
40代・50代以降も抵抗性トレーニングで筋肥大は可能か
言われていること
一般的な加齢に関する通説・フィットネス文化
若い頃はテストステロンが高くて筋肉がつきやすかった。40代を過ぎるとテストステロンが落ちて筋肉がつかなくなる。無理にトレーニングしても怪我するだけだ。
研究が示すこと
- Peterson ら(2010)のメタ分析(47研究・1,079名、50歳以上)は、レジスタンス運動が高齢者の筋力を確かに伸ばすことを示している。
- 変化率はレッグプレス29%、チェストプレス24%、レッグエクステンション33%、ラットプル25%で、増加量は9.8〜31.6kgだった。
- ただし注意したいのは、このメタ分析が測っているのは筋力だけで、筋量や筋横断面積は扱っていないことである。
- 若年者と比べた筋肥大率の比較も、この研究には存在しない(若年の比較群自体が無い)。
- したがって「高齢でも筋肥大できる」をこの論文で裏づけることはできない。
- 筋力が伸びることと筋量が増えることは、重なるが同じではない。
50歳以上でも筋力が確実に伸びることは、47研究のメタ分析で裏づけられている。一方「筋肥大も若年者と同じように起こるか」は、この論文では答えられない——測っていないからである。実務的には筋力の向上だけでも十分に意味があるが、根拠の範囲は正確に押さえておきたい。
高齢者のトレーニングは軽負荷・低強度でよいか
言われていること
シニア向けフィットネス情報・一般的な安全配慮の通説
年を取ったら重いものを持つのは危険。軽い重量で高レップをゆっくりやる方が安全で十分な効果がある。無理に高強度のトレーニングはしない方がいい。
研究が示すこと
- Peterson ら(2010)の回帰分析では、高強度のトレーニングほど筋力の改善が大きかった。
- ただし抄録は「より高強度なほど良い」と述べているだけで、1RMの何%といった具体的な範囲や、週何回といった頻度の推奨は示していない。
- 軽負荷・高レップでも筋肥大は起こるが(Schoenfeld 2017)、筋力の向上という点では強度が効いてくる。
- フォームの丁寧さや回復時間の確保といった配慮は実務上重要だが、この研究が検証したものではない。
高齢者にも中〜高強度のトレーニングは有効。「強度を下げる」より「フォーム・回復の質・週ボリュームの分散」に注意するのが適切。
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関連する研究
出典
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次に読む
- 解説
高齢者の筋力トレーニング:何歳からでも効果はあるか? 研究が示す驚くべき適応力
何歳から始めても筋力トレーニングは効果がある。収録している Peterson ら(2010)のメタ分析では、高齢者が筋力トレーニングを行うことで筋力・バランス・機能的動作能力が改善している。Fiatarone ら(1990)では、フレイルな高齢者(平均90歳)が8週間の高強度レジスタンストレーニングで筋力が174%向上した。 筋肉量の増加も、転倒リスクや心血管リスクの低下も、適応速度が若者より遅いことも、収録した4件は示していない。
吉崎 槙吾
- 解説
筋トレを2週間続けたときに何が起きるか、収録した出典が言える範囲
筋トレ開始後2週間では、筋肉量の目に見えた変化はほぼない。収録している Moritani & deVries(1979)は、若年の男性7名・女性8名に8週間の等張性トレーニングを行わせ、初期の筋力増加の大部分は神経要因によるもので、その後は神経要因と筋肥大の双方が寄与し、最初の3〜5週を過ぎると筋肥大が優勢になると報告している。 2週間時点で体内に何が起きているかを直接測った研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
筋トレ開始後のタイムラインについて、収録した出典が言える範囲
筋トレを始めて2〜3週間で「急に力が出るようになった」「体が変わった気がする」という体験は多い。早期の変化について、収録した研究は何を示し、何を示していないのか。
吉崎 槙吾
