フォスファチジルセリンはコルチゾールを下げて回復を助けるか? 研究が示す効果の範囲
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フォスファチジルセリン(PS)はストレスホルモンを下げてトレーニング回復を助けると聞いたけど本当?
収録している Starks ら(2008)は、健常男性10名にPS 600mg/日を10日間投与した二重盲検・プラセボ対照のクロスオーバー試験である。自転車エルゴメータでの15分間の中強度運動(65%→85%VO2max)の前後で、コルチゾールのピーク濃度と曲線下面積がプラセボより低かった(それぞれ39±1%、35±0%、p<0.05)。テストステロン/コルチゾール比の曲線下面積は184±5%増加した。乳酸と成長ホルモンには影響が無かった。 収録している Fahey & Pearl(1998)は、訓練経験のある男性11名に大豆由来PS 800mg/日またはプラセボを与え、2週間の高強度ウェイトトレーニング期を2回(間に3週間の回復)行わせた二重盲検クロスオーバー試験である。コルチゾールは第6採血から第7採血のあいだにPS群でのみ低下し(15.6±1.7→10.0±0.9μg/dL、P<0.05)、ACTHはPS群で変化せず対照群では50%超上昇した。主観的な健康感(well-being)は第2〜6採血でPS群のほうが高く、筋肉痛は第2採血(61%)と第5採血(55%)で対照群のほうが強かった。 筋肥大・筋力への寄与については、これを評価した研究を本記事は収録していない。
フォスファチジルセリンについて ─ 収録した出典が扱っている範囲
フォスファチジルセリン(PS)はリン脂質の一種である。 体内での分布も、食品からの摂取量も、原料の由来も、収録した2件は扱っていない。 収録している Fahey & Pearl(1998)と Starks ら(2008)が測ったのは、運動に伴うコルチゾールとテストステロン/コルチゾール比、ACTH、乳酸と成長ホルモン、主観的な健康感、筋肉痛である。
運動後コルチゾール抑制の研究エビデンス
収録している Starks ら(2008)が報告しているのは、健常男性10名・PS 600mg/日・10日間で、中強度運動に伴うコルチゾールのピーク濃度と曲線下面積がプラセボより低かったこと(39±1%、35±0%、p<0.05)、テストステロン/コルチゾール比の曲線下面積が184±5%増加したこと、乳酸と成長ホルモンには影響が無かったことである。 収録している Fahey & Pearl(1998)が報告しているのは、訓練経験のある男性11名・PS 800mg/日・2週間の高強度ウェイトトレーニングで、コルチゾールが第6採血から第7採血のあいだにPS群でのみ低下したこと(15.6±1.7→10.0±0.9μg/dL、P<0.05)、ACTHがPS群で変化せず対照群では50%超上昇したこと、主観的な健康感がPS群で高く筋肉痛が対照群で強かったことである。 ただし健康感として測られているのは10点尺度の自己評価であって、気分障害の評価尺度ではない。 コルチゾールが筋タンパク質の分解を促進することを示した研究を、本記事は収録していない。
誰が最も恩恵を受けるか
対象者の属性で効果を比べた研究を、本記事は収録していない。収録した2件の被験者は、訓練経験のある男性11名と健常男性10名である。
注意点と費用対効果
収録した2件は筋肉量も筋力も測っていない。 コルチゾールの抑制が個人によってどう違うかを扱った研究も、費用対効果を扱った資料も、本記事は収録していない。
訂正履歴訂正3回・撤回した原文14件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1節に書いていた「フォスファチジルセリン(PS)は細胞膜に豊富に存在するリン脂質で、特に脳神経細胞の膜に高濃度に含まれる」「食事からはマグロ・鯛・大豆レシチンなどから摂取できるが、通常の食事では治療的な量には及びにくい」「サプリメントとして市販されているPSはダイズ由来(植物性)が主流で、かつて使われた牛脳由来PSは安全性懸念(プリオン)から現在ではほぼ使われていない」——を撤回した。体内での分布も、食品からの摂取量も、原料の由来も、収録している2件(Fahey & Pearl 1998/Starks ら 2008)は扱っていない。成分名としての定義(リン脂質の一種)だけを残し、見出しも収録した出典が扱っている範囲に合わせて改めた。なお Fahey & Pearl(1998)が大豆由来のPSを用いたことは第2節に書いているが、それは同試験が使った材料であって、市販製品の主流を示すものではない。
撤回した原文3件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
フォスファチジルセリン(PS)は細胞膜に豊富に存在するリン脂質で、特に脳神経細胞の膜に高濃度に含まれる
食事からはマグロ・鯛・大豆レシチンなどから摂取できるが、通常の食事では治療的な量には及びにくい
サプリメントとして市販されているPSはダイズ由来(植物性)が主流で、かつて使われた牛脳由来PSは安全性懸念(プリオン)から現在ではほぼ使われていない
- 本文が名指ししている論文が出典に無い状態(dangling citation)を解消した。 ①「収録している Kraemer ら(2005)のレビューはレジスタンス運動に対する急性のホルモン応答を整理したもので、コルチゾールを異化ホルモンとして挙げてはいるが、それを示した研究ではない。」(第2節)── Kraemer ら(2005)を「収録している」と書いていたが、同レビューは本記事の出典に入っていない。 収録していない論文の中身を述べたうえ、収録の有無についても誤っていた。コルチゾールと筋タンパク質分解を示した研究を収録していない、という事実だけを残した。
撤回した原文1件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
収録している Kraemer ら(2005)のレビューはレジスタンス運動に対する急性のホルモン応答を整理したもので、コルチゾールを異化ホルモンとして挙げてはいるが、それを示した研究ではない。
- 要約に書いていた「フォスファチジルセリン(PS)は200〜800mg/日の摂取で、運動後のコルチゾール上昇を10〜30%抑制する効果が複数のRCTで示されている」「心理的・身体的ストレスへのコルチゾール反応を全体的に穏やかにし、気分の改善にも効果が見られる」「ただし直接的な筋肥大や筋力向上への寄与は限定的」、第2節の「Fahey & Pearl(1998)およびHäkkinen & Kyröläinen(2000)らの研究では、PS(600〜800mg/日)の摂取が高強度運動後のコルチゾール反応を約20〜30%抑制することが示されている」「コルチゾールは筋タンパク質の分解を促進するため(Kraemerら2005のレビュー参照)、この抑制が慢性的なオーバートレーニング状態のアスリートの回復を助ける可能性がある」、第3節の「PSの回復効果が最も期待できるのは、①週5〜6日以上の高ボリューム・高強度トレーニングをしている競技アスリート、②慢性的なストレス(仕事・睡眠不足・栄養不足)との二重負荷がある場合、③過去にオーバートレーニング症候群の経験がある人」「週3〜4回の一般的なトレーニーへの効果は『あっても控えめ』という位置づけが適切で、まずは睡眠・栄養・ストレス管理を整えることが優先される」、第4節の「PS単独で筋肉量・筋力が有意に向上するというRCTエビデンスは現状乏しい」「コルチゾールの抑制が『有害な過剰コルチゾール反応』を緩和するかどうかは個人状況による」「価格はマグネシウム・クレアチンなどより高価なため、基本的なサプリ(クレアチン・プロテイン・マグネシウム・睡眠確保)を優先した上での追加選択肢として位置づけることが合理的」——をすべて撤回した。用量幅も抑制率も、収録した2件の抄録は報告していない(Starks ら 2008 は600mg/日・10日間、Fahey & Pearl 1998 は800mg/日・2週間×2期)。Häkkinen & Kyröläinen(2000)を本記事は収録していない。コルチゾールが筋タンパク質の分解を促進することを示した研究も、対象者の属性で効果を比べた研究も、個人差を扱った研究も、費用対効果を扱った資料も収録していない。「RCTエビデンスは現状乏しい」という評価も、そう言えるだけの検索を行っていないため撤回した(収録した2件は筋肉量も筋力も測っていない、と書くのが正確である)。気分の改善については、Fahey & Pearl(1998)の主観的な健康感の結果として本文に残している(ただし10点尺度の自己評価であって気分障害の評価尺度ではない)。なお撤回の過程で「Fahey & Pearl(1998)を収録していない」と書いていたが、これは誤りだった。同試験は収録している。撤回にあわせて、関連研究から Meeusen ら(2013)のオーバートレーニングのレビューとKovacevic ら(2018)の睡眠のレビューを外した。どちらも撤回した記述(オーバートレーニング状態での回復、睡眠・栄養・ストレス管理の優先)に紐づいていたもので、本文はどちらも引いていない。
撤回した原文10件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
フォスファチジルセリン(PS)は200〜800mg/日の摂取で、運動後のコルチゾール上昇を10〜30%抑制する効果が複数のRCTで示されている
心理的・身体的ストレスへのコルチゾール反応を全体的に穏やかにし、気分の改善にも効果が見られる
ただし直接的な筋肥大や筋力向上への寄与は限定的
Fahey & Pearl(1998)およびHäkkinen & Kyröläinen(2000)らの研究では、PS(600〜800mg/日)の摂取が高強度運動後のコルチゾール反応を約20〜30%抑制することが示されている
コルチゾールは筋タンパク質の分解を促進するため(Kraemerら2005のレビュー参照)、この抑制が慢性的なオーバートレーニング状態のアスリートの回復を助ける可能性がある
PSの回復効果が最も期待できるのは、①週5〜6日以上の高ボリューム・高強度トレーニングをしている競技アスリート、②慢性的なストレス(仕事・睡眠不足・栄養不足)との二重負荷がある場合、③過去にオーバートレーニング症候群の経験がある人
週3〜4回の一般的なトレーニーへの効果は「あっても控えめ」という位置づけが適切で、まずは睡眠・栄養・ストレス管理を整えることが優先される
PS単独で筋肉量・筋力が有意に向上するというRCTエビデンスは現状乏しい
コルチゾールの抑制が「有害な過剰コルチゾール反応」を緩和するかどうかは個人状況による
価格はマグネシウム・クレアチンなどより高価なため、基本的なサプリ(クレアチン・プロテイン・マグネシウム・睡眠確保)を優先した上での追加選択肢として位置づけることが合理的
関連するサプリ
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ホスファチジルセリン疲労困憊までの時間が延びた。 活動的な男性14名に大豆由来のホスファチジルセリン750mgを1日1回・10日間摂取させ、45・55・65%VO2maxで各10分の自転車運動を行った後、85%VO2maxで疲労困憊まで漕がせる試験を2回実施した。ホスファチジルセリンを摂取した条件では85%VO2maxでの疲労困憊までの時間が7分51秒から9分51秒へ延び(p=0.001)、プラセボでは変化しなかった(群間 p=0.005)(Kingsley 2006)。著者らは「ホスファチジルセリン補給で運動能力の改善を報告した最初の研究」と述べており、単一の小規模試験である。


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出典
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次に読む
- 解説
アシュワガンダについて、収録した出典が言える範囲
収録した3件が報告しているのは次のとおりである。Chandrasekhar ら(2012)では、ストレス評価尺度のスコアが60日目にプラセボ群より有意に低下し(P<0.0001)、血清コルチゾールも有意に低下した(P=0.0006)。 Wankhede ら(2015)では、8週間で1RM・筋サイズ・テストステロンの増加がプラセボ群を上回り、体脂肪率の低下も大きかった。 Langade ら(2019)では、10週間で入眠潜時・睡眠効率・睡眠の質・PSQI・不安(HAM-A)が有意に改善した。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「クレアチンは筋力を上げるだけでなく回復も早める」は本当か? 研究で確認する
クレアチンについて「回復も早まる」「筋肉ダメージを軽減する」という主張が見られる。回復への効果はどこまで研究で支持されているのか確認する。
吉崎 槙吾
- 解説
心理的ストレスがトレーニング回復を妨げる:仕事・人間関係のストレスが筋肉に与える影響
収録している出典が扱っているのは、心理的ストレスとホルモン・回復の関係ではない。 Stults-Kolehmainen & Sinha(2014)は、心理的ストレスが身体活動量に与える影響を168件から検討したレビューで、前向き研究55件のうち76.4%が、心理的ストレスがその後の身体活動の低下や座位行動の増加を予測すると報告している。 Gordon ら(2018)は、レジスタンストレーニングがうつ症状を減らすかを調べた33件のRCT(1,877名)のメタ分析で、平均効果量0.66(95%CI 0.48〜0.83、P<0.001)だった。 心理的ストレスがホルモン・回復・筋肥大に与える影響を調べた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾