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研究 vs 勘

運動前の静的ストレッチはやってはいけない? 通説 vs 研究

公開日:

執筆: 吉村 浩嗣監修: 染田 智信

「運動前に静的ストレッチをすると力が落ちるからダメ」「いや、ケガ予防のために伸ばすべき」——ウォームアップのストレッチをめぐる意見は割れている。静的ストレッチ(反動をつけずじっくり伸ばす)は本当に運動前に避けるべきなのか。傷害予防・筋力・柔軟性の3つの角度から研究を見ていく。この論点は、通説が“部分的に正しい”ラウンドを含む。

Round1

ケガ予防のために運動前のストレッチは必要か

言われていること

学校体育・一般的な運動指導

運動前にしっかりストレッチをしておけば、筋肉や関節を痛めにくくなる。ケガ予防の基本だ。

VS

研究が示すこと

  • 傷害予防の手段としてストレッチ単独の効果は確認されていない。
  • Lauersen ら(2014)の大規模メタ分析(25 RCT・約2万6千人)では、ストレッチのリスク比は0.963で予防効果は有意でなかった。
  • 一方、筋力トレーニングはリスク比0.315と傷害を大きく減らした。
  • つまり“ケガを防ぎたいなら伸ばすより鍛える”方が効果的というのが現在の知見だ。
判定

「ケガ予防のためのストレッチ」は、少なくとも傷害を減らす手段としては支持されない。予防を重視するなら、筋力トレーニングやウォームアップ(軽い運動で体を温める)の方が有効。ストレッチが無意味という意味ではないが、目的を取り違えないことが大事。

信頼度:強い根拠あり
Round2

運動前の静的ストレッチは筋力・パワーを落とすのか

言われていること

フィットネス系YouTube・SNS

運動前に静的ストレッチをすると、筋肉が“伸びきって”力が出なくなる。だから筋トレやスポーツの前は絶対にやめた方がいい。

VS

研究が示すこと

  • この通説は“部分的に正しい”。
  • Simic ら(2013)のメタ分析(104研究)では、運動前の静的ストレッチが最大筋力を平均-5.4%、パワーを-1.9%低下させると報告されている。
  • ただし低下は伸ばす時間に依存する。
  • Kay & Blazevich(2012)のレビュー(106研究)では、30秒未満(-1.1%)や30〜45秒(-1.9%)では有意な低下はなく、筋力低下は主に60秒以上の長い保持で起きる。
  • 一般的なウォームアップの短時間ストレッチなら、パフォーマンスへの実害はほぼない。
判定

「長く強く伸ばすと直後の筋力・パワーが落ちる」は本当。だが“全面禁止”は言い過ぎで、30秒程度までの短い静的ストレッチなら問題ない。1部位を1分以上じっくり伸ばすのは、高重量やパワー系の直前だけは避けるのが無難。

信頼度:強い根拠あり
Round3

柔軟性を高めるにはやはりストレッチが必要か

言われていること

一般的な柔軟性の常識

体を柔らかくしたいなら結局ストレッチしかない。筋トレでは柔軟性は上がらない。

VS

研究が示すこと

  • フルレンジ(大きな可動域)で行う筋力トレーニングでも、ストレッチと同等に柔軟性が上がることが示されている。
  • Afonso ら(2021)のメタ分析(11 RCT・452名)では、可動域の改善に筋力トレとストレッチの間で統計的な差はなかった(ES -0.22, p=0.206)。
  • つまり“柔らかくするにはストレッチが必須”とは限らず、深くしゃがむ・大きく動かす筋トレでも可動域は改善しうる。
判定

柔軟性はストレッチの専売特許ではなく、フルレンジの筋トレでも同等に高まりうる。ストレッチが好き・気持ちいいなら続ければよいが、「筋トレは体を硬くする」は誤解。ただしメタ分析の規模は大きくない点は割り引いて読みたい。

信頼度:賛否が分かれる

公開日:

吉村 浩嗣

執筆

吉村 浩嗣

BODYDATA運営者 / INVOLVE代表

「なんとなく良さそう」で選ばない。データで確かめてから体で試す、を続けています。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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