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研究 vs 勘

運動後30分のプロテインが必須?「アナボリックウィンドウ」神話を科学で検証する

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「トレーニング後30分以内にプロテインを摂らないと筋肥大の機会を逃す」——このアナボリックウィンドウ(同化の窓)という概念はフィットネス業界の定説だった。しかし近年の研究はこの窓の重要性を大幅に修正した。タンパク質のタイミングは本当に重要なのか、それとも総摂取量が勝るのか。

Round1

運動後30分以内のタンパク質摂取は筋肥大に必須か

言われていること

プロテインメーカー広告・旧来のボディビル雑誌

トレーニング後30分以内がアナボリックウィンドウ。この窓を逃すと筋タンパク質合成が大幅に落ちて、せっかくのトレーニングが無駄になる。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Schoenfeld ら(2013)のメタ分析では、タイミング単体(ポストワークアウト摂取)の筋肥大への効果は、1日の総タンパク質摂取量と等量にすると統計的に有意でなくなったと報告されている。
  • 同化の窓の幅を検討した研究も、トレーニング前の摂取の有無で違いが出るかを調べた研究も、本記事は収録していない。
判定

収録している Schoenfeld ら(2013)が示すのは、タイミング単体の効果が1日の総タンパク質摂取量を揃えると統計的に有意でなくなったということまでである。窓の幅も、空腹時トレーニングでの違いも、これを検討した研究を収録していない。

信頼度:中程度の根拠
Round2

1日のタンパク質摂取を均等に分散すべきか

言われていること

フィットネス系入門書・プロテイン広告

タンパク質は1食30gが上限。1度に大量に摂っても利用されず無駄になる。だからこまめに分けて摂ることが重要だ。

VS

研究が示すこと

  • タンパク質の吸収が量に応じて続くかどうかを測った研究を、本記事は収録していない。 収録している Moore ら(2009)が報告しているのは、筋タンパク質合成への刺激が1食あたり20〜40gで最大に達するということである。
  • Areta ら(2013)が比べたのは、運動後12時間でホエイ80gを10g×8回/20g×4回/40g×2回に分ける3通りであり、1日の食事回数でも均等分散でもない。20gを3時間ごと(4回)が他の2つより31〜48%高かった(P<0.02)。 総量が同じ場合の筋肥大の差も、摂取量とタイミングのどちらが効くかも、これを比べた研究を本記事は収録していない。
判定

収録している Moore ら(2009)が示すのは、筋タンパク質合成への刺激が1食あたり20〜40gで最大に達するということである。Areta ら(2013)が比べたのは運動後12時間で80gをどう割るかであり、1日の食事回数ではない。総摂取量と分散パターンの優先順位を比べた研究を、本記事は収録していない。

信頼度:賛否が分かれる
Round3

就寝前のカゼインプロテインは筋肥大を促進するか

言われていること

カゼインサプリメーカー・ボディビル情報サイト

就寝前のカゼインプロテインが夜間の筋分解を防ぎ、筋肥大を最大化する。就寝前プロテインは絶対に欠かせない。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Res ら(2012)のRCT(若年男性16名)では、就寝30分前のカゼイン40gが夜間の全身タンパク質合成速度と正味のタンパク質収支を有意に改善した(p<0.01)
  • 同試験は一晩の代謝を測ったもので、筋肥大は評価していない。 筋肥大については Snijders ら(2015)を収録している。
  • 収録している2件は、総摂取量の充足度によって効果が変わるかを比べておらず、他のタイミング戦略とエビデンスの量を比べてもいない。 Snijders ら(2015)が比べたのは、就寝前にタンパク質を追加した群と、カロリーの無いプラセボの群である。
判定

収録した Res ら(2012)では、就寝30分前のカゼイン40gが夜間の全身タンパク質合成速度と正味のタンパク質収支を有意に改善した(若年男性16名、p<0.01)。総摂取量の充足度によって効果が変わるかを比べた研究を、本記事は収録していない。

信頼度:中程度の根拠
訂正履歴訂正1回・撤回した原文14件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。 ①「「アナボリックウィンドウ」は実際には4〜6時間程度の幅があると考えられており、「30分以内」の厳密な窓は過大評価」②「空腹状態でトレーニングした場合やトレーニング前にプロテインを摂取しなかった場合は、直後の摂取の重要性が上がる可能性はある」③「1日の総タンパク質量が確保されていれば、数時間以内の摂取で十分」④「空腹トレーニングの場合は直後の摂取の重要性が高まる」——窓の幅も、空腹時トレーニングでの違いも、これを検討した研究を収録していない。 ⑤「「1食30g上限」は誤解で、タンパク質の吸収自体は量に応じて継続して行われる」、——吸収の量依存性を測った研究を収録していない。⑦「1日の摂取量を3〜4食に均等分散することでMPSをより多く誘起できる可能性がある(Areta et al. 2013)」⑧「3〜4食への分散は有効だが、総量の確保が最優先」——同試験が比べたのは運動後12時間でホエイ80gを10g×8回/20g×4回/40g×2回に分ける3通りであり、1日の食事回数でも均等分散でもない。⑨「しかし総量が同じなら、均等分散でない場合との筋肥大差は比較的小さい」⑩「総摂取量 > タイミング・分散パターン、という優先順位は変わらない」、——総量が同じ場合の筋肥大の差も、優先順位も、これを比べた研究を収録していない。 ⑫「ただしこれは1日の総タンパク質摂取量が十分でない場合に特に効果的」⑬「総摂取量が確保されていれば就寝前摂取の追加的効果は小さくなる可能性がある」⑭「タンパク質の「タイミング」の中では、就寝前摂取は最もエビデンスが蓄積している一つ」⑮「特に1日の総タンパク質が不足している場合に有効」⑯「総量が十分な場合は追加効果は限定的」——収録している2件(Res ら 2012・Snijders ら 2015)は、総摂取量の充足度によって効果が変わるかを比べておらず、他のタイミング戦略とエビデンスの量を比べてもいない。Snijders ら(2015)が比べたのは、就寝前にタンパク質を追加した群とカロリーの無いプラセボの群である。 このほか、第2ラウンドの判定にあった「1食30g上限は誤解。」「タイミングより総量。」も撤回した。どちらも12文字未満で `removed` の最小長を満たさないため、ここに原文で記録する。摂取量とタイミングのどちらが効くかを比べた研究を、本記事は収録していない。
    撤回した原文14件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. 「アナボリックウィンドウ」は実際には4〜6時間程度の幅があると考えられており、「30分以内」の厳密な窓は過大評価。
    2. 空腹状態でトレーニングした場合やトレーニング前にプロテインを摂取しなかった場合は、直後の摂取の重要性が上がる可能性はある。
    3. 1日の総タンパク質量が確保されていれば、数時間以内の摂取で十分。
    4. 空腹トレーニングの場合は直後の摂取の重要性が高まる。
    5. 「1食30g上限」は誤解で、タンパク質の吸収自体は量に応じて継続して行われる。
    6. 1日の摂取量を3〜4食に均等分散することでMPSをより多く誘起できる可能性がある(Areta et al. 2013)。
    7. 3〜4食への分散は有効だが、総量の確保が最優先。
    8. しかし総量が同じなら、均等分散でない場合との筋肥大差は比較的小さい。
    9. 総摂取量 > タイミング・分散パターン、という優先順位は変わらない。
    10. ただしこれは1日の総タンパク質摂取量が十分でない場合に特に効果的。
    11. 総摂取量が確保されていれば就寝前摂取の追加的効果は小さくなる可能性がある。
    12. タンパク質の「タイミング」の中では、就寝前摂取は最もエビデンスが蓄積している一つ。
    13. 特に1日の総タンパク質が不足している場合に有効。
    14. 総量が十分な場合は追加効果は限定的。

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  • ホエイプロテイン

    レジスタンストレーニングにタンパク質補給を加えると、筋力・除脂肪量が増える。 健常成人の49件のRCT(計1,863名)のメタ分析で、6週間以上のトレーニングに補給を加えると1RM筋力が+2.49kg、除脂肪量が+0.30kg、筋線維横断面積が+310µm²増えた。総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日(95%CI 1.03〜2.20)と推定されている。ただし著者らはこの分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)を明記しており、確立した閾値ではない。(Morton 2018)

  • カゼインプロテイン

    就寝前の摂取で夜間の全身タンパク質バランスが改善する。 若年男性16名が夕方にレジスタンス運動を行い、運動後に20gのタンパク質+60gの糖質を摂ったうえで、就寝30分前に40gのカゼインまたはプラセボを摂取した。カゼイン群では全身タンパク質合成(311対246 µmol/kg/7.5時間)と正味のタンパク質バランス(+61対−11)がいずれも改善した(P<0.01)。ただし筋タンパク質合成そのものは約22%高いにとどまり、有意水準ぎりぎり(P=0.05)だった(Res 2012)。

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吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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