
慢性的な生活・仕事ストレスは筋肥大を阻害するか
言われていること
「結果を出すには言い訳するな」系フィットネス文化
精神的なストレスはトレーニングに関係ない。食事とトレーニングをしっかりすれば、仕事がどれだけ忙しくても筋肉はつく。メンタルは関係ない。
研究が示すこと
- コルチゾールが糖新生とタンパク質異化に関わる異化ホルモンであることは生理学の教科書的な事実である。
- ただし、本サイトが収録している Kraemer & Ratamess(2005)のレビューは、レジスタンス運動へのホルモン応答全般を扱ったもので、抄録でコルチゾールに触れているのは「高ボリューム・短いインターバルのプロトコルで急性上昇する異化ホルモン」という文脈だけである。
- テストステロン/コルチゾール比や、慢性的な高コルチゾールが筋タンパク合成を抑制するという記述は抄録に無い。 同様に Dattilo ら(2011)も、睡眠負債が分解優位の環境をつくるという仮説を提示した論文であって、検証結果ではない。
- 慢性ストレスが筋肥大を妨げるという見立て自体は生物学的に妥当だが、その効果量を示せる出典を本サイトはまだ持っていない。
慢性的なストレスが筋肥大に不利に働くという方向は妥当だが、「どれくらい不利か」を示せる出典を本サイトはまだ持っていない。睡眠・ストレス管理を整える実務的な理由は十分にあるので、そちらを根拠にするのが正直だろう。
筋トレ中のコルチゾール急性上昇は筋肥大に悪いか
言われていること
「1時間以上の筋トレは逆効果」系の情報
筋トレするとコルチゾールが上がる。だからトレーニング中にもコルチゾールによる筋肉分解が起きており、長時間の筋トレは逆効果になる。
研究が示すこと
- 筋トレ中のコルチゾール急性上昇は生理的に正常な反応で、グリコーゲン動員・遊離脂肪酸の利用を助ける適応的な役割を持つ。
- 適切な回復をとればコルチゾールは速やかにベースラインに戻り、同化ホルモン(テストステロン・成長ホルモン)との均衡が維持される。
- 「60〜90分以上のトレーニングで逆効果になる」という主張を直接支持するエビデンスは限られており、セッション時間より総ボリューム・回復の質が重要。
トレーニング中の急性コルチゾール上昇は適応的反応で問題なし。問題は慢性的な高値。セッション時間より回復の質を優先すべき。
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出典
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次に読む
- 解説
心理的ストレスがトレーニング回復を妨げる:仕事・人間関係のストレスが筋肉に与える影響
収録している出典が扱っているのは、心理的ストレスとホルモン・回復の関係ではない。 Stults-Kolehmainen & Sinha(2014)は、心理的ストレスが身体活動量に与える影響を168件から検討したレビューで、前向き研究55件のうち76.4%が、心理的ストレスがその後の身体活動の低下や座位行動の増加を予測すると報告している。 Gordon ら(2018)は、レジスタンストレーニングがうつ症状を減らすかを調べた33件のRCT(1,877名)のメタ分析で、平均効果量0.66(95%CI 0.48〜0.83、P<0.001)だった。 心理的ストレスがホルモン・回復・筋肥大に与える影響を調べた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「ストレスで腹に脂肪がつく」は本当か? コルチゾールと体脂肪 通説 vs 研究
「ストレスが溜まると腹回りに脂肪がつく」「コルチゾールを下げないと痩せない」——こうした主張はダイエット界で広く語られる。ストレスホルモンと体脂肪の関係を研究から解析する。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「脚トレをやらないと全身デカくならない」は本当か? 通説 vs 研究
「脚トレを飛ばすと上半身も大きくならない」「スクワットやデッドで出る成長ホルモンやテストステロンが全身を育てる」「脚は身体の土台だからフレームが作られない」——“脚トレ信仰”はジムで根強い。だが、脚を鍛えることが本当に上半身の成長のカギなのか。ホルモンと筋量の研究から、この信仰のどこが正しくてどこが誤りかを切り分ける。
吉村 浩嗣
