ロイシン摂取量と筋タンパク質合成(MPS)の用量反応関係
Moore DR, et al.
研究が積み重なりつつある段階のエビデンス
サマリー
健康な若年男性6名が5回にわけて来所し、脚のレジスタンス運動を行ったあと、全卵タンパク質を0g・5g・10g・20g・40g含む飲料を無作為な順序で摂取して、その後4時間の筋タンパク質合成(MPS)とアルブミン合成、ロイシン酸化を測定した試験。MPSは用量に応じて増え、20gで最大に達した。アルブミン合成も同じく20gで頭打ちになった。一方、MPSを調節すると考えられていたシグナル分子(p70S6K・リボソームタンパクS6・eIF2Bε)のリン酸化は、どの用量でも変化しなかった。著者らは、運動後のMPSの刺激はアミノ酸の利用可能性に関係している可能性があるとしている。ロイシン酸化は20gと40gの両方で有意に増えており、組織タンパク質に取り込める速度を超えた分は不可逆的に酸化されることが示された。
検証の内訳
- 書誌照合
- Crossref と照合済み
- 内容照合
- 本文の記述を原著の抄録と突き合わせています確認した範囲: 被験者数・測定したアウトカム・研究デザイン・対象集団n=6と極めて小規模。全卵タンパク質での用量反応であり、プロテインの種類による差は扱っていない。
- 訂正履歴
1件を表示
- 「10〜20gで最大刺激」としていたが抄録は20gで最大。「ホエイなどロイシン含量の高いプロテインは少ない量で最大化できる」は抄録に無く、本試験が使ったのは全卵タンパク質。ロイシン酸化が20gでも増えている点、シグナル分子が変化しなかった点も落ちていた。変更履歴
- 編集の確認
書誌の照合は Crossref・PubMed への機械照会で行っています。結果は上記の照合日時点のもので、それ以降に出た撤回・訂正は反映されていません。最終照合から365日を超えたロックを使う新しいビルドは失敗します。 内容の照合はAIが原著の抄録と突き合わせたもので、専門的な妥当性の判断ではありません。 検証していない範囲も隠さず表示しています。 検証の方法について
この研究で分かること
- 1
筋タンパク質合成は用量に応じて増え、20gで最大に達した(10gではない)。
- 2
アルブミン合成も20gで頭打ちになった。
- 3
シグナル分子(p70S6K・リボソームタンパクS6・eIF2Bε)のリン酸化は、どの用量でも変化しなかった。合成の増加はシグナルの強さでは説明できていない。
- 4
ロイシン酸化は20gと40gの両方で有意に増えた。40gだけが酸化されるわけではない。
- 5
対象は若年男性6名、使用したのは全卵タンパク質。ホエイなど特定のプロテインを比較した試験ではない。
関連するサプリ
PR
EAA(必須アミノ酸)必須アミノ酸が揃っていることの理屈は、総説が示している。 BCAA単独では他の必須アミノ酸が不足し、合成の材料を確保するために既存の筋肉を分解せざるを得ない。最大限の筋タンパク質合成には必須アミノ酸全体の供給が必要である(Wolfe 2017)。
収録した総説は必須アミノ酸の供給という考え方を扱っていますが、EAA製品そのものの効果を検証した試験は収録していません。 総説は「最大限の筋タンパク質合成には必須アミノ酸全体の供給が必要」と述べており、これはBCAA単独より理にかなう位置づけです(Wolfe 2017)。ただしこれは配合製品を投与して結果を測った試験ではありません。
以下のリンクはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。
関連する研究
タンパク質補給はレジスタンストレーニングによる筋量・筋力増加を高める(メタ分析)
British Journal of Sports Medicine, 2018
健常成人を対象とした49件のRCT(計1,863名)を統合したメタ分析。6週間以上のレジスタンストレーニングにタンパク質補給を加えると、1RM筋力(+2.49kg)・除脂肪量(+0.30kg)・筋線維横断面積(+310µm²)がいずれも有意に増加した。収録試験のあいだのメタ回帰では、年齢が高いほど補給の上乗せ効果が小さく(除脂肪量で −0.01 kg/歳、p=0.002)、トレーニング経験者では大きい(+0.75kg、p=0.03)という関連が推定された。補給量も対象集団も試験ごとに違うので、年齢そのものの効果とは読めない。 総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日と推定されている。その95%信頼区間(1.03〜2.20)と、この分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)は、抄録ではなく全文(PMC5867436)の記載である。
ホエイ加水分解物・カゼイン・大豆分離プロテイン摂取が安静時および筋力トレーニング後の筋タンパク合成に与える影響
Journal of Applied Physiology, 2009
健常な若年男性18名(各群6名)が片脚のレジスタンス運動を行い、必須アミノ酸を10gに揃えたホエイ加水分解物・ミセラーカゼイン・大豆分離タンパクのいずれかを摂取して、安静時と運動後の混合筋タンパク質合成(MPS)を比較した試験。抄録は「3群に割りつけた(assigned)」とだけ記しており、無作為割付とは述べていない。無作為化比較試験としては扱わない(idは公開URLの後方互換のため変更していない)。ホエイは血中の必須アミノ酸・分岐鎖アミノ酸・ロイシン濃度をカゼイン・大豆より大きく上昇させた(p<0.05)。安静時のMPSは速いタンパク質ほど高く(ホエイ0.091・大豆0.078・カゼイン0.047 %/時)、ホエイはカゼインより約93%高かった(p<0.01)が、大豆との差(約18%)は p=0.067 で有意に届かなかった。運動後も同じ順序で、ホエイはカゼインより約122%(p<0.01)、大豆より31%(p<0.05)高かった。大豆もカゼインより安静時64%・運動後69%高い(いずれも p<0.01)。
この研究を扱った記事
- 解説
ロイシンとは? 筋タンパク質合成の『スイッチ』の正体と限界
ロイシンは体内で合成できない必須アミノ酸の1つで、BCAA(分岐鎖アミノ酸)の中でも筋タンパク質合成のスイッチ役を担うとされる。1食あたりの目安量を示せる出典を、本記事は収録していない。 この『閾値』の存在自体、研究間で一致していない。またロイシンだけを摂っても、他の必須アミノ酸が不足していれば筋タンパク質合成は長く続かない。
吉村 浩嗣
- 研究 vs 勘
「植物性プロテインでは筋肉が育たない」は本当か? ヴィーガン × 筋肥大の研究
「動物性プロテインでないと筋肉は育たない」という声は根強い。植物性プロテインのアミノ酸スコアや吸収速度が動物性より劣るのは事実だが、それが筋肥大に致命的な差を生むのか。メタ分析とRCTのデータを確認する。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「BCAAは効く」は本当か? BCAA単体に筋肥大・回復効果はあるか
BCAAはジムユーザーの定番サプリとして長年売れ続けている。「筋肉の分解を防ぐ」「回復が早くなる」という言葉はトレーニー界隈で当たり前のように語られる。しかし研究が示す絵は、マーケティングとはかなり異なる。
吉崎 槙吾
最終確認: