タンパク質を12時間でどう分けるか(10g×8 / 20g×4 / 40g×2)と筋タンパク質合成(RCT)
Areta JL, et al.
研究が積み重なりつつある段階のエビデンス
サマリー
トレーニング経験のある健康な男性24名を3群(各8名)に分け、レジスタンス運動後の12時間で計80gのホエイプロテインを、1.5時間ごとに10g×8回(PULSE)、3時間ごとに20g×4回(INT)、6時間ごとに40g×2回(BOLUS)のいずれかのパターンで摂取させた試験。安静時と運動後1・4・6・7・12時間に筋生検を行い、筋原線維タンパク質合成(MPS)とmRNA発現、細胞内シグナルを評価した。3パターンとも12時間を通じてMPSが安静時より増加したが(88〜148%)、INT(20g×4回)が PULSE・BOLUS より31〜48%高かった。一方、細胞内シグナルのリン酸化の大きさは BOLUS>INT>PULSE の順だった。MPSで示されているのは INT が PULSE・BOLUS より高かったことまでで、PULSE と BOLUS のどちらが高いかは抄録に無い。したがって両者の順序が逆であるとは言えず、言えるのは一致していないことである。
検証の内訳
- 書誌照合
- Crossref と照合済み
- 内容照合
- 本文の記述を原著の抄録と突き合わせています確認した範囲: 被験者数・測定したアウトカム・研究デザイン・対象集団測定したのは運動後12時間のMPSで、長期の筋肥大ではない。シグナルの順序はMPSの結果と一致していない。ただし抄録はMPSについて PULSE と BOLUS の順序を示していないため、両者が逆であるとは言えない。シグナル強度から合成量を予測できないという一般則も、この1試験からは導けない。
- 訂正履歴
3件を表示
- 「過剰摂取ぶんは酸化される」は本試験が酸化を測定していない(別論文の論点)。「均等配分が筋肥大に最も有利」も、測ったのは12時間のMPSであって筋肥大ではない。シグナルの順序がMPSと一致しないという所見も落ちていた。変更履歴
- タイトルが「均等摂取 vs. 偏り摂取」と枠づけていたが、この試験が比べたのは12時間で80gを何回に分けるか(10g×8/20g×4/40g×2)であり、均等か偏りかではない。実際の3条件を示すタイトルに改めた。変更履歴
- シグナルのリン酸化とMPSを「逆の順位」と書き、そこから「シグナルの強さから合成量は読めない」と一般化していた。抄録はMPSについて INT が他の2つより高かったことしか示しておらず、PULSE と BOLUS の順序が無いため逆順とは言えない。一般則の断定も削除し、「一致しなかった」までに限定した。変更履歴
- 編集の確認
書誌の照合は Crossref・PubMed への機械照会で行っています。結果は上記の照合日時点のもので、それ以降に出た撤回・訂正は反映されていません。最終照合から365日を超えたロックを使う新しいビルドは失敗します。 内容の照合はAIが原著の抄録と突き合わせたもので、専門的な妥当性の判断ではありません。 検証していない範囲も隠さず表示しています。 検証の方法について
この研究で分かること
- 1
3時間ごとに20gずつ(合計4回)が、1.5時間ごとに10gずつ・6時間ごとに40gずつのいずれよりMPSが高かった(31〜48%高い)。
- 2
3パターンとも、12時間を通じてMPSは安静時より増加している(88〜148%)。どれかが無効というわけではない。
- 3
細胞内シグナルのリン酸化は BOLUS>INT>PULSE の順で、MPSの結果と一致しなかった。ただしMPSについて抄録が示しているのは INT が他の2つより高かったことまでで、PULSE と BOLUS の順序は示されていない。
- 4
対象はトレーニング経験のある男性24名(各群8名)で、観察期間は運動後12時間。
- 5
本試験が測定したのは12時間の筋タンパク質合成であり、長期の筋肥大やアミノ酸の酸化は測定していない。
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関連する研究
ロイシン摂取量と筋タンパク質合成(MPS)の用量反応関係
American Journal of Clinical Nutrition, 2009
健康な若年男性6名が5回にわけて来所し、脚のレジスタンス運動を行ったあと、全卵タンパク質を0g・5g・10g・20g・40g含む飲料を無作為な順序で摂取して、その後4時間の筋タンパク質合成(MPS)とアルブミン合成、ロイシン酸化を測定した試験。MPSは用量に応じて増え、20gで最大に達した。アルブミン合成も同じく20gで頭打ちになった。一方、MPSを調節すると考えられていたシグナル分子(p70S6K・リボソームタンパクS6・eIF2Bε)のリン酸化は、どの用量でも変化しなかった。著者らは、運動後のMPSの刺激はアミノ酸の利用可能性に関係している可能性があるとしている。ロイシン酸化は20gと40gの両方で有意に増えており、組織タンパク質に取り込める速度を超えた分は不可逆的に酸化されることが示された。
タンパク質補給はレジスタンストレーニングによる筋量・筋力増加を高める(メタ分析)
British Journal of Sports Medicine, 2018
健常成人を対象とした49件のRCT(計1,863名)を統合したメタ分析。6週間以上のレジスタンストレーニングにタンパク質補給を加えると、1RM筋力(+2.49kg)・除脂肪量(+0.30kg)・筋線維横断面積(+310µm²)がいずれも有意に増加した。収録試験のあいだのメタ回帰では、年齢が高いほど補給の上乗せ効果が小さく(除脂肪量で −0.01 kg/歳、p=0.002)、トレーニング経験者では大きい(+0.75kg、p=0.03)という関連が推定された。補給量も対象集団も試験ごとに違うので、年齢そのものの効果とは読めない。 総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日と推定されている。その95%信頼区間(1.03〜2.20)と、この分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)は、抄録ではなく全文(PMC5867436)の記載である。
就寝前のカゼインプロテイン摂取が一晩の筋タンパク質合成と筋力向上に与える効果(RCT)
Medicine & Science in Sports & Exercise, 2012
健康な若年男性16名が夜20時にレジスタンス運動を行い、直後に回復用の栄養(タンパク質20g・糖質60g)を摂ったうえで、就寝30分前(23時30分)にカゼイン40gを含む飲料またはプラセボを摂取し、その後7.5時間の消化吸収動態とタンパク質代謝を比較した試験。睡眠中もカゼインは効率よく消化・吸収され、血中アミノ酸濃度が速やかに上昇して夜間を通じて維持された。就寝前の摂取により全身のタンパク質合成速度(311 vs 246 µmol/kg per 7.5h)と正味のタンパク質収支(+61 vs -11 µmol/kg per 7.5h)がいずれも有意に改善した(p<0.01)。混合筋タンパク質合成速度は約22%高かったが、こちらは有意水準ぎりぎりだった(0.059 vs 0.048 %/時、p=0.05)。
この研究を扱った記事
- 解説
サプリはいつ飲むか ─ 収録した研究が示している投与条件
成分ごとに、収録した出典が実際に示している範囲だけを書く。 カフェイン。 Grgic ら(2020)は21件のメタ分析を対象としたアンブレラレビューで、有酸素持久力・筋力・筋持久力・パワー・跳躍・移動速度でエルゴジェニックだったとしている。ただし95%予測区間を考慮するとすべての解析が効果の向きを確定的に示したわけではなく、証拠の質は概して中程度、個々の研究の多くは若い男性が対象である。摂取のタイミングを比較したものではない。 クレアチン。 運動の直前と直後を比べたRCT(男性19名・4週間、Antonio & Ciccone 2013)では、除脂肪量とベンチプレス1RMは増えたが、群と時間の交互作用はいずれの指標でも有意ではなかった。 著者らの「運動直後のほうが優れている」という結論は magnitude-based inference によるもので、有意差ではない。 プロテイン。 12時間で80gを分けた3通りのうち、20gを3時間ごとに4回が最も高かった(Areta 2013)。1日の総量も食事の回数も比べていない。
吉崎 槙吾
- 解説
運動後のタンパク質摂取 ─ 収録した2件が示せる範囲
収録している2件は、どちらもタンパク質についての文献である。 Aragon & Schoenfeld(2013)のレビューは、運動後のウィンドウの重要性は——その存在すらも——いくつもの要因によって変わりうるとし、近年の証拠が古典的な見方に直接異議を唱えていると述べている。Areta ら(2013)のRCT(トレーニング経験のある男性24名)は、12時間の回復期にホエイ80gを10g×8回/20g×4回/40g×2回に分けて比べ、20gを3時間ごと(INT)が他の2つより筋原線維タンパク合成が大きかった(31〜48%、P<0.02)。どの配分でも安静時より上がっている(88〜148%)。
吉崎 槙吾
最終確認:

