【増量期】Olympiaボディビルダーはなぜ朝に有酸素をするのか:バルク期の朝カーディオの真の目的
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増量中(オフシーズン・バルク期)にもOlympia選手が朝カーディオを行う理由は何? 筋肉がつかなくなるのでは?
多くのOlympia選手はオフシーズン(増量期)にも週2〜4回の低強度有酸素を行う。目的は「脂肪燃焼」ではなく、①インスリン感受性の維持(過剰カロリー下での栄養効率化)、②体脂肪増加ペースの抑制(リーンバルクの維持)、③心肺機能・代謝の下地作り(コンテストプレップへの移行をスムーズにする)の3点が主。正しく管理すれば朝の短時間カーディオは筋肥大を妨げない。
増量期の朝カーディオ:「減量加速」ではなく「投資」という発想
オフシーズンのOlympia選手は1日3,000〜6,000kcal以上(体重・代謝による)を摂取して筋肉量の最大化を目指す期間にある。この文脈での朝カーディオは「脂肪を燃やすため」ではない。体重100kgの選手が朝に30〜40分のウォーキングをしても消費カロリーは200〜300kcal程度で、大量の余剰カロリーの中では微々たるもの。選手たちが増量期にカーディオを続ける理由は、短期的な脂肪燃焼ではなく「長いオフシーズンの間に代謝・心肺・インスリン感受性を維持し、次のプレップへの移行コストを下げる」という長期的投資の発想による。
増量期カーディオの最重要目的:インスリン感受性の維持
増量期の高カロリー摂取が長期化すると、インスリン感受性が低下しやすい。インスリン感受性が落ちると、摂取した栄養素が筋肉よりも脂肪組織に優先的に取り込まれやすくなる(栄養分配の悪化)。なお、ここで従来引いていた Strasserら(2010)のメタ分析はレジスタンストレーニングのみを対象としており、インスリン感受性も評価項目に含まれていない(報告されているのはHbA1c −0.48%、脂肪量 −2.33kg、収縮期血圧 −6.19mmHg)。有酸素運動がインスリン感受性を改善するという主張について、本サイトはまだ出典を示せない。オフシーズンに低〜中強度の有酸素を定期的に行うことで、筋細胞のグルコース取り込み能力(GLUT-4輸送体の発現)を高い状態に維持し、食事で摂ったカーボ・タンパク質が筋肉に効率よく届く環境を維持する。これは「同じカロリーを食べても筋肉がつきやすい体内環境」を作るという発想。
リーンバルクの維持:脂肪の増加ペースをコントロールする
筋肉を最大化しながらも体脂肪の増加を最小限に抑える「リーンバルク」を実現するためには、余剰カロリーをできるだけ小さく保ちながら総摂取量を増やす必要がある(Gartheら2013のRCT)。体脂肪が増えすぎると①プレップ期間が長くなりコンカレント干渉リスクが増す、②脂肪細胞から分泌されるサイトカイン(レプチン・アディポネクチン)のバランスが崩れ、同化ホルモン環境が悪化する。週2〜3回の低強度有酸素で週に400〜600kcalを消費することで、食事の量・満足度を維持しながら余剰カロリーをわずかに絞る調整が可能になる。多くのプロ選手はオフシーズンに体脂肪10〜15%程度(一般人比では十分な低さ)を維持しようとするが、その管理の一手段として朝カーディオが機能する。
- 10〜15%
- 多くのOlympia選手がオフシーズンに維持しようとする体脂肪率の目安
コンカレント干渉を最小化:増量期でも「分離原則」は有効
増量期であっても、有酸素とウェイトを同一セッションで行うとコンカレント干渉が生じることはWilsonら(2012)のメタ分析が示している。筋肥大を最大化したいオフシーズンこそ、この干渉を避けることは重要。朝に有酸素を終わらせ、夕方にウェイトを行う2セッション分割は、増量期においても筋肥大に専念できる状態でウェイトに臨むための合理的な構成。ただし増量期は減量期と異なり、有酸素の量・時間を短く抑える(1セッション20〜30分)のが一般的。筋肉への投資(食事・ウェイト)を最大化しながら、有酸素によるコスト(疲労・カロリー消費)は最小限にとどめるバランスが求められる。
- 20〜30分
- 増量期の朝カーディオの典型的なセッション時間(減量期より大幅に短い)
心肺機能・代謝の「ベース」を守る:プレップへの移行コストを下げる
オフシーズンに有酸素を完全にやめた選手がコンテストプレップに入ると、急激なカーディオ量の増加への適応コストが高くなる。心肺機能(VO₂max・心拍回数の回復速度)はトレーニングをやめると数週間で低下し始め、プレップ初期に毎朝の有酸素を開始した場合に筋肉へのダメージや回復の遅延が生じやすい。オフシーズンに週2〜3回の低強度有酸素を継続することで、プレップ移行時に体が急激な変化に対応する必要がなくなり、よりスムーズに「食事制限+高ボリューム有酸素」のプレップ体制に入れる。これは長期的なシーズン計画の中で朝カーディオを「オン/オフ」するのではなく「量を調整するもの」として扱う発想。
筋肥大を妨げないための量・強度の管理
増量期に朝カーディオを行う場合、量を誤ると筋肥大の妨げになる。適切な量に収めれば筋肥大と両立しうるが、過剰なカーディオはカロリー消費が増えすぎて筋合成に必要な余剰カロリーを侵食する。実際の目安:週の有酸素消費カロリーが総余剰カロリー(週換算)の50%以内に収まるよう管理する。例:余剰が週に2,000kcalなら、週の有酸素は1,000kcal以内(1セッション200〜300kcalのLISSで週3〜4回程度)が安全圏。また、ウェイトトレーニングの翌朝にHIITを行うと筋肉回復を妨げるリスクが高いため、増量期の朝カーディオにはLISS(低強度)を選ぶのが基本。
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関連する研究
出典
- Wilson JM et al. (2012) J Strength Cond Res — コンカレントトレーニング干渉メタ分析
- Colberg SR et al. (2010) Diabetes Care — 運動とインスリン感受性
- Barakat C et al. (2020) Strength Cond J — ボディビル減量・増量レビュー
- Fyfe JJ et al. (2014) Sports Med — コンカレントトレーニングと筋肥大
- Garthe I, et al. (2013) European Journal of Sport Science — エネルギー余剰の大きさと体組成 ― エリート選手の計画的増量 vs 自由摂取(RCT)
- Strasser B, et al. (2010) Sports Medicine — レジスタンストレーニングと代謝症候群(メタ分析)
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次に読む
- 解説
Olympia選手の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
収録している出典から言えるのは次の3点である。 (1) Wilson ら(2012)のメタ分析(21件・422効果量)は、コンカレントトレーニングの干渉が有酸素運動の様式・頻度・時間の関数だと報告している。走行と組み合わせた場合には筋肥大・筋力とも有意な低下が生じたが、自転車では生じなかった。 (2) Vieira ら(2016)のメタ分析(27件・273名)は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂質酸化を高めると報告している。 (3) Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名・4週間)と Hackett ら(2017)のメタ分析(5件・96名)は、カロリーを揃えた条件で空腹時と摂食時の体組成変化に有意な群間差が無かったと報告している。 「朝カーディオが必要か」に直接答えた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾
- 解説
減量期の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
朝に有酸素を行うことの効果を検証した研究を、本記事は収録していない。 収録している出典が示すのは次の2点だけである。Wilson ら(2012)のメタ分析は、持久性トレーニングによる干渉が種目(走行では低下するが自転車では低下しない)・頻度・時間の関数であるとしている。 Vieira ら(2016)のメタ分析は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂肪酸化を高めるとしている。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「太ってからじゃないと筋肉はつかない」は本当か? 通説 vs 研究
「筋肉をつけるにはまず太らないといけない」「脂肪と一緒じゃないと筋肉は増えない」——増量(バルク)にまつわるこの通説は根強い。だが“太ること”は筋肥大の条件なのか、それとも脂肪を最小限に抑えて筋肉を増やすことは可能なのか。リコンプ(体組成の作り替え)と増量ペースの研究から検証する。既存記事『増量期はたくさん食べるのが正解か(ダーティバルク)』が“増量期の食べ方”を扱うのに対し、本記事は“そもそも太る必要があるのか”を問う。
吉村 浩嗣


