
筋トレは骨密度を有意に高めるか
言われていること
一般的な健康情報、フィットネス系メディア
筋トレで骨が強くなるのは当然。重い重量を扱えば骨に物理的な刺激が入り、骨芽細胞が活性化されて骨密度が上がる。
研究が示すこと
- Zhao R ら(2015)は、閉経後女性を対象とした24件の臨床試験を統合したメタ分析である。
- 全体解析では、レジスタンストレーニングが大腿骨頚部(標準化平均差0.303、95%CI 0.127〜0.479、p=0.001)と腰椎(0.311、95%CI 0.115〜0.507、p=0.002)の骨密度を有意に増加させている。
- サブグループ解析では、高衝撃運動または荷重運動を組み合わせた併用型が股関節(0.411、95%CI 0.176〜0.645、p=0.001)と脊椎(0.431、95%CI 0.159〜0.702、p=0.002)の双方で有意だったのに対し、レジスタンストレーニング単独では大腿骨頚部・腰椎とも有意に達しない正の効果にとどまった。 ただし抄録は、この2つのサブグループの差を直接検定した結果を報告していない。「単独では有意差を確認できなかった」ことと「単独では効果が無い」ことは同じではない。
収録している Zhao ら(2015)の全体解析では、レジスタンストレーニングが閉経後女性の大腿骨頚部(SMD 0.303、p=0.001)と腰椎(0.311、p=0.002)の骨密度を有意に増加させた。サブグループでは併用型が有意、単独型は有意に達しない正の効果だったが、両者の差は検定されていない。
ランニングなど衝撃系の有酸素運動の方が骨密度改善に効果的か
言われていること
スポーツ医学の一部の記事、ランニング系メディア
骨密度を高めるには衝撃(インパクト)が重要。ランニングや縄跳びの方が筋トレより骨への刺激が強く、骨密度改善には有酸素運動を優先すべき。
研究が示すこと
- 収録している Zhao ら(2015)が示しているのは、閉経後女性においてレジスタンストレーニングが大腿骨頚部(SMD 0.303、95%CI 0.127〜0.479、p=0.001)と腰椎(0.311、95%CI 0.115〜0.507、p=0.002)の骨密度を全体解析で有意に増加させたこと、そしてサブグループでは高衝撃運動または荷重運動を組み合わせた併用型が有意、単独型は有意に達しない正の効果だったことである。 抄録はこの2つのサブグループの差を検定していないため、単独型を効果の不在として併用型と対置することはできない。 衝撃系運動を単独で評価した研究も、部位ごとに様式を比べた研究も、本記事は収録していない。
収録した出典が示すのは、閉経後女性でレジスタンストレーニングが大腿骨頚部・腰椎の骨密度を有意に増やしたこと(メタ分析24試験)までである。サブグループでは併用型が有意、単独型は有意に達しない正の効果だったが、両者の差は検定されていない。 様式どうしの優劣も、部位ごとの得手不得手も、比べた研究を収録していないため示せない。
高齢になってからでは骨密度は改善しないか
言われていること
一般的な通説、一部の高齢者向け健康情報
骨密度は若いうちに蓄えるもの。50代以降で筋トレを始めても骨には大した効果がなく、骨粗鬆症の予防は若年期の仕事だ。
研究が示すこと
- 収録している Zhao ら(2015)が扱っているのは閉経後女性だけである。同論文は年齢区分の解析も、高齢者一般の解析も報告していない。 同メタ分析の全体解析では大腿骨頚部(SMD 0.303、p=0.001)と腰椎(0.311、p=0.002)が有意に増加しており、サブグループでは併用型が有意、単独型は有意に達しない正の効果だった(両者の差は検定されていない)。 よく併せて引かれる Peterson ら(2010)は50歳以上の47研究・1,079名を統合した大きなメタ分析だが、測定しているのは筋力だけで骨密度は扱っていないため、骨の根拠としては使えない。
- 同研究が示すのは、50歳以上でも高強度のレジスタンス運動で筋力が大きく伸びること(レッグプレス29%、レッグエクステンション33%など)である。
骨密度の根拠(Zhao 2015・閉経後女性・全体解析で有意)と筋力の根拠(Peterson 2010・50歳以上47研究1,079名・レッグプレス29%・膝伸展33%)は、別の研究から来ている。年齢による改善速度を比べた研究を、本記事は収録していない。
訂正履歴訂正2回・撤回した原文14件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。
①「ただしサブグループ解析を見ると話が変わる。」、②「著者らの結論もそうなっている。」、③「つまりこのメタ分析が支持しているのは「ウェイトを持ち上げれば骨が強くなる」ではなく、「衝撃や荷重を伴う運動と組み合わせたときに骨密度が保たれる」である。」、④「したがって「筋トレで骨が強くなる」という裏づけとしては使えず、「衝撃や荷重を伴う運動と組み合わせたとき」に限定される。」——Zhao ら(2015)の全体解析は有意であり(大腿骨頚部 SMD 0.303、p=0.001/腰椎 0.311、p=0.002)、サブグループで単独型が有意に達しなかったことは効果の不在を意味しない。抄録は併用型と単独型の差を直接検定していない。 非有意を「効果が無い」と読み替えたうえで、全体解析の結果を打ち消す形に書いていたのが誤りだった。
⑤「衝撃系運動(ランニング・跳躍)が骨密度に有効なのは事実で、特に脛骨など荷重部位では強いエビデンスがある」、⑥「一方でレジスタンストレーニングは脊椎・股関節でのBMD改善においてメタ分析レベルのエビデンスを持ち、どちらが「優れている」かは部位・対象者によって異なる」、⑦「両方を組み合わせることでさらなる効果が期待できるとも示されている」——衝撃系運動を単独で評価した研究も、部位ごとに様式を比べた研究も収録していない。⑥のうち、レジスタンストレーニングに脊椎・股関節でのメタ分析レベルの根拠があること自体はZhao ら(2015)が支えているので本文に残しており、撤回したのは様式どうしの優劣が部位・対象者によって異なるという部分である。
⑧「Peterson ら(2010)の高齢者(50歳以上・47研究・1,079名)を対象にしたメタ分析は、適切なレジスタンストレーニングにより高齢者でも筋力・骨密度が有意に改善することを示した」——Peterson ら(2010)が測定しているのは筋力だけで、骨密度は扱っていない。⑨「Zhao ら(2015)のメタ分析でも閉経後女性での効果量が特に顕著で、「遅すぎる」という主張を否定する」——「特に顕著」という比較も、「遅すぎる」を否定するための年齢比較も、同抄録には無い。⑩「高齢者や閉経後女性でも骨密度が改善しうることは、骨を直接測ったメタ分析で報告されている」——Zhao ら(2015)が扱っているのは閉経後女性だけで、年齢区分の解析も高齢者一般の解析も報告していない。
⑪「「遅すぎる」ということはない。」、⑫「ただし骨密度の回復速度は若年者より遅く、継続性と強度管理がより重要になる。」、⑬「骨密度の改善速度は若年期より遅く、継続と強度管理がより重要になる。」——年齢による改善速度を比べた研究を収録していない。
撤回した原文13件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
ただしサブグループ解析を見ると話が変わる。
著者らの結論もそうなっている。
つまりこのメタ分析が支持しているのは「ウェイトを持ち上げれば骨が強くなる」ではなく、「衝撃や荷重を伴う運動と組み合わせたときに骨密度が保たれる」である。
したがって「筋トレで骨が強くなる」という裏づけとしては使えず、「衝撃や荷重を伴う運動と組み合わせたとき」に限定される。
衝撃系運動(ランニング・跳躍)が骨密度に有効なのは事実で、特に脛骨など荷重部位では強いエビデンスがある。
一方でレジスタンストレーニングは脊椎・股関節でのBMD改善においてメタ分析レベルのエビデンスを持ち、どちらが「優れている」かは部位・対象者によって異なる。
両方を組み合わせることでさらなる効果が期待できるとも示されている。
Peterson ら(2010)の高齢者(50歳以上・47研究・1,079名)を対象にしたメタ分析は、適切なレジスタンストレーニングにより高齢者でも筋力・骨密度が有意に改善することを示した。
Zhao ら(2015)のメタ分析でも閉経後女性での効果量が特に顕著で、「遅すぎる」という主張を否定する。
高齢者や閉経後女性でも骨密度が改善しうることは、骨を直接測ったメタ分析で報告されている。
「遅すぎる」ということはない。
ただし骨密度の回復速度は若年者より遅く、継続性と強度管理がより重要になる。
骨密度の改善速度は若年期より遅く、継続と強度管理がより重要になる。
- 出典から Roberts BM ら(2020)"Sex Differences in Resistance Training"(PMID 32218059)を外した。本文が一度も引いておらず、扱っているのも骨密度ではなく筋力・筋肥大の性差だったためである。同論文は `women-lifting-masculinization-myth` の出典として引き続き収録している。あわせて記事全体の関連研究から `sex-differences-training-response-meta` を外し、`citations.lock.json` の該当エントリも削除した。
撤回した原文1件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
Roberts BM, et al. (2020) Journal of Strength and Conditioning Research
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出典
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