
空腹時の有酸素は体脂肪を多く減らすのか
言われていること
ボディメイク系の定番テク、SNS
朝食前の空腹状態で有酸素をすると、糖がない分だけ体脂肪がエネルギーに使われる。だから同じ運動でも空腹の方が痩せる。
研究が示すこと
- 収録している Schoenfeld ら(2014)は、低カロリー食を守る若年女性20名を空腹群(10名)と摂食後群(10名)に無作為に割りつけ、週3回・1時間の定常有酸素運動を4週間行わせたRCTである。
- 両群ともベースラインから体重(P=0.0005)と脂肪量(P=0.02)が有意に減少したが、いずれの評価項目にも有意な群間差は検出されなかった。20名・4週間で検出されなかったことは、差が無いことの証明ではない。
収録している Schoenfeld ら(2014)では、低カロリー食のもとで4週間、空腹群と摂食後群のあいだにいずれの評価項目でも有意差が検出されなかった(若年女性20名)。やりやすさを比べた研究を、本記事は収録していない。
でも運動中の脂肪の燃焼は空腹の方が高いのでは?
言われていること
生理学的な直感、フィットネス記事
実際に空腹時の方が運動中の脂肪の使われ方(脂質酸化)は高いはず。それが積み重なれば結局痩せるだろう。
研究が示すこと
- 運動“中”の脂質酸化が空腹で高まるのは本当だ。
- Vieira ら(2016)のメタ分析(27試験・273名)でも、空腹時の有酸素は摂食時より運動中の脂肪の燃焼が有意に高いと報告されている(加重平均差 -3.08g)。
- ただしこのメタ分析が測っているのは運動中の基質利用と血中指標までで、体組成は扱っていない。
- 長期の体組成を比べたのは別の研究である。収録している Hackett & Hagstrom(2017)のメタ分析が報告しているのは、5件・96名で効果量が trivial から small にとどまり、研究数が限られデータが不十分であるため解釈には注意が要るということまでである。優位性が検出されていないことは、効果が無いことの証明ではない。
収録している Vieira ら(2016)は、運動中の脂質酸化が空腹時のほうが有意に高いと報告している(27件・273名、加重平均差 -3.08g)。収録している Hackett & Hagstrom(2017)が報告しているのは、5件・96名で効果量が trivial から small にとどまり、研究数が限られデータが不十分であるため解釈には注意が要るということまでである。優位性が検出されていないことと、効果が無いことは別である。
空腹時に運動すると筋肉が分解されるのか
言われていること
増量・筋肉維持を気にする層の懸念
空腹で運動すると糖が足りないから、筋肉が分解されてエネルギーに使われてしまう。だから空腹時有酸素は筋肉に悪い。
研究が示すこと
- 収録している Schoenfeld ら(2014)は除脂肪量を評価項目に含んでいるが、報告されているのは「いずれの評価項目にも有意な群間差が検出されなかった」ということまでである(若年女性20名・4週間)。検出されなかったことは、差が無いことの証明ではない。 筋分解を測った研究を、本記事は収録していない。
空腹時の有酸素運動と筋分解の関係を調べた研究を、本記事は収録していない。 運動前のタンパク質摂取や運動条件の調整を検討した研究も収録していない。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文16件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。収録している3件は、カロリー収支を操作した比較も、やりやすさも、筋分解も扱っていない。
①「食事量(カロリー)を揃えると、空腹でも摂食後でも体脂肪の減り方は変わらないという結果が出ている。」、②「Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名)では、低カロリー食のもとで4週間・週3回の有酸素を行い、空腹群と摂食群で体重・脂肪量の減少に有意差はなかった。」、③「減量を決めるのは運動のタイミングではなく総カロリー収支であることを示唆している。」、④「カロリーが同じなら、空腹時有酸素が体脂肪を多く減らすとは言えない。」——同RCTはカロリー収支を操作した比較を行っていない(両群とも同じ低カロリー食である)。また「有意差はなかった」ではなく有意差が検出されなかったが正確で、20名・4週間で検出されなかったことは差が無いことの証明ではない。⑤「空腹でやりやすい人はやればよいし、朝食後の方が動けるならそれでよい。」——やりやすさを比べた研究を収録していない。⑥「“空腹だから痩せる”という上乗せ効果は期待しない方がいい。」——有意差が検出されなかったことは、上乗せ効果が無いことの証明ではない。20名・4週間の1件からこの助言は導けない。
⑦「つまり「運動中はよく燃える」と「長期で体脂肪が多く減る」は別々の研究が答えている問いであり、前者は成り立つが後者は支持されていない。」、⑧「ただしそれは“その場の代謝”の話で、長期の体脂肪の減りには反映されない。」、⑨「急性の脂質酸化と、実際に痩せるかは別問題として切り分けるべき。」——Hackett & Hagstrom(2017)が報告しているのは、5件・96名で効果量が trivial から small にとどまり、研究数が限られデータが不十分であるため解釈には注意が要るということまでである。優位性が検出されていないことと、効果が無いことは別である。
⑩「この点を空腹時有酸素に絞って長期に検証した質の高いデータは乏しい。」、⑪「Schoenfeld ら(2014)の4週間RCTでは、空腹群と摂食群で除脂肪量の変化に大きな差は報告されていないが、期間が短く対象も限られる。」、⑫「中〜高強度・長時間で完全な空腹という極端な条件では筋分解が進みうるという理屈はあるものの、一般的な低〜中強度の有酸素で顕著な筋肉の損失が起きるという明確な証拠は現時点で乏しい。」、⑬「「空腹時有酸素で筋肉が大きく減る」を裏づける強い証拠は乏しい。」、⑭「心配なら運動前にタンパク質を少し摂る、極端な長時間・高強度を空腹で行わない、といった対処で十分。」、⑮「過度に恐れる必要はないが、断定できるほどのデータも揃っていない。」——筋分解を測った研究も、これらの対処を検討した研究も収録していない。⑩⑮のように「データが乏しい」と研究の量を評価するには、その領域の研究を見渡している必要があるが、本記事はそれを収録していない。
あわせて⑯「Hackett & Hagstrom(2017)のメタ分析(5研究96名)では、空腹時運動が体組成に与える効果量は“ごくわずか〜小”で、優れるという明確な証拠は得られなかった。」も撤回した。「明確な証拠は得られなかった」という書き方が、⑦⑧⑨で撤回した「長期では支持されていない」という評価を実質的に言い換えたものになっていたためである。同メタ分析が述べているのは、研究数が限られデータが不十分であるため解釈には注意が要るということまでである。
撤回した原文16件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
食事量(カロリー)を揃えると、空腹でも摂食後でも体脂肪の減り方は変わらないという結果が出ている。
Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名)では、低カロリー食のもとで4週間・週3回の有酸素を行い、空腹群と摂食群で体重・脂肪量の減少に有意差はなかった。
減量を決めるのは運動のタイミングではなく総カロリー収支であることを示唆している。
カロリーが同じなら、空腹時有酸素が体脂肪を多く減らすとは言えない。
空腹でやりやすい人はやればよいし、朝食後の方が動けるならそれでよい。
“空腹だから痩せる”という上乗せ効果は期待しない方がいい。
つまり「運動中はよく燃える」と「長期で体脂肪が多く減る」は別々の研究が答えている問いであり、前者は成り立つが後者は支持されていない。
ただしそれは“その場の代謝”の話で、長期の体脂肪の減りには反映されない。
急性の脂質酸化と、実際に痩せるかは別問題として切り分けるべき。
この点を空腹時有酸素に絞って長期に検証した質の高いデータは乏しい。
Schoenfeld ら(2014)の4週間RCTでは、空腹群と摂食群で除脂肪量の変化に大きな差は報告されていないが、期間が短く対象も限られる。
中〜高強度・長時間で完全な空腹という極端な条件では筋分解が進みうるという理屈はあるものの、一般的な低〜中強度の有酸素で顕著な筋肉の損失が起きるという明確な証拠は現時点で乏しい。
「空腹時有酸素で筋肉が大きく減る」を裏づける強い証拠は乏しい。
心配なら運動前にタンパク質を少し摂る、極端な長時間・高強度を空腹で行わない、といった対処で十分。
過度に恐れる必要はないが、断定できるほどのデータも揃っていない。
Hackett & Hagstrom(2017)のメタ分析(5研究96名)では、空腹時運動が体組成に与える効果量は“ごくわずか〜小”で、優れるという明確な証拠は得られなかった。
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関連する研究
出典
- Schoenfeld BJ, Aragon AA, Wilborn CD, Krieger JW, Sonmez GT (2014) J Int Soc Sports Nutr — Body composition changes associated with fasted versus non-fasted aerobic exercise
- Hackett D, Hagstrom AD (2017) J Funct Morphol Kinesiol — Effect of Overnight Fasted Exercise on Weight Loss and Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis
- Vieira AF, Costa RR, Macedo RCO, Coconcelli L, Kruel LFM (2016) Br J Nutr — Effects of aerobic exercise performed in fasted v. fed state on fat and carbohydrate metabolism in adults: a systematic review and meta-analysis
公開日: / 更新日:


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