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研究 vs 勘

「スポーツドリンクの果糖ブドウ糖液糖は運動パフォーマンスを上げる」は本当か? 通説 vs 研究

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

スポーツドリンクのパッケージには「運動パフォーマンス向上」を思わせる訴求がよく並ぶ。果糖ブドウ糖液糖に本当にパフォーマンスを上げる効果があるのか、どんな運動・条件でその効果が確認されているのかを、研究の適用範囲まで含めて検証する。 なお、収録した3件のいずれも果糖ブドウ糖液糖(HFCS)そのものを扱っていない。 実際に投与した試験は Currell & Jeukendrup 2008(ブドウ糖と果糖の2:1溶液)の1件だけで、Rowlands 2015 は14件を統合した批判的レビュー(果糖+「ブドウ糖またはマルトデキストリン」であり、組み入れられた試験のすべてがブドウ糖を使ったわけではない)、Burke 2011 は糖質の組み合わせを特定しないレビューである。 HFCSを投与して他の糖質と比べた試験を収録していないため、以下の結果をHFCSに当てはめられるかどうかは判定できない。

Round1

長時間の持久系運動でパフォーマンスを高めるか

言われていること

スポーツドリンクのパッケージ訴求・一般的な言説

スポーツドリンク(果糖ブドウ糖液糖入り)を飲めば、運動パフォーマンスが上がる。

VS

研究が示すこと

  • RCT(Currell & Jeukendrup 2008)。 トレーニング経験のある男性サイクリスト8名が、55%Wmaxで120分の運動をしたあとタイムトライアルを行った。
  • 糖質の摂取速度を1.8g/分に揃えた条件で、ブドウ糖+果糖(2:1)はブドウ糖のみより約8%速かった(水より19%速い)。
  • 総糖質酸化量には差が無く(2.54 対 2.50 g/分)、著者らは内因性の糖質が節約されたためと解釈している。
  • 批判的レビュー(Rowlands ら 2015)。 こちらは投与した試験ではなく、2.5〜3.0時間の持久系パフォーマンスを推定した14件を統合したものである。
  • 比べられているのは「果糖+ブドウ糖またはマルトデキストリン(0.5〜1.0:1)」と「等カロリーのブドウ糖またはマルトデキストリン」であって、ブドウ糖単独に限った比較ではない。 これを1分あたり1.3〜2.4g摂ると平均パワーが1〜9%高かった。
  • ただしその95%信頼区間は0〜19で、下限が0を含む。 効果は摂取速度に依存し、毎分1.7g以上では4〜9%(2〜19)だが毎分1.4〜1.6gでは1〜3%(0〜6)にとどまる。
  • 対象となった14件は男性・主にサイクリングである。 Rowlands ら(2015)の抄録は、組み入れられた14件の対象者を訓練者と述べていない。 また、いずれも「単一の糖質と比べた場合」の差であって、何も摂らない場合との差ではない。
判定

持久系運動では、単一の糖質よりも混合糖質のほうがパフォーマンスを高めうる、という限定的な条件下では支持されている(Currell & Jeukendrup 2008 は男性サイクリスト8名で約8%、Rowlands ら 2015 は14件の統合で1〜9%。ただし後者の95%信頼区間は下限が0である)。 ただし、投与された飲料は果糖ブドウ糖液糖そのものではない。 実際に投与したのは Currell & Jeukendrup(2008)のブドウ糖+果糖2:1溶液だけで、Rowlands ら(2015)が統合しているのは果糖と「ブドウ糖またはマルトデキストリン」を組み合わせた試験である。「スポーツドリンクの果糖ブドウ糖液糖が上げる」と読み替えられるかどうかは判定できない。

信頼度:賛否が分かれる
Round2

ジムでの筋力トレーニング中も同じように挙上パフォーマンスを底上げするか

言われていること

スポーツドリンクの汎用的な訴求・トレーニーの間の通説

ジムでウェイトトレーニングをするときもスポーツドリンクを飲めば挙上重量やセット数が増える。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Burke ら(2011)が挙げている毎時30〜60gは、長時間の種目における摂取の目標値であって、利用(酸化)の上限ではない
  • 単一糖質の吸収・利用の上限を測った試験を、本サイトは収録していない。 同レビューは、運動中の炭水化物摂取は種目の性質に応じて調整すべきだとし、約1時間続く高強度の種目では、口をすすぐことも含めた少量の炭水化物が中枢神経系を介してパフォーマンスを高めるとし(それで足りるとは述べていない)、配合された炭水化物が吸収を最大化しうるのは「そうした高い摂取速度」においてであるとしている。
  • ただし同レビューの抄録は、筋力トレーニングについて何も述べていない。同レビューが筋力トレーニングを扱っているかどうかを、本サイトは抄録からは判断できない。 ウェイトトレーニング中の混合糖質摂取を検証した試験を、本サイトは収録していない。
判定

判定できない。 ウェイトトレーニング中の混合糖質摂取を検証した試験を本サイトは収録していない。収録している直接比較の証拠(Rowlands 2015 のレビューと Currell & Jeukendrup 2008 のRCT)はいずれも持久系種目のものであり、Burke ら(2011)が筋力トレーニングを扱っているかどうかは抄録から判断できない。 そこから「ジムでは恩恵が限定的」と結論することもできない。 この論点は未解明として扱う。

信頼度:研究待ち
訂正履歴訂正1回・撤回した原文4件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 「Rowlands ら(2015)が統合した研究は、主に2時間を超える持久系運動を行う訓練されたアスリートを対象としている」という限定「混合糖質がパフォーマンスを高める根拠は、単一糖質の吸収上限(約60g/時)が制約になる状況を前提にしている」という説明「一般的な45〜90分程度のウェイトトレーニングでは、糖質の利用速度が上限に達するほどの継続的なエネルギー需要が生じにくい」という説明、および「炭水化物摂取のタイミング操作に関する系統的レビューでも、効果は持久系種目や長時間トレーニングを中心に検討されている」という Burke ら(2011)の性格づけ——を撤回した。「訓練されたアスリート」は Currell & Jeukendrup(2008)の被験者の条件であって、Rowlands ら(2015)の抄録は組み入れられた14件の対象者を訓練者と述べていない。毎時30〜60gは Burke ら(2011)が挙げている長時間種目での摂取の目標値であり、利用(酸化)の上限ではない。上限を測った試験も、ジムでのエネルギー需要を測った研究も、本サイトは収録していない。Burke ら(2011)はトレーニングと競技のための炭水化物のレビューであって、摂取タイミングの操作を主題とした系統的レビューではない。
    撤回した原文4件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. ただしこれらの研究は主に2時間を超える持久系運動を行う訓練されたアスリートを対象としており
    2. 混合糖質がパフォーマンスを高める根拠は、長時間の持久系運動で単一糖質の吸収上限(約60g/時)が制約になる状況を前提にしている
    3. 一般的な45〜90分程度のウェイトトレーニングセッションでは、そもそも糖質の利用速度がこの上限に達するほどの継続的なエネルギー需要が生じにくく
    4. 炭水化物摂取のタイミング操作に関する系統的レビューでも、効果は持久系種目や長時間トレーニングを中心に検討されている

公開日: 更新日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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