
オメガ3(EPA・DHA)は筋肉痛(DOMS)を軽減するか
言われていること
フィッシュオイル推奨コミュニティ・リカバリーサプリ情報
フィッシュオイルは万能の炎症抑制サプリで、筋肉痛をほぼゼロにできる。毎日大量に飲めば飲むほど回復が早まる。
研究が示すこと
- 収録している Jouris ら(2011)は、健常成人11名(35±10歳)が上腕二頭筋の伸張性カール運動を2回行った試験である。
- 1回目は食事性オメガ3を14日間制限した対照条件、2回目はオメガ3を1日3,000mg・7日間摂取した条件で、運動前と運動48時間後に筋肉痛の主観評価・腫れ(上腕周囲長・上腕容積)・皮膚温を測った。
- 運動によって筋肉痛は増加し(p<0.0001)、その増加の大きさがオメガ3条件で15%小さかった(p=0.004)。 一方、腫れについては群間差が出ていない。 上腕周囲長は対照条件では増加したが(p=0.01)オメガ3条件では増加せず(p=0.15)、条件間の比較では差が無かった(p=0.45)。 上腕容積と皮膚温はどちらの条件でも変化しなかった。
- この試験はCKもサイトカインも測定していない。測ったのは主観的な筋肉痛・腫れ・皮膚温の3つである。 評価は運動48時間後の1時点だけで、持続時間を追っていない。用量を比較した設計でもなく、抄録に効果量の数値も無い。 なお、対照条件のあとにオメガ3条件を行う順序で実施されており、順序の影響を切り分けていない。 11名という規模も小さい。
言えるのは、11名の試験で運動48時間後の筋肉痛の増加が15%小さかった(p=0.004)ということまでである。 同じ試験で腫れには群間差が無く(p=0.45)、上腕容積と皮膚温は変化していない。炎症指標(CK・サイトカイン)は測られていないため、「炎症を抑えた」とは言えない。 用量・期間・効果量・持続時間について、本記事は出典を示せない。
炎症を抑制しすぎると筋肥大が妨げられるか
言われていること
「炎症はすべて悪」という過剰な抗炎症志向
炎症は悪いものだから、できるだけ抑えれば回復が早まって筋肥大に有利。抗炎症サプリは多ければ多いほどいい。
研究が示すこと
- 収録している2件は、どちらも炎症抑制と筋肥大の関係を調べたものではない。 Jouris ら(2011)が測ったのは運動48時間後の筋肉痛・腫れ・皮膚温で、筋肥大も炎症性サイトカインも扱っていない。
- Smith ら(2011)は筋タンパク合成の応答を測った9名の試験で、炎症を抑制する介入ではない。
- したがって「炎症を抑えすぎると筋肥大が妨げられるか」という論点について、本記事は出典を示せない。
この論点を検証した研究を、本記事は収録していない。炎症抑制の程度と筋肥大の関係を測った試験が無いため、安全とも危険とも言えない。
オメガ3のMPS増加は長期的な筋肥大に転化するか
言われていること
筋肉増強を謳うサプリメント広告、一部のスポーツ栄養の解釈
魚油は筋タンパク合成率(MPS)を上げるから、プロテインと一緒に飲めば筋肉が増える。筋肥大目的でも積極的に摂るべき。
研究が示すこと
- Smith ら(2011)のRCT(9名・8週間・オメガ3 4g/日)で押さえたいのは、安静空腹時の筋タンパク質合成率は変化しなかったという点である。
- 増えたのは、インスリンとアミノ酸を投与したときの反応のほうで(0.062→0.083 %/時、p<0.05)、mTOR・p70S6Kのリン酸化も約50%上昇した。
- つまりオメガ3は合成を底上げするのではなく、刺激があったときの応答を大きくする方向に働いている。
- 筋のタンパク質濃度とタンパク質/DNA比も高かった。
- ただし対象は9名と極めて小規模で、これが長期の筋肥大に転化するかを示した試験ではない。
オメガ3が「安静時の筋タンパク合成を高める」わけではない。高まるのは、栄養刺激が入ったときの応答である。この違いは実務上も意味があり、食事のタンパク質が足りていない状態でオメガ3だけ足しても筋には働きにくい、という読み方になる。n=9の急性指標であり、筋肥大を目的にオメガ3を選ぶ根拠としては弱い。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文10件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1ラウンドに書いていた「Jouris ら(2011)のRCTなど複数の研究で、EPA・DHAの補充(2〜3g/日)がDOMSの重症度と持続時間を有意に軽減することが示されている」、「効果は『消失』ではなく『軽減』のレベルで、効果量は小〜中程度(d≈0.3〜0.5)と全研究で一致しているわけではない」、「軽減はDOMSの主観評価に加え、CK(クレアチンキナーゼ)や炎症性サイトカイン(IL-6等)の低下としても現れる」、「単回摂取では効果が出にくく、少なくとも4〜6週間の継続摂取が前提とされる」、「2〜3g/日の適切な摂取量での効果は示されているが、5g/日以上の高用量毎日投与が必ずしも追加効果をもたらすとは限らない」、および第2ラウンドの「運動後の急性炎症反応は筋タンパク質合成シグナル(特にIL-6やIGF-1を介した経路)の活性化に関与しており、完全な炎症抑制が長期的な筋肥大シグナルを弱める可能性が動物実験・一部ヒト研究で示唆されている」、「NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)の高用量長期使用は筋タンパク合成を低下させるという研究が複数存在する」、「オメガ3の通常摂取量(2〜3g/日)はこのレベルに達しないと考えられる」、「炎症の完全抑制が筋肥大にとって最適でない可能性は認識しておく必要がある」、および結論の「完全な炎症抑制が筋肥大シグナルを弱める可能性は示唆される」「通常摂取量のオメガ3では問題となる水準ではない可能性が高い」「高用量の連日投与は慎重に」——をすべて撤回した。収録している Jouris ら(2011)はCKもサイトカインも測定しておらず、評価は運動48時間後の1時点だけで持続時間を追っていない。摂取期間は7日間で、用量を比較した設計でもなく、抄録に効果量の数値も無い。炎症抑制と筋肥大の関係については、Jouris ら(2011)も Smith ら(2011)も調べていない。
撤回した原文10件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
Jouris et al.(2011)のRCTなど複数の研究で、EPA・DHAの補充(2〜3g/日)がDOMSの重症度と持続時間を有意に軽減することが示されている
ただし効果は「消失」ではなく「軽減」のレベルで、効果量は小〜中程度(d≈0.3〜0.5)と全研究で一致しているわけではない
軽減はDOMSの主観評価に加え、CK(クレアチンキナーゼ)や炎症性サイトカイン(IL-6等)の低下としても現れる
単回摂取では効果が出にくく、少なくとも4〜6週間の継続摂取が前提とされる
2〜3g/日の適切な摂取量での効果は示されているが、5g/日以上の高用量毎日投与が必ずしも追加効果をもたらすとは限らない
運動後の急性炎症反応は筋タンパク質合成シグナル(特にIL-6やIGF-1を介した経路)の活性化に関与しており、完全な炎症抑制が長期的な筋肥大シグナルを弱める可能性が動物実験・一部ヒト研究で示唆されている
NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)の高用量長期使用は筋タンパク合成を低下させるという研究が複数存在
オメガ3の通常摂取量(2〜3g/日)はこのレベルに達しないと考えられるが、炎症の完全抑制が筋肥大にとって最適でない可能性は認識しておく必要がある
完全な炎症抑制が筋肥大シグナルを弱める可能性は示唆されるが、通常摂取量のオメガ3では問題となる水準ではない可能性が高い
高用量の連日投与は慎重に
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関連する研究
出典
公開日: / 更新日:


次に読む
- 解説
冷水浴(アイスバス)について、収録した出典が言える範囲
収録している Bleakley ら(2012)のコクランレビューが示すのは、受動的な介入(安静または無介入)と比べたときの筋肉痛の軽減である。 運動後24時間(SMD −0.55、95%CI −0.84〜−0.27、10試験)、48時間(−0.66、−0.97〜−0.35、8試験)、72時間(−0.93、−1.36〜−0.51、4試験)、96時間(−0.58、−1.00〜−0.16、5試験)のいずれでも統計的に有意だった。ただし結果は異質性が高い。 Roberts ら(2015)は、12週間のトレーニング後に筋力と筋量の増加がアクティブリカバリー群のほうが冷水浴群より大きかったと報告している(P<0.05)。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「クレアチンは筋力を上げるだけでなく回復も早める」は本当か? 研究で確認する
クレアチンについて「回復も早まる」「筋肉ダメージを軽減する」という主張が見られる。回復への効果はどこまで研究で支持されているのか確認する。
吉崎 槙吾
- 解説
フォームローラーについて、収録した出典が言える範囲
収録している Cheatham ら(2015)は、激しい運動後の筋パフォーマンスの低下と遅発性筋肉痛を軽減しうると述べている(「しうる」という限定つき)。 同レビューは、フォームローラーまたはローラーマッサージャーによる自己筋膜リリースが、筋パフォーマンスに悪影響を与えずに関節可動域を短期的に高めるように見えること、激しい運動後の筋パフォーマンスの低下と遅発性筋肉痛を軽減しうることを述べている。運動前の短時間の実施は筋パフォーマンスに影響しないようだとしている。 著者らは、この領域の文献はまだ出現しつつある段階で、方法の異質性のため最適なプロトコルについての合意は現時点で無いと結論している(エビデンスレベル2c)。
吉崎 槙吾

