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研究 vs 勘

種目の順番は筋肥大に影響するか? トレーニング順序の科学

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「コンパウンド種目を先にやり、アイソレーションで仕上げる」「疲れてからのコンパウンド種目は怪我の原因」——種目の順番については様々なルールが語られる。果たして、どの順番でトレーニングを行うかは実際の筋肥大に影響するのか。研究データから答えを探る。

Round1

先に行った種目の方が後に行った種目より筋肥大が大きいか

言われていること

ボディビル系プログラミング・トレーナー指導

先にやった種目の方が疲労がない分フォーム・重量ともに最大のパフォーマンスが出るため、それを優先したい筋肉に当てるべきだ。後の方に回すと効果が大きく落ちる。

VS

研究が示すこと

  • 収録している3件が示していることは次のとおり。 Simão ら(2005)は、6か月以上の経験がある18名(男性14・女性4)が上半身5種目を大筋群→小筋群の順と逆順で行い、各種目3セットを筋力的な破綻まで実施した試験である。
  • 大筋群・小筋群のどちらであっても、種目を配列の最後に行うと3セットの反復回数が有意に少なくなり、とくに3セット目で顕著だった。 Spreuwenberg ら(2006)は、経験のある男性9名がバックスクワット(85%1RMで4セット)を、セッションの最初に行う条件と全身のセッションのあとに行う条件で比較し、最初に行った条件で1セット目の反復回数が有意に多かった(8.0±1.9 対 5.4±2.7)。ただし各セットの平均パワーは後に行った条件のほうが高く、主観的運動強度に差は無かった。 Gentil ら(2007)は、経験のある男性13名でプレ疲労法(ペックデック→チェストプレス)と優先法(チェストプレス→ペックデック)を比べ、総仕事量・総反復回数に有意差は無く、ペックデックの筋電図にも差が無かった。一方、チェストプレスをペックデックの後に行うと上腕三頭筋の活動が有意に高かった。
判定

セッション内では、種目を後ろに置くほど反復回数が減ることが収録2件で示されている(Simão 2005、Spreuwenberg 2006)。ただし Spreuwenberg らでは、後に行った条件のほうが各セットの平均パワーは高かった(著者らは活動後増強の可能性を挙げている)。長期の筋肥大を扱った研究を、本記事は収録していない。

信頼度:中程度の根拠
Round2

プレ疲労法(アイソレーションを先にやる)は筋肥大を高めるか

言われていること

アーノルドシュワルツェネッガー系ボディビル理論

大胸筋を最大限鍛えるには、先にフライ(アイソレーション)で大胸筋を疲弊させてからベンチプレス(コンパウンド)をやると、三頭筋が大胸筋に先んじて疲れないから大胸筋に最大の刺激が入る。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Gentil ら(2007)は、経験のある男性13名でプレ疲労法(ペックデック→チェストプレス)と優先法(チェストプレス→ペックデック)を比べた急性の試験である。
  • プレ疲労法と優先法のあいだで総仕事量・総反復回数に有意差は無く、著者らは「プレ疲労の運動は、多関節種目で先に疲弊させた筋の活動を高めるうえで、より効果的とは言えない」と結論している。
  • 一方、チェストプレスをペックデックの後に行うと上腕三頭筋の活動が有意に高かった。 プレ疲労法と通常の順序を比べた長期の筋肥大の研究を、本記事は収録していない。
判定

プレ疲労法と通常の順序を比べた長期の筋肥大の研究を、本記事は収録していない。急性の比較では、収録している Gentil ら(2007)が総仕事量・総反復回数に有意差を検出していない。

信頼度:研究待ち
Round3

同一セッション内での部位の順番(例:胸→三頭 vs 三頭→胸)は重要か

言われていること

基本的なウェイトトレーニングガイドライン

胸のトレーニングで三頭筋を先に使い切ると後半のベンチプレスが弱くなる。だから補助筋(三頭筋・三角筋前部)のアイソレーションはチェストプレスの後に行うべきだ。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Robbins ら(2010)は急性の試験である。
  • 訓練経験のある男性16名が、4RMの負荷でベンチプル3セットとベンチプレス3セットを、従来型(ベンチプルを3セット終えてからベンチプレス、約10分)ペアセット(交互に実施、約10分)で行った。
  • 両条件ともセット1→2、2→3でボリューム負荷(重量×反復回数)が有意に低下したが、セットあたりのボリューム負荷は(ベンチプルのセット1を除き)従来型のほうが有意に少なく、セッション合計も従来型のほうが有意に少なかった。 著者らは、ペアセットのほうが時間あたりのボリューム負荷で効率がよいとしている。
  • 同試験は休息時間を短縮した条件と通常の休息の条件を比べたものではなく(どちらも約10分)、筋肥大も測定していない。 協働筋の疲弊が主働筋のパフォーマンスを制限するかを調べた研究も、部位の順番を比べた長期の研究も、本記事は収録していない。
判定

収録している Robbins ら(2010)は、拮抗する押す/引く種目を交互に行う組み方と従来の組み方で、急性のボリューム負荷を比べた試験であり、協働筋の疲弊も、長期の筋肥大も、プログラミング順序の優劣も扱っていない。この論点について本記事が言えるのは、同試験でペアセットのほうがセッション合計のボリューム負荷が有意に大きかった、というところまでである。

信頼度:賛否が分かれる
訂正履歴訂正1回・撤回した原文13件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。収録している4件はいずれも運動順序とパフォーマンスの急性の試験で、長期の筋肥大を扱ったものは1件も無い。 ①「Simãoら(2012)のRCTでは、種目の順番を変えてベンチプレスとトライセップスカールの順を逆にしたところ、先に行った種目の方が後の種目より最大挙上重量・総ボリュームが高かった。」——その論文を本記事は収録していない。収録しているのは Simão ら(2005)で、報告されているのは種目を配列の最後に行うと3セットの反復回数が有意に少なくなることである。②「ただし長期(数週間以上)での筋肥大差を測定した研究では、先に行った種目と後の種目の間で有意な筋肥大差を示したものは少ない。」③「1セッション内のパフォーマンスへの影響は明確だが、それが長期の筋肥大差に直結するかは別問題。」④「ただし長期の筋肥大差への影響は小さいという報告が多い。」⑤「弱点や優先部位を最初に持ってくることに一定の合理性はある。」——長期の筋肥大を扱った研究を1件も収録していないので、報告の多寡も判定できない。 ⑥「Nortonら(2011)のRCTでは、プレ疲労法(アイソレーション先行)は通常のコンパウンド先行と比較して筋肥大に有意差はなく、むしろコンパウンド種目での総ボリューム(重量×レップ数)が低下することが示された。」——同研究を本記事は収録していない。⑦「先にアイソレーション種目で疲弊させると、後のコンパウンド種目でより軽い重量しか扱えなくなり、総ボリュームが下がるデメリットがある。」⑧「特定の筋群への神経学的な「当て感」の改善効果が主眼であれば一定の意味があるが、総ボリューム観点からはデメリットが大きい。」——収録している Gentil ら(2007)はむしろ、プレ疲労法と優先法のあいだで総仕事量・総反復回数に有意差を検出していない。 ⑨「拮抗筋ではなく協働筋(シナジスト)の疲弊が主働筋のパフォーマンスを制限することは理論的に合理的。」⑩「ただし「胸→三頭」と「三頭→胸」を比較した長期RCTでの筋肥大差のデータはまだ限定的。」⑪「協働筋を先に疲弊させることは主働筋のパフォーマンスを制限しうるため、主働筋の先行は合理的。」⑫「長期の筋肥大差への影響は限定的だが、ボリュームを最大化する観点から標準的なプログラミング順序に従うことが無難。」——協働筋の疲弊を調べた研究も、部位の順番を比べた長期の研究も収録していないので、データが限定的かどうかも判定できない。 ⑬「一方、拮抗筋ペア(胸と背中、二頭筋と三頭筋)を交互に行うスーパーセットは、両方の筋肉へのボリュームを維持しながら休息時間を短縮できることがRobbins ら(2010)のRCTで示されている。」——同試験は休息時間を短縮した条件と通常の休息の条件を比べたものではなく(どちらも約10分)、筋肥大も測定していない。示されているのは、ペアセットのほうがセッション合計のボリューム負荷が有意に大きかったことである。
    撤回した原文13件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. Simãoら(2012)のRCTでは、種目の順番を変えてベンチプレスとトライセップスカールの順を逆にしたところ、先に行った種目の方が後の種目より最大挙上重量・総ボリュームが高かった。
    2. ただし長期(数週間以上)での筋肥大差を測定した研究では、先に行った種目と後の種目の間で有意な筋肥大差を示したものは少ない。
    3. 1セッション内のパフォーマンスへの影響は明確だが、それが長期の筋肥大差に直結するかは別問題。
    4. ただし長期の筋肥大差への影響は小さいという報告が多い。
    5. 弱点や優先部位を最初に持ってくることに一定の合理性はある。
    6. Nortonら(2011)のRCTでは、プレ疲労法(アイソレーション先行)は通常のコンパウンド先行と比較して筋肥大に有意差はなく、むしろコンパウンド種目での総ボリューム(重量×レップ数)が低下することが示された。
    7. 先にアイソレーション種目で疲弊させると、後のコンパウンド種目でより軽い重量しか扱えなくなり、総ボリュームが下がるデメリットがある。
    8. 特定の筋群への神経学的な「当て感」の改善効果が主眼であれば一定の意味があるが、総ボリューム観点からはデメリットが大きい。
    9. 拮抗筋ではなく協働筋(シナジスト)の疲弊が主働筋のパフォーマンスを制限することは理論的に合理的。
    10. ただし「胸→三頭」と「三頭→胸」を比較した長期RCTでの筋肥大差のデータはまだ限定的。
    11. 協働筋を先に疲弊させることは主働筋のパフォーマンスを制限しうるため、主働筋の先行は合理的。
    12. 長期の筋肥大差への影響は限定的だが、ボリュームを最大化する観点から標準的なプログラミング順序に従うことが無難。
    13. 一方、拮抗筋ペア(胸と背中、二頭筋と三頭筋)を交互に行うスーパーセットは、両方の筋肉へのボリュームを維持しながら休息時間を短縮できることがRobbins ら(2010)のRCTで示されている。

公開日: 更新日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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