
定期的なディロードは筋力向上に必要だ
言われていること
多くのトレーニングプログラム、パワーリフティングコーチ
4〜6週おきに1週間軽くしないとオーバートレーニングになり、記録が伸びない。ディロードはプロも一般人も必須。
研究が示すこと
- 収録している Meeusen ら(2013)の合意文書が述べているのは次のことである。 アスリートは、重い心理的症状やその他の持続的な悪影響を伴わずに短期のパフォーマンス低下を経験することがあり、この「機能的オーバーリーチング」は回復後に最終的にパフォーマンスの向上につながる。 トレーニングと回復の均衡が十分に保たれない場合には「非機能的オーバーリーチング(NFOR)」が起こりうる。 NFOR とオーバートレーニング症候群(OTS)の区別は非常に難しく、臨床経過と除外診断に依存する。 OTS の症状が NFOR より重いと一般には考えられているが、著者らはこれを裏づける科学的証拠も反証する証拠も無いと明記している。 現在いくつかのマーカー(ホルモン・パフォーマンステスト・心理検査・生化学および免疫マーカー)が使われているが、一般に受け入れられる基準をすべて満たすものは無い。 「4〜6週ごとに1週間という頻度・期間の最適性」も、同文書は扱っていない。
収録している合意文書が述べているのは、機能的オーバーリーチングが回復後にパフォーマンスの向上につながること、そして NFOR と OTS を区別する一般に受け入れられたマーカーが無いことまでである。ディロードの頻度・期間の目安を示せる出典を、本記事は収録していない。
完全休養とアクティブディロード(軽い重量でのトレーニング)はどちらを選ぶべきか
言われていること
「1週間完全オフ」を推奨するコーチ・トレーナー
ディロード週は完全に休む方がいい。疲れた身体には何もしない方が回復が早い。
研究が示すこと
- McMahon ら(2019) は、若年の健常者を8週間のレジスタンストレーニング群(16名)と対照群(14名)に分け、介入前・8週後・休止2週後・休止4週後に外側広筋の筋断面積・構造・筋力を測った。
- トレーニング群の筋断面積は、8週後・休止2週後・休止4週後のいずれでもベースラインおよび対照群より有意に大きかったが、休止2週後と4週後では8週時点から有意に減少した。 Deschenes ら(2002) は、14日間の片脚アンローディング前後で筋機能・筋生検・筋電図を比べ、膝伸筋群・屈筋群のピークトルクと総仕事量が有意に低下し、筋電図活動も低下したが、神経筋効率(総トルク/筋電図)は変化しなかったと報告している。
- 14日間の介入では筋のサイズも線維型の分布も変化しなかった。 著者らは、2週間のアンローディング後の筋機能の低下は主に神経要因によるものだと結論している。
- アクティブディロードを検討した研究も、完全休養と比べた研究も、本記事は収録していない。
収録した2件が示すのは次の2点である。8週間のトレーニング後に2週間休むと、筋横断面積はトレーニング直後のピークから有意に減少するが、ベースラインは依然上回っている(McMahon ら 2019)。 2週間の下肢アンローディングによる筋力低下は、筋の大きさや線維型の変化ではなく主に神経要因で説明される(Deschenes ら 2002)。 アクティブディロードと完全休養を比べた研究を、本記事は収録していない。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文11件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1ラウンドに書いていた「オーバーリーチング・オーバートレーニングレビュー(本データベース収録)は、蓄積した疲労が『潜在的な筋力(true strength)』を隠すことを示している(疲労により発揮筋力が実際の能力より低く出る)」「疲労を除去することで『スーパーコンペンセーション(超回復)』が起き、一時的に能力がベースラインを超える現象は確認されている」「ただし『4〜6週ごとに1週間』という特定の頻度・期間が最適という強固なRCTエビデンスは限られる」「必要性は個人のトレーニングボリューム・強度・回復力によって大きく異なる」、その結論の「疲労除去によるパフォーマンス回復は実在する」「『全員に定期ディロードが必要』というより、『オーバーリーチングのサイン(疲労感・パフォーマンス低下・睡眠の質低下)が出たタイミングで計画する』という個別対応の方が現実的」、第2ラウンドの「短期の休止で『積み上げが消える』わけではない。落ちるのはピークからの上積み分と考えるのが妥当」「アクティブディロードは、動作を続けることで神経の動員を保ったまま疲労を抜ける狙いの方法」、およびその結論の「ディロード中は完全に休むより、ボリュームを下げながらある程度の強度を維持するアクティブディロードの方が筋力・筋肉量の維持に優れる」「具体的には『通常セット数の半分、重量は同程度かやや軽め』が実用的な基準」「疲労が理由ならどちらでもよく、怪我や強い消耗があるなら完全休養でよい」——をすべて撤回した。収録している Meeusen ら(2013)の合意文書は、疲労が潜在的な筋力を隠すことも、超回復も報告しておらず、ディロードの頻度・期間も、オーバーリーチングのサインの一覧も扱っていない。McMahon ら(2019)と Deschenes ら(2002)が示すのは、それぞれ2週間の休止で筋横断面積がピークから有意に減少すること(ベースラインは上回る)と、2週間のアンローディングによる筋力低下が主に神経要因で説明されることまでで、アクティブディロードを検討した研究も、完全休養と比べた研究も、本記事は収録していない。撤回にあわせて、関連研究から Kovacevic ら(2018、睡眠)と「Resistance training adaptation timeline review」を外した。撤回した「オーバーリーチングのサイン(睡眠の質低下)」「超回復」「頻度・期間の目安」に紐づいていたもので、本文はどちらも引いていない。
撤回した原文11件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
オーバーリーチング・オーバートレーニングレビュー(本データベース収録)は、蓄積した疲労が「潜在的な筋力(true strength)」を隠すことを示している(疲労により発揮筋力が実際の能力より低く出る)
疲労を除去することで「スーパーコンペンセーション(超回復)」が起き、一時的に能力がベースラインを超える現象は確認されている
ただし「4〜6週ごとに1週間」という特定の頻度・期間が最適という強固なRCTエビデンスは限られる
必要性は個人のトレーニングボリューム・強度・回復力によって大きく異なる
疲労除去によるパフォーマンス回復は実在する
「全員に定期ディロードが必要」というより、「オーバーリーチングのサイン(疲労感・パフォーマンス低下・睡眠の質低下)が出たタイミングで計画する」という個別対応の方が現実的
短期の休止で「積み上げが消える」わけではない。落ちるのはピークからの上積み分と考えるのが妥当
アクティブディロードは、動作を続けることで神経の動員を保ったまま疲労を抜ける狙いの方法
ディロード中は完全に休むより、ボリュームを下げながらある程度の強度を維持するアクティブディロードの方が筋力・筋肉量の維持に優れる
具体的には「通常セット数の半分、重量は同程度かやや軽め」が実用的な基準
疲労が理由ならどちらでもよく、怪我や強い消耗があるなら完全休養でよい
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関連する研究
出典
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次に読む
- 解説
オーバーリーチングとオーバートレーニングは区別できるのか——研究が答えを出していないこと
収録している2件が述べているのは次のところまでである。過負荷と回復のバランスが保たれていれば、一時的なパフォーマンス低下(機能的オーバーリーチング)は回復後の向上につながる。バランスを欠くと非機能的オーバーリーチング(NFOR)が起こりうるが、NFORとオーバートレーニング症候群(OTS)は同じ臨床的・ホルモン的な徴候を示すことが多く、区別は臨床経過と除外診断に依存する。 さらに Halson & Jeukendrup(2004)は、オーバーリーチングがオーバートレーニングに先行することも、OTSの症状のほうが重いことも、逸話的な情報以外に裏づけは無いと明記している。
吉崎 槙吾
- 解説
オーバートレーニング症候群について、収録した出典が言える範囲
収録した2件が述べているのは次のことである。Meeusen ら(2013)の合意文書は、アスリートが重い心理的症状などを伴わずに短期のパフォーマンス低下を経験することがあり、この機能的オーバーリーチングは回復後に最終的にパフォーマンスの向上につながるとしている。 トレーニングと回復の均衡が保たれない場合には非機能的オーバーリーチング(NFOR)が起こりうるが、NFOR と OTS の区別は非常に難しく、臨床経過と除外診断に依存する。 OTS の症状が NFOR より重いと一般には考えられているが、著者らはこれを裏づける科学的証拠も反証する証拠も無いと明記している。 現在いくつかのマーカーが使われているが、一般に受け入れられる基準をすべて満たすものは無い。 Kreher & Schwartz(2012)のレビューは、OTS が十分な休息を伴わない過剰な運動への不適応反応であり、神経系・内分泌系・免疫系という複数の身体システムの乱れと気分の変化を伴うものとして現れるとしている。 同レビューは、OTS が欧州スポーツ科学会の見解に沿った恣意的な定義による臨床診断のままであり、過去の研究の大半が OTS ではなくオーバーリーチングのアスリートを対象としてきたため、まだ多くが未解明だと結論している。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「ケトジェニックは筋トレに向かない」は本当か? 筋力・瞬発力への影響を研究で検証
「ケトジェニックは筋トレに向かない」「低糖質だと瞬発力が出ない」という言説はジムでよく耳にする。スプリントや高強度インターバルをケトジェニック食と対照食で直接比べた試験を、本記事は収録していない。 収録している研究がどこまで答えているかを整理する。
吉崎 槙吾

