
遊離の糖(HFCS)は結合型の糖(ショ糖)より吸収が速く血糖値を急上昇させるか
言われていること
異性化糖への健康不安・一部の健康情報サイト
果糖ブドウ糖液糖はすでに分解された遊離のブドウ糖・果糖なので、体への吸収が速く血糖値を急上昇させやすい。砂糖より体への負担が大きい。
研究が示すこと
- 空腹時血糖については、抄録は挙げていないが全文(PMC9551185)が報告している。 3件・6アーム・645名(HFCS群326名/ショ糖群319名)を統合した結果、空腹時血糖に両群の有意差は無かった(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82、I²=84%)。 Li ら(2022)が実際に報告しているのは次のとおり。
- 4本の論文・9つのアームから767名を統合し、HFCSとショ糖の摂取はどちらも1日の摂取エネルギーの平均19%に相当した。 3件を統合した結果、HFCSの摂取はショ糖と比べて体重を有意に変えなかった(加重平均差 −0.29kg、95%CI −1.34〜0.77、I²=0%)。 腹囲・BMI・脂肪量・総コレステロール・HDL・LDL・中性脂肪・収縮期血圧・拡張期血圧でも同様の結果だった。 一方、3件を統合した結果、CRPはHFCS群で有意に高かった(加重平均差 0.27 mg/l、95%CI 0.02〜0.52、I²=23%)。 一方、吸収速度と食後の血糖の推移は、収録している2件のどちらも測っていない。
空腹時血糖には両群の有意差が無い(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82。全文の記載)。ただし「吸収が速いか」「食後の血糖がどう動くか」は、収録している2件のどちらも測っていないため判定できない。 空腹時の値に差が無いことは、食後の推移に差が無いことを意味しない。収録しているメタ分析が示しているのは、体重・腹囲・BMI・脂肪量・血中脂質・血圧でも有意差が無く、CRPだけがHFCS群で有意に高かったことである。
工業的に作られた糖(異性化糖)であること自体が健康リスクを高めるか
言われていること
「天然=安全、人工=危険」という自然主義的な言説
果糖ブドウ糖液糖は工業的に作られた人工的な糖だから、天然の砂糖より体に悪い・危険だ。
研究が示すこと
- 収録している Li ら(2022)が示しているのは、体重・腹囲・BMI・脂肪量・血中脂質・血圧のいずれでもHFCSとショ糖に有意差が無く、CRPだけがHFCS群で有意に高かった(0.27 mg/l、95%CI 0.02〜0.52)ことである。
- もう1件の Carran ら(2016)は、41名を対照群と介入群に無作為に割り付けた急性の試験である。
- 対照群は果糖飲料600mlとブドウ糖飲料600mlを、ソフトドリンク群は355mlと600mlを無作為な順で摂取した(対照飲料は600mlのソフトドリンクと果糖量を26.7gで揃えてある)。
- 600mlのソフトドリンクの摂取後、血漿尿酸はブドウ糖対照と比べて30分後に13μmol/l(95%CI 3〜23)、60分後に17μmol/l(6〜28)高かった。 果糖飲料との比較では30分後・60分後とも有意差は無く、355mlと600mlのあいだにも差は無かった。
- 著者らの結論は、355mlという少量でも、ショ糖で甘味をつけた市販のソフトドリンクの摂取後には小さく一過性の血漿尿酸の上昇が起こりうるである。
「工業的に作られた糖であること自体が健康リスクを高める」かどうかを、本記事が収録している出典からは判定できない——製造法を比べた研究を収録していない。言えるのは、主要な体格・代謝指標にHFCSとショ糖の有意差が無く、CRPだけがHFCS群で有意に高かったこと、そしてショ糖ベースの市販ソフトドリンクでも血漿尿酸が小さく一過性に上がることである。糖の種類と総摂取量のどちらが重要かを比べた研究も、本記事は収録していない。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文5件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1ラウンドに書いていた「ショ糖(砂糖)は小腸の刷子縁にあるスクラーゼという酵素でほぼ瞬時に分解され、遊離のブドウ糖・果糖になってから吸収される」「この分解ステップは非常に速いため、実際の吸収速度の差はわずかとされる」「『遊離の糖だから急上昇させる』という理屈は消化生理としては単純化しすぎている」、第2ラウンドの「ショ糖(砂糖)もサトウキビ・てん菜から工業的に精製された糖であり、『天然か人工か』という区分自体があいまいである」、およびその結論の「『人工的だから危険』という単純化は支持されない」「ただしCRPのようにわずかな差を示す報告もあり、『完全に同じ』と言い切るのも正確ではない」「糖の種類の違いより総摂取量の管理が本質的に重要という結論は変わらない」——を撤回した。消化生理(スクラーゼによる分解の速さ)も、製造法の比較も、摂取量と糖の種類のどちらが重要かも、収録している2件(Li ら 2022/Carran ら 2016)は扱っていない。あわせて空腹時血糖の結果は、抄録ではなく全文(PMC9551185)の記載であることを明記する形に改めた。なお結論の3文はまとめて撤回した。「人工的だから危険という単純化は支持されない」も、製造法を比べた研究を収録していない以上は支持も否定もできないため。CRPの差そのものは本文に残している。
撤回した原文5件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
ショ糖(砂糖)は小腸の刷子縁にあるスクラーゼという酵素でほぼ瞬時に分解され、遊離のブドウ糖・果糖になってから吸収される
この分解ステップは非常に速いため、実際の吸収速度の差はわずかとされる
『遊離の糖だから急上昇させる』という理屈は消化生理としては単純化しすぎている
ショ糖(砂糖)もサトウキビ・てん菜から工業的に精製された糖であり、『天然か人工か』という区分自体があいまいである
『人工的だから危険』という単純化は支持されない。ただしCRPのようにわずかな差を示す報告もあり、『完全に同じ』と言い切るのも正確ではない。糖の種類の違いより総摂取量の管理が本質的に重要という結論は変わらない
関連する研究
出典
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次に読む
- 研究 vs 勘
「果糖ブドウ糖液糖は普通の砂糖より肝臓に悪い」は本当か? 果糖代謝 通説 vs 研究
「果糖ブドウ糖液糖は普通の砂糖より肝臓に悪い」という主張は、SNSや健康情報サイトで頻繁に見かける。 先に断っておくと、収録している3件のうち、果糖ブドウ糖液糖とショ糖を直接比べたのはLi ら(2022)の1件だけであり、その研究は肝臓の指標をひとつも測っていない。 残る2件が比べているのは果糖と他の炭水化物(Chiu 2014)、果糖飲料とブドウ糖飲料(Stanhope 2009)であって、果糖ブドウ糖液糖とショ糖ではない。 したがって本記事は「果糖ブドウ糖液糖が普通の砂糖より肝臓に悪いか」という問いそのものには答えられない。 以下では、それぞれの研究が実際に比べたものを、比べたとおりに整理する。
吉崎 槙吾
- 解説
果糖ブドウ糖液糖とは? 作り方・区分・砂糖との違い
果糖ブドウ糖液糖は、でん粉を分解してブドウ糖にしたあと、その一部を酵素で果糖に変換(異性化)して作る液状の糖である。日本ではJAS規格で果糖含有率により「ぶどう糖果糖液糖(50%未満)」「果糖ぶどう糖液糖(50〜90%未満)」「高果糖液糖(90%以上)」に区分される。果糖は冷やしたほうが甘みを強く感じるため、清涼飲料水には果糖を多く含む「果糖ぶどう糖液糖」がよく使われるとされる(農畜産業振興機構)。 ショ糖との比較では、Li ら(2022)の系統的レビュー・メタ分析(4報9群・767名)で、体重・腹囲・BMI・体脂肪量・血中脂質・血圧に「果糖ブドウ糖液糖の群とショ糖の群のあいだの」統計学的に有意な差は無かった。これは摂取前後の変化についての結果ではなく、また有意差が無いことは差がゼロであることの証明でもない。 一方でCRP(炎症の指標)は、ショ糖の群と比べて果糖ブドウ糖液糖の群で有意に高かった(群間差 +0.27mg/L、95%CI 0.02〜0.52)。 摂取量は両群とも1日の総摂取カロリーの19%相当で、統合されたのは4報にすぎない。 空腹時血糖については、抄録は個別の数値を挙げていないが、全文(PMC9551185)が報告している。3件・6アーム・645名を統合した結果、群間に有意な差は無かった(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82、I²=84%)。
吉崎 槙吾
- 解説
運動中の果糖+ブドウ糖の混合飲料 ─ 収録した出典が示せる範囲
まず、収録した3件のいずれも果糖ブドウ糖液糖(HFCS)そのものを扱っていない。 実際に投与した試験は Currell & Jeukendrup 2008(ブドウ糖と果糖の2:1溶液)の1件だけで、Rowlands 2015 は14件を統合した批判的レビュー(果糖+「ブドウ糖またはマルトデキストリン」)、Burke 2011 は糖質の組み合わせを特定しないレビューである。 HFCSを投与して他の糖質と比べた試験を本記事は収録していないため、以下の結果をHFCSに当てはめられるかどうかは判定できない。 摂取量の目安については、Burke ら(2011)が「長時間の種目では毎時30〜60g、2.5時間を超える種目では毎時90gまでが有益になりうる」「配合された炭水化物はそうした高い摂取速度での吸収を最大化しうる」と述べている。ただしこれは摂取の目標値であって、利用の上限ではない。 混合摂取そのものの効果について、収録した2件が示しているのは次の範囲である。 批判的レビュー(Rowlands 2015、14件・男性・主にサイクリング)では、同カロリーのブドウ糖/マルトデキストリンと比べ、果糖と、ブドウ糖またはマルトデキストリンを0.5〜1.0:1で組み合わせた飲料を1分あたり1.3〜2.4g摂ると平均パワーが1〜9%向上した(95%信頼区間 0〜19。下限は0である)。RCT(Currell & Jeukendrup 2008、男性サイクリスト8名)では、同じ摂取速度(1.8g/分)でブドウ糖+果糖2:1がブドウ糖のみより8%速くタイムトライアルを完走した。 輸送体(SGLT1・GLUT5)の機序、女性での結果、筋力トレーニングへの当てはめについては、いずれも出典を示せない。
吉崎 槙吾