カゼインプロテイン
牛乳タンパク質の約80%を占める、消化吸収の遅いタンパク質。就寝前の摂取が夜間のタンパク質バランスを改善することは示されているが、その効果がカゼイン特有かどうかは別の話で、ホエイと直接比べた試験では差が無かった。
研究が進みつつある成分

購入する
(PR)研究で報告されている効果
就寝前の摂取で夜間の全身タンパク質バランスが改善する。 若年男性16名が夕方にレジスタンス運動を行い、運動後に20gのタンパク質+60gの糖質を摂ったうえで、就寝30分前に40gのカゼインまたはプラセボを摂取した。カゼイン群では全身タンパク質合成(311対246 µmol/kg/7.5時間)と正味のタンパク質バランス(+61対−11)がいずれも改善した(P<0.01)。ただし筋タンパク質合成そのものは約22%高いにとどまり、有意水準ぎりぎり(P=0.05)だった(Res 2012)。
その効果がカゼイン特有だという裏づけは無い。 男性36名で、就寝30分前にカゼイン45g・ホエイ45g・プラセボを比較した試験では、タンパク質を摂った群がプラセボよりミトコンドリア(P=0.005)・筋原線維(P=0.012)のタンパク合成速度が高かった一方、カゼインとホエイのあいだに差は無かった(それぞれP=0.690、P=0.440)(Trommelen 2023)。著者らの結論も「夜間の筋タンパク質合成反応はホエイとカゼインで違わない」である。
吸収が遅いこと自体は測定されている。 同量のロイシンを含む食事として比較すると、ホエイが血中アミノ酸を急激かつ短時間だけ上げるのに対し、カゼインは中程度の高アミノ酸血症を長く維持した。全身のタンパク質分解はカゼインで34%抑制されたがホエイでは抑制されず、食後7時間の正味ロイシンバランスはカゼインのほうが良好だった(P<0.05)。一方、食後のタンパク質合成の刺激はホエイ+68%に対しカゼイン+31%だった(Boirie 1997)。健常成人・単回の食事・全身レベルの測定であり、筋肉に限った測定ではない。
満腹感がほかのタンパク質より強いという結果は出ていない。 標準体重の男性13名にカゼイン・ホエイ・α-ラクトアルブミン・ゼイン・糖質を含む等エネルギーの食事を摂らせたクロスオーバー試験では、その後の自由摂食量にも、空腹感・満腹感・食欲のVAS評価にも差は無かった(Chungchunlam 2023)。
カロリー制限中の筋量保持については、本サイトは出典を示せない。 タンパク質補給一般の効果はメタ分析で確認されているが(Morton 2018)、カロリー制限下でカゼインが筋量を保つことを示した試験は収録していない。
推奨摂取量・タイミング
- 収録した試験が用いた量は、就寝30分前に40g(Res 2012)ないし45g(Trommelen 2023)である。 いずれも夕方に運動を行った条件での単回の摂取であり、なおResの試験では、就寝前の摂取に先立って運動後に20gのタンパク質と60gの糖質を摂っている。 就寝前の1回だけを切り出した条件ではない。
- 1日の総タンパク質摂取量として何g/kgを目指すべきかについて、本サイトは出典を示せない。 総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日(95%CI 1.03〜2.20)と推定されている。ただし著者らはこの分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)を明記しており、確立した閾値ではない。 目標範囲を定めたものでもない。
注意点
- •牛乳アレルギーまたは乳糖不耐症の方は摂取を避けるか医師に相談すること。
- •腎機能に問題がある方は高タンパク質摂取が腎臓に負担をかける可能性があるため、必ず医師に相談すること。
- •過剰摂取は消化器系の不調(腹部膨満感・下痢)を引き起こす場合がある。
- •妊娠中・授乳中の方は医師に相談の上で使用すること。
- •薬を服用中の方も使用前に医師または薬剤師に確認することを推奨する。
- •利益相反の開示。 Trommelen ら(2023)は著者2名がFrieslandCampina社(乳業)の従業員であり、ほかに複数の著者が同社・Nutricia Research社・PepsiCo社から講演料・研究助成・コンサルティング料のいずれかを受けている。
- •カゼインを選ぶ根拠として現時点で言えるのは「就寝前にタンパク質を摂ること自体には効果がある」までで、「ホエイではなくカゼインを選ぶべき」ではない。 本情報は教育・参考目的であり、疾患の診断・治療を意図しない。
根拠となる研究
出典
- Res PT, et al. (2012) Med Sci Sports Exerc — 就寝前のタンパク質摂取は運動後の夜間リカバリーを改善する(44(8):1560-1569)
- Trommelen J, et al. (2023) Sports Med — 就寝前のタンパク質摂取は持久性運動後の夜間ミトコンドリアタンパク合成を高める(RCT、53(7):1445-1455)
- Boirie Y, et al. (1997) Proceedings of the National Academy of Sciences — 遅いタンパク質と速いタンパク質は食後のタンパク蓄積を異なる形で調節する(94(26):14930-14935)
- Chungchunlam SMS, et al. (2023) Appetite — ゼイン、カゼイン、ホエイ、α-ラクトアルブミンが満腹感および食事摂取量に与える影響(180:106339)
- Morton RW, et al. (2018) Br J Sports Med — タンパク質補給がレジスタンストレーニングによる筋量・筋力増加に与える影響(メタ分析、52(6):376-384)※この成分・この用量帯そのものを評価した研究ではありません(判断の材料として周辺情報を示しています)
似た働きのサプリ
ソイプロテイン(大豆プロテイン)
信頼度: 中大豆タンパク質(ソイプロテインアイソレート / コンセントレート)
大豆由来の植物性タンパク源。運動後の筋タンパク質合成はホエイのほうが31%高いことが試験で示されている一方、長期の除脂肪量と筋力には由来による差が出なかったというメタ分析がある。ただし同じ解析で、除脂肪量の割合では動物性が有利で、50歳未満では絶対的な除脂肪量でも動物性が有利だった。
EAA(必須アミノ酸)
信頼度: 低9種の必須アミノ酸(ロイシン・イソロイシン・バリン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン・トリプトファン・ヒスチジン)
体内で合成できない9種の必須アミノ酸をすべて含む製品。総説は「最大限の筋タンパク質合成には必須アミノ酸全体の供給が必要」と述べており、これはBCAA単独より理にかなう(Wolfe 2017)。ただしEAA製品そのものの効果を検証した試験を、本サイトは収録していない。
エッグホワイトプロテイン
信頼度: 低卵白(アルブミン)タンパク質
卵白を乾燥・粉末化したプロテイン。乳製品を使わないため、乳アレルギー・乳糖不耐の人の選択肢になる。ただし本サイトは、卵白プロテインそのものを評価した試験を収録していない。 以下で引く Moore ら(2009)が用いたのは全卵タンパク質であり、卵白ではない。