果糖ブドウ糖液糖とは? 作り方・区分・砂糖との違い
公開日: ・ 更新日:
清涼飲料の原材料表示でよく見る「果糖ブドウ糖液糖」とは、結局どんな成分なのか?
果糖ブドウ糖液糖は、でん粉を分解してブドウ糖にしたあと、その一部を酵素で果糖に変換(異性化)して作る液状の糖である。日本ではJAS規格で果糖含有率により「ぶどう糖果糖液糖(50%未満)」「果糖ぶどう糖液糖(50〜90%未満)」「高果糖液糖(90%以上)」に区分される。果糖は冷やしたほうが甘みを強く感じるため、清涼飲料水には果糖を多く含む「果糖ぶどう糖液糖」がよく使われるとされる(農畜産業振興機構)。 ショ糖との比較では、Li ら(2022)の系統的レビュー・メタ分析(4報9群・767名)で、体重・腹囲・BMI・体脂肪量・血中脂質・血圧に「果糖ブドウ糖液糖の群とショ糖の群のあいだの」統計学的に有意な差は無かった。これは摂取前後の変化についての結果ではなく、また有意差が無いことは差がゼロであることの証明でもない。 一方でCRP(炎症の指標)は、ショ糖の群と比べて果糖ブドウ糖液糖の群で有意に高かった(群間差 +0.27mg/L、95%CI 0.02〜0.52)。 摂取量は両群とも1日の総摂取カロリーの19%相当で、統合されたのは4報にすぎない。 空腹時血糖については、抄録は個別の数値を挙げていないが、全文(PMC9551185)が報告している。3件・6アーム・645名を統合した結果、群間に有意な差は無かった(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82、I²=84%)。
どうやって作られるか
とうもろこしなどのでんぷんを酵素で分解してブドウ糖(グルコース)の液を作り、その一部をさらに異性化酵素(グルコースイソメラーゼ)で果糖(フルクトース)に変換する。この「ブドウ糖の一部を果糖に変える」工程から「異性化糖」とも呼ばれる。原料はとうもろこしに限らず、国内ではじゃがいも・さつまいも由来のでんぷんも使われる。
「ぶどう糖果糖液糖」と「果糖ぶどう糖液糖」は何が違うのか
原材料表示でよく見る2つの名称は、果糖とブドウ糖のどちらが多いかで決まる。日本のJAS規格では果糖含有率50%未満を「ぶどう糖果糖液糖」、50〜90%未満を「果糖ぶどう糖液糖」、90%以上を「高果糖液糖」と定めており、多いほうの糖名が先に来る。農畜産業振興機構が述べているのは「清涼飲料水には果糖を多く含んだ『果糖ぶどう糖液糖』がよく使われるようだ」までである。 スポーツドリンクで主にどの区分が使われているかを示す出典を、本記事は収録していない。
- 50%未満
- ぶどう糖果糖液糖の果糖含有率
- 50〜90%未満
- 果糖ぶどう糖液糖の果糖含有率
- 90%以上
- 高果糖液糖の果糖含有率
砂糖(ショ糖)と組成はどう違うのか
砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖が一つずつ結合した結晶で、異性化糖は果糖とブドウ糖の分子が混ざっただけの液体である(農畜産業振興機構)。 ショ糖との比較について、Li ら(2022)の系統的レビュー・メタ分析(4報9群・767名)が報告していることは次のとおりである。 体重は、果糖ブドウ糖液糖の群とショ糖の群のあいだに統計学的に有意な差が無かった(群間の加重平均差 −0.29kg、95%信頼区間 −1.34〜0.77、I²=0%)。腹囲・BMI・体脂肪量・総コレステロール・HDL・LDL・トリグリセリド・収縮期血圧・拡張期血圧についても、同じく群間に有意な差は無かった。 これは「どちらを摂っても体重等が変わらない」という意味ではない。 比べられているのは2つの甘味料のあいだの差であって、摂取前後の変化ではない。 また有意差が無いことは差がゼロであることの証明でもない(体重の信頼区間は −1.34〜0.77kg にわたる)。 一方、CRP(C反応性タンパク、炎症の指標)は、ショ糖の群と比べて果糖ブドウ糖液糖の群で有意に高かった(加重平均差 0.27mg/L、95%信頼区間 0.02〜0.52、I²=23%、3報)。 空腹時血糖については、抄録は個別の数値を挙げていないが、全文(PMC9551185)が報告している。3件・6アーム・645名を統合した結果、群間に有意な差は無かった(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82、I²=84%)。 なお同メタ分析での摂取量は、果糖ブドウ糖液糖・ショ糖ともに1日の総摂取カロリーの19%相当である。 また4報という少ない数の統合であり、著者2名は関連企業に雇用されていることが利益相反として開示されている。
なぜ飲料に使われるのか
果糖ブドウ糖液糖は、果糖とブドウ糖の分子が混ざった液体である(農畜産業振興機構)。同機構は、砂糖やブドウ糖の甘味は温度によってさほど変化しないのに対し、果糖は冷やしたほうが甘みを強く感じることから、清涼飲料水には果糖を多く含んだ「果糖ぶどう糖液糖」がよく使われるようだとしている。 また果糖の甘味度は砂糖の1.7倍程度、ブドウ糖は砂糖の7割程度の甘みとされている。 普及の経緯について同機構は、日本の研究者が砂糖の代替として1960年代後半に世界に先駆けて大量生産の道を開き、当時キューバ革命により砂糖を輸入できなくなった米国の大手清涼飲料メーカーが着目して世界的に売り出した結果、広く普及したとしている。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文8件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。
①「低温でも溶けやすく甘みが引き立つ性質があり、常温・冷蔵で飲む清涼飲料・スポーツドリンクに広く使われている」、②「清涼飲料・スポーツドリンクでは主に「果糖ぶどう糖液糖」(果糖50〜90%未満)が使われる」、③「果糖ブドウ糖液糖は液状で扱いやすく、低温でも結晶化せず溶けたままなので、冷蔵・常温で飲む清涼飲料やスポーツドリンクに向いている」、④「粉末の砂糖より製造ラインへの投入・混合が容易でコストも安定しやすいという製造上の利点もある」——農畜産業振興機構が述べているのは「清涼飲料水には果糖を多く含んだ『果糖ぶどう糖液糖』がよく使われるようだ」までで、スポーツドリンクについての記述も、結晶化・製造ラインの扱いやすさ・コストについての記述も無い。
⑤「砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖が1:1の比率で結合した二糖類で、消化管でショ糖分解酵素(スクラーゼ)により分解されて初めて遊離のブドウ糖・果糖になる」、⑥「両者とも消化・吸収後は血中にほぼ同じ形で現れ、果糖含有率の差もおおむね数%にとどまる」——スクラーゼによる分解も、血中での形も、収録した出典に記載が無い。JAS規格では果糖ぶどう糖液糖の果糖含有率は50〜90%未満とされており、ショ糖の50%との差を「数%」と言える根拠を本記事は持っていない。
⑦「767名を統合したメタ分析でも、体重・血糖・脂質など主要な代謝指標に有意差は見られなかった(出典参照)」——CRP(炎症の指標)はショ糖の群と比べて果糖ブドウ糖液糖の群で有意に高かった(群間差 +0.27mg/L、95%CI 0.02〜0.52、3報)のに、それに触れないまま「有意差は見られなかった」とだけ書いていた。有意な差を落としていたことになる。
⑧「果糖ブドウ糖液糖とは? ジュース・スポーツドリンクに使われる理由」(旧タイトル)——②③と同じ理由による。
あわせて、この記事は一時「空腹時血糖について同メタ分析は個別の数値を挙げていない」として撤回していたが、その撤回自体が誤りだった。全文(PMC9551185)が3件・6アーム・645名を統合して群間差(加重平均差 −0.87 mg/dl、95%CI −2.56〜0.82、I²=84%)を報告しており、いまは本文に載せている。これは撤回ではなく復元なので `removed` には収めていない。
撤回した原文8件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
低温でも溶けやすく甘みが引き立つ性質があり、常温・冷蔵で飲む清涼飲料・スポーツドリンクに広く使われている。
清涼飲料・スポーツドリンクでは主に「果糖ぶどう糖液糖」(果糖50〜90%未満)が使われる。
果糖ブドウ糖液糖は液状で扱いやすく、低温でも結晶化せず溶けたままなので、冷蔵・常温で飲む清涼飲料やスポーツドリンクに向いている。
粉末の砂糖より製造ラインへの投入・混合が容易でコストも安定しやすいという製造上の利点もある。
砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖が1:1の比率で結合した二糖類で、消化管でショ糖分解酵素(スクラーゼ)により分解されて初めて遊離のブドウ糖・果糖になる。
両者とも消化・吸収後は血中にほぼ同じ形で現れ、果糖含有率の差もおおむね数%にとどまる。
767名を統合したメタ分析でも、体重・血糖・脂質など主要な代謝指標に有意差は見られなかった(出典参照)。
果糖ブドウ糖液糖とは? ジュース・スポーツドリンクに使われる理由
関連する研究
出典
公開日: / 更新日:


次に読む
- 研究 vs 勘
「果糖ブドウ糖液糖は異性化糖だから体に悪い」は本当か? 砂糖との違い 通説 vs 研究
「異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)は工業的に作られた不自然な糖だから、普通の砂糖より体に悪い」という主張は日本で特によく聞かれる。遊離の糖だから吸収が速いという理屈、人工的に作られているから危険という理屈、それぞれ研究は何を示しているのかを確認する。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「果糖ブドウ糖液糖は普通の砂糖より肝臓に悪い」は本当か? 果糖代謝 通説 vs 研究
「果糖ブドウ糖液糖は普通の砂糖より肝臓に悪い」という主張は、SNSや健康情報サイトで頻繁に見かける。 先に断っておくと、収録している3件のうち、果糖ブドウ糖液糖とショ糖を直接比べたのはLi ら(2022)の1件だけであり、その研究は肝臓の指標をひとつも測っていない。 残る2件が比べているのは果糖と他の炭水化物(Chiu 2014)、果糖飲料とブドウ糖飲料(Stanhope 2009)であって、果糖ブドウ糖液糖とショ糖ではない。 したがって本記事は「果糖ブドウ糖液糖が普通の砂糖より肝臓に悪いか」という問いそのものには答えられない。 以下では、それぞれの研究が実際に比べたものを、比べたとおりに整理する。
吉崎 槙吾
- 解説
運動中の果糖+ブドウ糖の混合飲料 ─ 収録した出典が示せる範囲
まず、収録した3件のいずれも果糖ブドウ糖液糖(HFCS)そのものを扱っていない。 実際に投与した試験は Currell & Jeukendrup 2008(ブドウ糖と果糖の2:1溶液)の1件だけで、Rowlands 2015 は14件を統合した批判的レビュー(果糖+「ブドウ糖またはマルトデキストリン」)、Burke 2011 は糖質の組み合わせを特定しないレビューである。 HFCSを投与して他の糖質と比べた試験を本記事は収録していないため、以下の結果をHFCSに当てはめられるかどうかは判定できない。 摂取量の目安については、Burke ら(2011)が「長時間の種目では毎時30〜60g、2.5時間を超える種目では毎時90gまでが有益になりうる」「配合された炭水化物はそうした高い摂取速度での吸収を最大化しうる」と述べている。ただしこれは摂取の目標値であって、利用の上限ではない。 混合摂取そのものの効果について、収録した2件が示しているのは次の範囲である。 批判的レビュー(Rowlands 2015、14件・男性・主にサイクリング)では、同カロリーのブドウ糖/マルトデキストリンと比べ、果糖と、ブドウ糖またはマルトデキストリンを0.5〜1.0:1で組み合わせた飲料を1分あたり1.3〜2.4g摂ると平均パワーが1〜9%向上した(95%信頼区間 0〜19。下限は0である)。RCT(Currell & Jeukendrup 2008、男性サイクリスト8名)では、同じ摂取速度(1.8g/分)でブドウ糖+果糖2:1がブドウ糖のみより8%速くタイムトライアルを完走した。 輸送体(SGLT1・GLUT5)の機序、女性での結果、筋力トレーニングへの当てはめについては、いずれも出典を示せない。
吉崎 槙吾