本文へスキップ
BODYDATA
読みもの解説

グルコサミン・コンドロイチンは関節に効くのか? 大規模研究が示すリアルな答え

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

グルコサミンとコンドロイチンは、本当に関節の痛みや軟骨に効果があるの?

関節痛については、10試験3,803名を統合したネットワークメタ分析(Wandel 2010)が、グルコサミン・コンドロイチン・併用のいずれも事前に定めた「臨床的に意味のある最小の差(−0.9cm/10cmスケール)」に届かなかったと報告している。 グルコサミン単独の差 −0.4cm(95%信用区間 −0.7〜−0.1)は統計的には検出されているが、その大きさが基準に届かない。著者らは医療当局と保険者が費用を負担すべきでないと結論している。 GAIT試験(1,583名)では全体で有意差が出ず(併用 +6.5ポイント、P=0.09。対照のセレコキシブは +10.0ポイント、P=0.008)、ベースラインの痛みが中等度〜重度の層(354名)でのみ併用群が有意だった(79.2% 対 54.3%、P=0.002)。ただし著者らはこれを「探索的解析」と明記している。 関節裂隙については、収録した2件が同じ問いに答えていない。 3年間のRCT(Reginster 2001、212名)が示すのは各群内の変化(プラセボ群は有意に狭小化、硫酸グルコサミン群は有意な狭小化なし)で、Wandel ら(2010)が推定するのは治療群間の差(いずれもごく小さく信用区間はゼロを含む)である。介入も対象も違うため、どちらが正しいかを本記事は判定できない。矛盾していると書くこともしない。

1

グルコサミンとコンドロイチンとは

グルコサミンはアミノ糖の一種、コンドロイチンは多糖で、どちらも関節軟骨の構成成分と関連づけて説明される。 収録している3件が測ったのは、変形性関節症の患者における関節痛と関節裂隙の幅である。軟骨代謝や吸収率を測った試験は含まれていない。

2

疼痛への効果 ─ 「有意差なし」ではなく「臨床的に意味のある差に届かない」

Wandel ら(2010)は200名を超える大規模RCT10件・計3,803名を統合したネットワークメタ分析である。10cmの視覚アナログスケールでのプラセボとの疼痛差は、グルコサミン −0.4cm(95%信用区間 −0.7〜−0.1)、コンドロイチン −0.3cm(−0.7〜0.0)、併用 −0.5cm(−0.9〜0.0)だった。 この研究は「臨床的に意味のある最小の差」を事前に −0.9cm と定めており、どの推定値も95%信用区間がその境界を越えなかった。 著者らの結論は「プラセボと比べて関節痛を減らさず、関節裂隙の狭小化にも影響しない」「医療当局と保険者は費用を負担すべきでなく、未治療の患者への新規処方は控えるべき」である。 グルコサミン単独の信用区間(−0.7〜−0.1)はゼロを含んでおらず、統計的には差が検出されている。問題は差の大きさで、事前に定めた臨床的に意味のある水準に届かなかったという点である。 同論文が報告しているのは、業界から独立した試験のほうが企業資金の試験より効果が小さかったという交互作用(P=0.02)である。

−0.4cm / MCID −0.9cm
グルコサミンの疼痛差と、事前に定めた臨床的に意味のある差(Wandel 2010)
P=0.02
企業資金の試験のほうが効果が大きいという交互作用(Wandel 2010)
3

GAIT試験のサブグループ ─ 著者らは「探索的」と位置づけている

GAIT試験(Clegg 2006)は膝の変形性関節症の患者1,583名を、グルコサミン1,500mg/日・コンドロイチン硫酸1,200mg/日・両者の併用・セレコキシブ200mg/日・プラセボの5群に24週間割り付けた試験である。割り付けは膝の痛みの程度で層別され、軽度が1,229名、中等度〜重度が354名だった。主要評価項目は24週での痛みの20%以上の減少である。 全体では、プラセボの反応率60.1%に対し、グルコサミンは+3.9ポイント(P=0.30)、コンドロイチンは+5.3ポイント(P=0.17)、併用は+6.5ポイント(P=0.09)で、いずれも有意差に達していない。対照として置かれたセレコキシブは+10.0ポイント(P=0.008)で有意だった。 ベースラインの痛みが中等度〜重度の層(354名)では、併用群の反応率がプラセボより有意に高かった(79.2% 対 54.3%、P=0.002)。 ただし著者ら自身がこれを「探索的解析(exploratory analyses)」と明記している。 サブグループは層別の一方で、主要評価項目の検定ではない。 層別の基準は病態の重症度ではなく膝の痛みの程度であり、層は「軽度」と「中等度〜重度」の2つである。

79.2% 対 54.3%
中等度〜重度の痛みの層(354名)での併用群の反応率(P=0.002、探索的解析)
+6.5pt(P=0.09)
全体での併用群の反応率(プラセボ60.1%に対して)
4

関節裂隙 ─ 収録した2件は異なる問いに答えている

Reginster ら(2001)は膝の変形性関節症の患者212名に、硫酸グルコサミン1,500mg/日またはプラセボを3年間投与したRCTである。プラセボ群106名は関節裂隙が進行的に狭小化し、3年後の平均喪失は −0.31mm(95%CI −0.48〜−0.13)だった。グルコサミン群106名では有意な狭小化が見られなかった(−0.06mm、−0.22〜0.09)。WOMACスコアでは、プラセボ群で症状がわずかに悪化した一方、グルコサミン群では改善が観察されている。安全性と早期脱落の理由に群間差は無かった。 Wandel ら(2010)は、関節裂隙の変化を「いずれもごく小さく、95%信用区間はゼロを含む」と報告している。 コンドロイチンで関節裂隙を測った試験を、本記事は収録していない。 ただしこの2件は同じ問いに答えていない。 Reginster ら(2001)が示しているのは各群の中での3年間の変化(プラセボ群は有意に狭小化、グルコサミン群は有意な狭小化なし)であり、Wandel ら(2010)が推定しているのは治療群間の差である。「群内で有意でない」ことと「群間の差が小さい」ことは別の統計的主張で、直接は比較できない。 さらに、介入も対象も違う。 Reginster ら(2001)は硫酸グルコサミン1,500mg/日を3年間、212名に投与した単一試験である。Wandel ら(2010)は200名を超える試験10件を、製剤の種類をまたいで統合している。したがって、どちらが正しいかを本記事は判定できない。両者が矛盾していると書くこともしない。 関節裂隙という指標について、収録した2件から一つの結論は出せない。

−0.06mm(群内)
3年後のグルコサミン群の関節裂隙変化。プラセボ群は −0.31mm(212名。Reginster 2001)
ゼロを含む(群間)
治療群間の関節裂隙変化の95%信用区間(10試験3,803名。Wandel 2010)
5

用量と安全性

収録した試験が用いた用量は、グルコサミン1,500mg/日・コンドロイチン硫酸1,200mg/日(GAIT、24週間)と硫酸グルコサミン1,500mg/日(Reginster、3年間)である。 安全性については、GAIT が「有害事象は軽度で頻度は低く、群間で均等に分布していた」と報告し、Reginster ら(2001)も安全性と早期脱落の理由に群間差が無かったとしている。ただしどちらも24週間・3年間という期間での所見である。 以下は一般に言われている注意で、本記事は裏づける出典を示せない。 読者を守る情報なので削除せず残す。 ・甲殻類(えび・かに)由来のグルコサミンはアレルギーに注意が必要とされる(発酵由来の製品もある) ・ワーファリンを服用している場合、コンドロイチンが抗凝固作用に影響する可能性が指摘されている ・軽度の消化器症状(胃もたれ・軟便など)が報告されることがある 服薬中の方、妊娠・授乳中の方、関節の痛みが続いている方は、サプリで自己対処せず医師の診断を受けること。 なお、本記事の情報は教育・参考目的であり、医療上のアドバイスではありません。

訂正履歴訂正1回・撤回した原文11件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 第1節に書いていた「グルコサミンはアミノ糖の一種で、関節軟骨の主要成分であるプロテオグリカンやヒアルロン酸の生合成材料になります」「コンドロイチンはプロテオグリカンの側鎖を構成する多糖で、軟骨の弾力性・水分保持に関与します」「加齢とともに体内合成量が低下するため、補給によって軟骨代謝をサポートできるという仮説のもとサプリとして広く使われています」「サプリ由来のグルコサミンが軟骨まで届くかどうかは吸収率の観点から依然として議論があります」、第2節の「グルコサミン単独・コンドロイチン単独・両者の組み合わせのいずれにおいても、プラセボと比べた疼痛・機能改善に統計的有意差は確認されませんでした」「研究の著者らは、過去の陽性試験における小規模・方法論的問題によるバイアスの可能性を指摘しています」、第3節の「中等度のOAでは効果が見られなかった一方、重症のOA患者(ベースライン痛が強い群)においてグルコサミン+コンドロイチンの組み合わせ投与群で有意な疼痛軽減効果が報告されています」「サブグループ解析の限界はあるものの、症状が重い人ほど恩恵を受ける可能性が示されています」、第4節の「特にコンドロイチンについては、関節裂隙の狭小化(軟骨の減少を示す指標)を抑制したとする試験結果が複数の研究で報告されています」「これらの研究は規模・期間・手法の面で限界があり、確定的な結論は出ていません」「長期にわたって軟骨を守る目的で使用される場合の効果については、引き続き研究が必要な段階です」——をすべて撤回した。軟骨代謝も吸収率も、収録している3件は測っていない。Wandel ら(2010)ではグルコサミン単独の信用区間(−0.7〜−0.1)がゼロを含んでおらず、統計的には差が検出されている(問題は差の大きさで、事前に定めた −0.9cm に届かなかった)。同論文が報告しているのはバイアスの指摘ではなく、業界から独立した試験のほうが企業資金の試験より効果が小さかったという交互作用(P=0.02)である。GAIT試験の層別の基準は病態の重症度ではなく膝の痛みの程度で、層は「軽度」と「中等度〜重度」の2つである(中等度は後者に含まれる)。Reginster ら(2001)が投与したのはグルコサミンであってコンドロイチンではなく、コンドロイチンで関節裂隙を測った試験を本記事は収録していない。
    撤回した原文11件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. グルコサミンはアミノ糖の一種で、関節軟骨の主要成分であるプロテオグリカンやヒアルロン酸の生合成材料になります
    2. コンドロイチンはプロテオグリカンの側鎖を構成する多糖で、軟骨の弾力性・水分保持に関与します
    3. 加齢とともに体内合成量が低下するため、補給によって軟骨代謝をサポートできるという仮説のもとサプリとして広く使われています
    4. ただしサプリ由来のグルコサミンが軟骨まで届くかどうかは吸収率の観点から依然として議論があります
    5. グルコサミン単独・コンドロイチン単独・両者の組み合わせのいずれにおいても、プラセボと比べた疼痛・機能改善に統計的有意差は確認されませんでした
    6. 研究の著者らは、過去の陽性試験における小規模・方法論的問題によるバイアスの可能性を指摘しています
    7. GAITトライアルのサブグループ解析では、中等度のOAでは効果が見られなかった一方、重症のOA患者(ベースライン痛が強い群)においてグルコサミン+コンドロイチンの組み合わせ投与群で有意な疼痛軽減効果が報告されています
    8. サブグループ解析の限界はあるものの、症状が重い人ほど恩恵を受ける可能性が示されています
    9. 特にコンドロイチンについては、関節裂隙の狭小化(軟骨の減少を示す指標)を抑制したとする試験結果が複数の研究で報告されています
    10. ただしこれらの研究は規模・期間・手法の面で限界があり、確定的な結論は出ていません
    11. 長期にわたって軟骨を守る目的で使用される場合の効果については、引き続き研究が必要な段階です

関連するサプリ

PR
  • グルコサミン

    疼痛の差はプラセボと比べてわずかで、臨床的に意味のある差に届いていない。 10cmの視覚アナログ尺度で、グルコサミン −0.4cm(95%信用区間 −0.7〜−0.1)、コンドロイチン −0.3cm(−0.7〜0.0)、併用 −0.5cm(−0.9〜0.0)。いずれも事前に定めた最小の意味ある差(−0.9cm)を信用区間が越えていない(Wandel 2010)。

  • コンドロイチン

    疼痛の差はプラセボと比べてわずかで、臨床的に意味のある差に届いていない。 10cmの視覚アナログ尺度で、グルコサミン −0.4cm(95%信用区間 −0.7〜−0.1)、コンドロイチン −0.3cm(−0.7〜0.0)、併用 −0.5cm(−0.9〜0.0)。いずれも事前に定めた最小の意味ある差(−0.9cm)を信用区間が越えていない(Wandel 2010)。

以下のリンクはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。

公開日: 更新日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

プロフィールを見る
染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

Read Next

次に読む