかを、本記事は収録している出典から判定できない。 また West(2011)が示したのは同じホエイでも一度に飲むほうがMPSが高いことで、製品の種類の話ではない。
食品由来のタンパク質とプロテインサプリの効果は同等か
言われていること
サプリ販売サイト・フィットネス雑誌の広告
食事でタンパク質を摂っても体への吸収が悪い。プロテインサプリは吸収が速くて純度が高いから、食品よりも筋肉に届く。食事だけでは本格的な筋肥大は無理。
研究が示すこと
- 収録している van Vliet ら(2015)のレビューが扱っているのは植物性と動物性のタンパク質の比較である。
- 大豆や小麦といった植物性タンパク質の摂取は、いくつかの動物性タンパク質と比べて筋タンパク質合成の応答が低いという近年の知見を紹介し、その理由として消化性の低さ・内臓での抽出と尿素合成の多さ・特定の必須アミノ酸の相対的な少なさ・ロイシン含有量の低さを挙げている。
- そのうえで、植物性タンパク質の同化作用を高める方策(メチオニン・リジン・ロイシンの強化、品種改良、摂取量を増やす、複数のタンパク源を組み合わせる)を挙げ、それらの有効性は今後の研究課題であるとしている。
- 実際に食後の筋タンパク質合成応答を評価した研究は少なく、主に大豆と小麦が調べられてきたとも書いている。
- 同メタ分析はタンパク質補給を加えた試験を集めたもので、食品とサプリを比べてはいない。手軽さや携帯性を扱った出典も収録4件には無い。
食品由来のタンパク質とプロテインサプリの効果を比べた研究を、本記事は収録していない。収録している van Vliet ら(2015)が述べているのは、植物性タンパク質のほうが筋タンパク質合成の応答が低いという知見と、それを補う方策の有効性が今後の研究課題であることである。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文18件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 収録している4件のうち、価格を扱った研究は1件も無く、製品形態(WPI 対 WPC)を直接比べた研究も無い。 West ら(2011)が比べたのはホエイの摂り方(一度に飲むか分けて飲むか)で種類ではなく、Tang ら(2009)は数時間の急性反応を測った試験で数週間の筋肥大を追っていない。van Vliet ら(2015)が扱っているのは植物性と動物性の比較である。それにもかかわらず価格と効果の関係を判定し、種類ごとの優劣を書いていた。該当する記述を本文から撤回して訂正履歴に移した。あわせて、撤回のときに書いた説明自体の誤りも1件記録する。 ①「筋タンパク合成(MPS)の刺激には、タンパク質の総量・ロイシン含有量・アミノ酸プロファイル・消化吸収速度が規定する。」(第1ラウンドの研究側)── MPSを規定する要因の列挙。収録4件はこれらの寄与を比べていない。 ②「Morton ら(2018)のメタ分析(49件・1,800名超)は、タンパク源の種類よりも摂取量と総アミノ酸の質が主要因であることを示す。」(第1ラウンドの研究側)── Morton ら(2018)への帰属。同メタ分析はタンパク源(ホエイ 対 大豆)を単変量メタ回帰で扱っているが、有意だったのは全身のレジスタンストレーニングであることと監督下であることの2つで、ホエイ対大豆は有意な要因として出ていない。 「摂取量と総アミノ酸の質が主要因」という比較はしていない。 ③「同等の原料(ホエイコンセントレート同士など)であれば、価格帯が異なっても成分が揃っている限り筋肥大効果に差は生じない。」(第1ラウンドの研究側)── 成分が揃えば価格帯で差は生じないという断定。価格を扱った出典を収録していない。 ④「価格差を生む主な要素はブランド、フレーバー技術、第三者認証コスト、マーケティング費用であり、タンパク含有量あたりの費用対効果を見れば高価格品が優れているとはいえないケースが多い。」(第1ラウンドの研究側)── 価格差の内訳と費用対効果の評価。同上。 ⑤「成分表が同等ならば、価格と筋肥大効果に相関はない。」(第1ラウンドの判定)── 価格と筋肥大効果に相関がないという判定。 ⑥「製品選択の基準は「1食あたりのタンパク量・ロイシン量・総カロリー」であり価格ではない。」(第1ラウンドの判定)── 製品選択の基準を挙げた助言。 ⑦「West ら(2011)のRCTは、急速吸収型(ホエイハイドロリセート)が遅吸収型に比べてトレーニング直後の筋タンパク合成シグナル(mTOR経路)をより強く刺激することを示した。」(第2ラウンドの研究側)── West ら(2011)への帰属。同試験が比べたのはホエイ25gを一度に飲むか20分ごとに10回に分けるかで、タンパク質の種類ではない。 ⑧「しかし Tang ら(2009)の比較試験では、ハイドロリセート・カゼイン・大豆プロテインのMPS応答の差はトレーニング後の急性期(数時間)に限定されており、複数週にわたる筋肉量の増加(慢性適応)では差が縮小する傾向が示されている。」(第2ラウンドの研究側)── Tang ら(2009)への帰属。同試験は数時間の急性反応を測ったもので、数週間の筋肉量の増加を追っていない。 ⑨「日常的な摂取(食事との組み合わせ、1日数回の分割摂取)では、アイソレートとコンセントレートの筋肥大への差はほぼない。」(第2ラウンドの研究側)── アイソレートとコンセントレートの差がほぼないという断定。収録4件はこの比較をしていない。 ⑩「乳糖不耐症や脂質制限が必要な場合はアイソレートに実用的なメリットがある。」(第2ラウンドの研究側)── 乳糖不耐や脂質制限のある人へのアイソレートの実用的メリット。同上。 ⑪「急性のタンパク合成シグナルではハイドロリセートが有利だが、数週間単位の筋肥大への影響は小さい。」(第2ラウンドの判定)── ハイドロリセートが急性のシグナルで有利という判定と、数週間の影響は小さいという判定。 ⑫「乳糖不耐症でなければコンセントレートで十分。アイソレートへの追加費用は用途次第。」(第2ラウンドの判定)── コンセントレートで十分だという助言。 ⑬「van Vliet ら(2015)のレビューは、動物性食品(鶏肉・卵・乳製品等)のタンパク質は必須アミノ酸・ロイシン含有量においてホエイと同等かそれに近い水準にあり、食品ベースでも十分な筋タンパク合成が得られることを示す。」(第3ラウンドの研究側)── van Vliet ら(2015)への帰属。同レビューが扱っているのは植物性と動物性の比較で、植物性のほうが筋タンパク質合成の応答が低いという知見と、それを補う方策の有効性が今後の研究課題であることを述べている。 ⑭「Morton ら(2018)のメタ分析でも、タンパク源(食品 vs サプリ)の違いよりも総タンパク摂取量が筋肥大の主要決定因子とされている。」(第3ラウンドの研究側)── Morton ら(2018)を食品とサプリの比較として引いていた。同メタ分析はタンパク質補給を加えた試験を集めたもので、食品とサプリを比べていない。 ⑮「プロテインサプリの実質的なメリットは「手軽さ」「携帯性」「カロリーを抑えながら高タンパクを摂れる」という利便性であり、食品と比べて筋合成メカニズムが優れているわけではない。」(第3ラウンドの研究側)── サプリの利便性という位置づけ。収録4件は扱っていない。 ⑯「総タンパク量とアミノ酸プロファイルが揃えば、食品とサプリの筋肥大効果はほぼ同等。」(第3ラウンドの判定)── 食品とサプリがほぼ同等という判定。 ⑰「サプリの価値は「利便性」にあり、食品を置き換えるものではない。」(第3ラウンドの判定)── サプリの価値が利便性にあるという判定。 ⑱「同解析が事前に定めた共変量は、ベースラインのタンパク質摂取量・補給量・年齢・トレーニング経験であり、製品の種類も価格も扱っていない。」(第1ラウンドの研究側)── 上を直したときに「同解析が事前に定めた共変量は…製品の種類も価格も扱っていない」と書いたが、タンパク源については追加の単変量メタ回帰で扱っている(著者らは仮説生成的と位置づけている)。扱っていないのは、WPIとWPCのような製品形態の直接比較と価格である。
撤回した原文18件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
筋タンパク合成(MPS)の刺激には、タンパク質の総量・ロイシン含有量・アミノ酸プロファイル・消化吸収速度が規定する。
Morton ら(2018)のメタ分析(49件・1,800名超)は、タンパク源の種類よりも摂取量と総アミノ酸の質が主要因であることを示す。
同等の原料(ホエイコンセントレート同士など)であれば、価格帯が異なっても成分が揃っている限り筋肥大効果に差は生じない。
価格差を生む主な要素はブランド、フレーバー技術、第三者認証コスト、マーケティング費用であり、タンパク含有量あたりの費用対効果を見れば高価格品が優れているとはいえないケースが多い。
成分表が同等ならば、価格と筋肥大効果に相関はない。
製品選択の基準は「1食あたりのタンパク量・ロイシン量・総カロリー」であり価格ではない。
West ら(2011)のRCTは、急速吸収型(ホエイハイドロリセート)が遅吸収型に比べてトレーニング直後の筋タンパク合成シグナル(mTOR経路)をより強く刺激することを示した。
しかし Tang ら(2009)の比較試験では、ハイドロリセート・カゼイン・大豆プロテインのMPS応答の差はトレーニング後の急性期(数時間)に限定されており、複数週にわたる筋肉量の増加(慢性適応)では差が縮小する傾向が示されている。
日常的な摂取(食事との組み合わせ、1日数回の分割摂取)では、アイソレートとコンセントレートの筋肥大への差はほぼない。
乳糖不耐症や脂質制限が必要な場合はアイソレートに実用的なメリットがある。
急性のタンパク合成シグナルではハイドロリセートが有利だが、数週間単位の筋肥大への影響は小さい。
乳糖不耐症でなければコンセントレートで十分。アイソレートへの追加費用は用途次第。
van Vliet ら(2015)のレビューは、動物性食品(鶏肉・卵・乳製品等)のタンパク質は必須アミノ酸・ロイシン含有量においてホエイと同等かそれに近い水準にあり、食品ベースでも十分な筋タンパク合成が得られることを示す。
Morton ら(2018)のメタ分析でも、タンパク源(食品 vs サプリ)の違いよりも総タンパク摂取量が筋肥大の主要決定因子とされている。
プロテインサプリの実質的なメリットは「手軽さ」「携帯性」「カロリーを抑えながら高タンパクを摂れる」という利便性であり、食品と比べて筋合成メカニズムが優れているわけではない。
総タンパク量とアミノ酸プロファイルが揃えば、食品とサプリの筋肥大効果はほぼ同等。
サプリの価値は「利便性」にあり、食品を置き換えるものではない。
同解析が事前に定めた共変量は、ベースラインのタンパク質摂取量・補給量・年齢・トレーニング経験であり、製品の種類も価格も扱っていない。
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出典
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- 解説
サプリはいつ飲むか ─ 収録した研究が示している投与条件
成分ごとに、収録した出典が実際に示している範囲だけを書く。 カフェイン。 Grgic ら(2020)は21件のメタ分析を対象としたアンブレラレビューで、有酸素持久力・筋力・筋持久力・パワー・跳躍・移動速度でエルゴジェニックだったとしている。ただし95%予測区間を考慮するとすべての解析が効果の向きを確定的に示したわけではなく、証拠の質は概して中程度、個々の研究の多くは若い男性が対象である。摂取のタイミングを比較したものではない。 クレアチン。 運動の直前と直後を比べたRCT(男性19名・4週間、Antonio & Ciccone 2013)では、除脂肪量とベンチプレス1RMは増えたが、群と時間の交互作用はいずれの指標でも有意ではなかった。 著者らの「運動直後のほうが優れている」という結論は magnitude-based inference によるもので、有意差ではない。 プロテイン。 12時間で80gを分けた3通りのうち、20gを3時間ごとに4回が最も高かった(Areta 2013)。1日の総量も食事の回数も比べていない。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「プロテインは全部同じ」は本当か? ホエイ・ソイ・カゼイン比較 通説 vs 研究
「プロテインはどれを飲んでも同じ」「安いソイプロテインで十分」——こんな声もあれば「ホエイ以外は無駄」という声もある。タンパク質の「種類」は筋タンパク合成にどれほど影響するのか、研究から整理する。
吉崎 槙吾
- 解説
鉄サプリは必要か?運動パフォーマンスと鉄欠乏のエビデンス
Pasricha ら(2014)のメタ分析は、生殖年齢の女性を対象に毎日の経口鉄補給と対照を比べたRCTを統合したものである。 この推定値は「生殖年齢の女性を対象とした試験全体」の平均効果であり、鉄が欠乏している人に限った効果ではない。 最大酸素摂取量が平均 +2.35 mL/(kg·分) 増加し(95%CI 0.82〜3.88、18件)、最大下運動では所定の負荷に必要な心拍数が4.05拍/分低下した(95%CI −7.25〜−0.85、6件)。ただし全体でバイアスのリスクが低いと判定されたのは24件中3件のみで、同論文も「無作為化試験の結果は一致していない」と述べている。 鉄の充足状態によって効果が変わることを示した解析を、本記事は収録していない。 したがって「鉄が欠乏している人には効くが、正常な人には効かない」という区別も、本記事は出典で裏づけられない。 吸収を高める・妨げる食べ合わせについて、本記事は出典を示せない。 収録したレビューはむしろ「吸収の低下という説明はありそうにない」としている(Beard & Tobin 2000)。鉄サプリは医学的・食事の管理下で検討するものである。まず血液検査でフェリチンを確認すること。
吉崎 槙吾
