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研究 vs 勘

「増量はとにかくたくさん食べるのが正解」は本当か? 通説 vs 研究

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「増量期はカロリーを気にせず食べまくるほど筋肥大できる」という考え方は、ジムで根強く語り継がれている。収録している Garthe ら(2013)が示すのは、摂取量を増やした群で脂肪量の増加が大きかった一方、除脂肪量の増加には群間差が無かったことまでで、脂肪と筋肉の増加量を直接比べたものではない。

Round1

大量カロリー摂取(ダーティバルク)は最大の筋肥大をもたらすか

言われていること

ジム・フィットネス系YouTube、ボディビルディングフォーラム

増量期は食べれば食べるほど筋肉になる。カロリーを余らせると筋肉が増えないから、1日に3,000〜5,000 kcalでも食べ続けるべきだ。

VS

研究が示すこと

  • 同レビューが述べているのは、アスリートにはRDAより高いタンパク質摂取を勧める合理性があること、ロイシンおよびおそらく他の分岐鎖アミノ酸が筋タンパク質合成の刺激において重要な位置を占めること、1日あたり1.3〜1.8 g/kgを3〜4回の等窒素食に分けて摂ることで筋タンパク質合成が最大化されること、そしてエネルギー制限期には赤字の大きさに応じて1.8〜2.0 g/kgが除脂肪量の損失を防ぐうえで有利になりうることまでである。
  • カロリーサープラスの量も、筋肉増加の速度も、同レビューは扱っていない。 収録している Garthe ら(2013)は増量期を扱った試験である。 エリートアスリート39名を、栄養指導を受ける群(21名)と自由摂取の群(18名)に無作為に割りつけ、8〜12週間の増量期を過ごさせた。
  • 全員が競技の練習に加えて週4回の筋力トレーニングを行っている。
  • エネルギー摂取量は指導群のほうが多く(3,585±601 対 2,964±884 kcal)、体重の増加も大きかった(3.9±0.6% 対 1.5±0.4%)。 脂肪量の増加も指導群のほうが大きかったが(15±4% 対 3±3%)、除脂肪量の増加には群間差が無かった。 1RMは両群とも6〜12%向上し、40m走とカウンタームーブメントジャンプは変化しなかった(指導群の40m走のみ有意に低下)。 著者らは、増量プロトコルにおける過剰なエネルギー摂取は望ましくない体脂肪の増加を招くため慎重に検討すべきだと述べている。
判定

収録している Garthe ら(2013)では、栄養指導で摂取量を増やした群のほうが体重も脂肪量も大きく増えた一方、除脂肪量の増加には群間差が無かった。

信頼度:中程度の根拠
Round2

体脂肪率が高い状態だと筋肥大効率が上がるか

言われていること

旧来のオフシーズン理論、ボディビル文化

体が大きくなるほど同化ホルモンが多く分泌され、ガリガリよりも太っているほうが筋肉はつきやすい。だからまず体重を増やしてから絞ればいい。

VS

研究が示すこと

  • インスリン感受性も炎症性サイトカインも同化ホルモン環境も、これを測った研究を本記事は収録していない。 同レビューが述べているのは、筋量の増加と体脂肪の減少が同時に起こることが body recomposition と呼ばれており、これは未訓練者や過体重・肥満の集団に限られるという見方があるものの、レジスタンストレーニング経験者でこの現象を示す文献が相当量あるということである。適応を左右する2つの主要因として漸進的なレジスタンストレーニングとエビデンスに基づく栄養戦略を挙げ、睡眠やホルモンといった非トレーニング・非栄養の変数と、体組成測定に由来する限界にも触れている。 体脂肪率が高い状態での同化ホルモン環境について、抄録は何も述べていない。
判定

体脂肪率と筋肥大のしやすさの関係を調べた研究を、本記事は収録していない。

信頼度:研究待ち
Round3

リーンバルク vs ダーティバルク:最終的な除脂肪体重はどちらが多く増えるか

言われていること

伝統的なオフ・オンシーズンサイクル論

ダーティバルクのほうが総カロリーが多い分、筋肉の絶対量も多く増える。最終的にカットすれば同じ量の筋肉が残るはずだ。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Garthe ら(2013)が扱ったのは増量期であり、栄養指導を受ける群と自由摂取の群を8〜12週間比べたものである。 緩徐減量と急速減量を比べたのは同じ著者らの別の試験であり、本記事はそれを収録していない。 増量と減量を繰り返す長期の戦略を比べた研究を、本記事は収録していない。
判定

増量と減量を繰り返す長期の戦略を比べた研究を、本記事は収録していない。リーンバルクとダーティバルクの優劣を示せない。

信頼度:研究待ち
訂正履歴訂正1回・撤回した原文14件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。 ①「しかし研究は、カロリー過剰が筋肉よりも体脂肪の増加につながりやすいことを示唆している」——収録している Garthe ら(2013)が示すのは、摂取量を増やした群で脂肪量の増加が大きかった一方、除脂肪量の増加には群間差が無かったことまでで、脂肪と筋肉の増加量を直接比べたものではない。 ②「筋タンパク合成速度には生物学的な上限があり、カロリーサープラスが一定量を超えると筋肥大の追加効果はほぼ頭打ちになる」③「Phillips & Van Loon (2011) のレビューでは、タンパク質摂取量と筋肉合成の関係にもプラトーが確認されており、過剰な総カロリーは主に体脂肪として蓄積されることが示されている」④「現実的な筋肉増加速度(中級者で月0.5〜1 kg程度)から逆算すると、1日200〜500 kcal程度のサープラスで十分とされることが多い」⑤「健康な中級者では、200〜500 kcal/日程度のサープラスで筋肥大の大部分が得られると考えられる」⑥「それを大幅に超えるカロリーは主に体脂肪増加につながりやすく、「食べるほど筋肉になる」は支持されない」——同レビューが述べているのはタンパク質の摂取量と分配についてで、カロリーサープラスの量も筋肉増加の速度も扱っていない。 ⑦「体脂肪率が高くなるとインスリン感受性が低下し、同化シグナル伝達が阻害される可能性が示されている」⑧「また、体脂肪の蓄積に伴い炎症性サイトカインが増加し、筋タンパク合成を抑制するという報告もある」⑨「Barakat et al. (2020) によるボディリコンポジションのレビューでは、体脂肪率が高い状態での同化ホルモン環境の悪化が言及されている」⑩「体脂肪率が高い状態は同化ホルモン環境の観点から筋肥大に有利とは言えない」⑪「初心者では体脂肪率にかかわらず筋肥大が起きやすいが、中・上級者では体脂肪率を適切な範囲(男性15〜20%程度)に保つほうが有利である可能性が高い」——⑨は帰属が誤りで、同レビューの抄録は体脂肪率と同化ホルモン環境について何も述べていない。インスリン感受性も炎症性サイトカインも、これを測った研究を収録していない。 ⑫「Garthe et al. (2013) がエリートアスリートを対象に実施した研究では、緩やかな減量と急速な減量を比較した場合、急速な減量では除脂肪体重の損失が大きくなることが示されている」——同試験が扱ったのは増量期である。 緩徐減量と急速減量を比べたのは同じ著者らの別の試験で、本記事はそれを収録していない。⑬「これを増量に応用すると、ダーティバルクで体脂肪を大量に蓄積した後の長期にわたる減量フェーズでは、筋肉量の維持が難しくなるリスクがある」⑭「長期的に見ると、リーンバルク(小〜中程度のサープラス)と適度な減量を繰り返すアプローチは、ダーティバルクと長期減量を繰り返すアプローチと比較して除脂肪体重の純増が同等か上回るとする見方が研究者の間で主流になりつつある」——増量と減量を繰り返す長期の戦略を比べた研究を収録していない。 あわせて、この記事は一時「Barakat ら(2020)は PubMed に抄録が無く確認できない」と書いていたが、これは誤りだった。同誌は PubMed に収載が無いだけで、出版社が登録した抄録をCrossref/OpenAlex から読める。いまはその内容を本文に載せている。これは撤回ではなく訂正なので `removed` には収めていない。
    撤回した原文14件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. しかし研究は、カロリー過剰が筋肉よりも体脂肪の増加につながりやすいことを示唆している。
    2. 筋タンパク合成速度には生物学的な上限があり、カロリーサープラスが一定量を超えると筋肥大の追加効果はほぼ頭打ちになる。
    3. Phillips & Van Loon (2011) のレビューでは、タンパク質摂取量と筋肉合成の関係にもプラトーが確認されており、過剰な総カロリーは主に体脂肪として蓄積されることが示されている。
    4. 現実的な筋肉増加速度(中級者で月0.5〜1 kg程度)から逆算すると、1日200〜500 kcal程度のサープラスで十分とされることが多い。
    5. 健康な中級者では、200〜500 kcal/日程度のサープラスで筋肥大の大部分が得られると考えられる。
    6. それを大幅に超えるカロリーは主に体脂肪増加につながりやすく、「食べるほど筋肉になる」は支持されない。
    7. 体脂肪率が高くなるとインスリン感受性が低下し、同化シグナル伝達が阻害される可能性が示されている。
    8. また、体脂肪の蓄積に伴い炎症性サイトカインが増加し、筋タンパク合成を抑制するという報告もある。
    9. Barakat et al. (2020) によるボディリコンポジションのレビューでは、体脂肪率が高い状態での同化ホルモン環境の悪化が言及されている。
    10. 体脂肪率が高い状態は同化ホルモン環境の観点から筋肥大に有利とは言えない。
    11. 初心者では体脂肪率にかかわらず筋肥大が起きやすいが、中・上級者では体脂肪率を適切な範囲(男性15〜20%程度)に保つほうが有利である可能性が高い。
    12. Garthe et al. (2013) がエリートアスリートを対象に実施した研究では、緩やかな減量と急速な減量を比較した場合、急速な減量では除脂肪体重の損失が大きくなることが示されている。
    13. これを増量に応用すると、ダーティバルクで体脂肪を大量に蓄積した後の長期にわたる減量フェーズでは、筋肉量の維持が難しくなるリスクがある。
    14. 長期的に見ると、リーンバルク(小〜中程度のサープラス)と適度な減量を繰り返すアプローチは、ダーティバルクと長期減量を繰り返すアプローチと比較して除脂肪体重の純増が同等か上回るとする見方が研究者の間で主流になりつつある。

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    レジスタンストレーニングにタンパク質補給を加えると、筋力・除脂肪量が増える。 健常成人の49件のRCT(計1,863名)のメタ分析で、6週間以上のトレーニングに補給を加えると1RM筋力が+2.49kg、除脂肪量が+0.30kg、筋線維横断面積が+310µm²増えた。総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日(95%CI 1.03〜2.20)と推定されている。ただし著者らはこの分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)を明記しており、確立した閾値ではない。(Morton 2018)

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吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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