
カロリーが同じなら、食品の種類(クリーン vs 加工)は体重に影響しないか
言われていること
IIFYM(柔軟な食事管理)推奨派・ダイエット理論派
カロリーさえ管理すれば何を食べても体重は同じ。クリーンイーティングは気分の問題で、科学的根拠はない。
研究が示すこと
- Hall ら(2019)のNIH代謝病棟RCTは、体重が安定している成人20名(平均31.2±1.6歳、BMI 27±1.5)を、超加工食品の食事と非加工食品の食事に2週間ずつ無作為な順で割り付けたクロスオーバー試験である。
- 食事は提示カロリー・エネルギー密度・多量栄養素・糖・ナトリウム・食物繊維を揃えて設計し、被験者は好きなだけ食べてよいと指示された。 超加工食品の期間はエネルギー摂取が508±106 kcal/日多く(p=0.0001)、糖質(280±54 kcal/日)と脂質(230±53 kcal/日)で増えた一方、タンパク質では差が無かった(−2±12 kcal/日、p=0.85)。
- 体重の変化は摂取量と強く相関し(r=0.8)、超加工食品の期間に0.9±0.3kg増え、非加工食品の期間に0.9±0.3kg減った。
- 同試験が実際に測っているものは、摂取量と体重だけではない(以下は抄録ではなく全文 PMC7946062 の記載)。
- 食事のペースは超加工食品の期間のほうが有意に速く(17±1 kcal/分、7.4±0.9 g/分、いずれも p<0.0001)、食欲抑制ホルモンのPYYは非加工食品の期間に上昇し、空腹ホルモンのグレリンはベースラインより低下した。 一方、食事の快さ・なじみ・空腹感・満腹感・食べられる量といった主観的な食欲の指標には有意差が無かった。 24時間のエネルギー消費も呼吸チャンバーで測定されている。
- ただし、これらのどれが摂取量の差を生んだのかを検証した解析は、同試験に含まれていない。消化速度と腸内細菌叢については、そもそも同試験が測定していない。
カロリーを意図的に制限しない条件では、食事の加工度が自発的なエネルギー摂取量に影響した——これが収録しているRCT(20名・各2週間)の結果である。「何を食べるか」がカロリーに無関係ではない、という言い方はこの範囲で成り立つ。 ただし対象は代謝病棟に入院した成人20名で、期間は各2週間である。 どの要因が摂取量の差を生んだのかを検証した解析は、同試験に含まれていないため判定できない。
カロリー計算なしに「クリーンに食べる」だけで減量は達成できるか
言われていること
ホールフード食推奨コーチ・自然食品ダイエット指導者
自然食品だけを食べれば自然と食べ過ぎなくなる。カロリーを計算しなくても体が正しい量を食べるよう調整される。
研究が示すこと
- 本記事が収録しているもう1件、Sacks ら(2009)は、過体重の成人811名を脂質・タンパク質・糖質の比率が異なる4つの食事に無作為に割り付け、2年間追跡した試験である。
- 2年後の減量幅は、タンパク質15%と25%(3.0kgと3.6kg)、脂質20%と40%(どちらも3.3kg)、糖質65%と35%(2.9kgと3.4kg)のいずれの比較でも同程度だった(すべて P>0.20)。 満腹感・空腹感・食事への満足度・集団セッションへの出席率も食事間で同程度で、出席率は減量と強く関連していた(出席1回あたり0.2kg)。 著者らの結論は、カロリーを減らした食事は、どの多量栄養素を強調しても臨床的に意味のある減量をもたらすである。
- この試験は多量栄養素の比率を比べたものであって、加工度やカロリー計算の要否を比べたものではない。加工度を割り付けたうえでカロリー計算の有無を比べた試験を、本記事は収録していない。
カロリー計算なしに「クリーンに食べる」だけで減量できるかどうかを、本記事が収録している2件からは判定できない。 言えるのは、(1) 自由摂取の条件では加工度によって摂取量が違ったこと(Hall 2019)、(2) カロリーを減らした食事なら多量栄養素の比率にかかわらず減量が生じたこと(Sacks 2009)の2つである。決着させるには、加工度を割り付けたうえでカロリー計算の有無を比べる試験が要る。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文5件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1ラウンドに書いていた「食品の種類は食欲・食事速度・消化速度を通じてカロリー摂取量自体に影響する」という因果の順序、および第2ラウンドの「非加工食品は満腹感が高い・食事速度が遅くなる・食物繊維・タンパク質が多いなどの特性から自然にカロリー摂取を抑える効果があることは研究で支持されている」「ナッツ・アボカド・全粒粉パン等の自然食品でもカロリー過多は起こりうる」「低加工食中心の食事はカロリー計算の負担を軽減できるが、完全な代替にはならない」「体重を精度高く管理したい場合はカロリー把握が必要」——を撤回した。収録している Hall ら(2019)は食事のペース・PYY・グレリンを実測しているが、それらが摂取量の差を生んだことを検証した解析は含まれていない。消化速度は測定していない。Sacks ら(2009)は多量栄養素の比率を比べた試験で、加工度もカロリー計算の要否も扱っていない。なお「約500kcal/日」と丸めていた数値は、報告値どおり508±106 kcal/日に改めた(値の訂正なので removed には入れていない)。
撤回した原文5件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
食品の種類は食欲・食事速度・消化速度を通じてカロリー摂取量自体に影響する
非加工食品は満腹感が高い・食事速度が遅くなる・食物繊維・タンパク質が多いなどの特性から自然にカロリー摂取を抑える効果があることは研究で支持されている
ナッツ・アボカド・全粒粉パン等の自然食品でもカロリー過多は起こりうる
低加工食中心の食事はカロリー計算の負担を軽減できるが、完全な代替にはならない
体重を精度高く管理したい場合はカロリー把握が必要
関連する研究
出典
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次に読む
- 研究 vs 勘
「何を食べるかより量が問題」は本当か? 食事の質 vs 量 通説 vs 研究
「カロリーさえ守れば何を食べても痩せる(IIFYM)」という考え方と「超加工食品を食べ続けると体が狂う」という考え方——どちらが研究に近いのか。「量」と「質」の優先順位を研究から整理する。
吉崎 槙吾
- 解説
ケトジェニックの長期的な影響について、収録した出典が言える範囲
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吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
ケトジェニック vs カーボサイクリング:直接比べた研究はあるのか
「ケトジェニックか、カーボサイクリング(糖質周期化)か」は減量や体型管理で頻出する選択肢だ。ただし両者を直接比べた試験を本サイトは収録していない。 収録している研究が何を測ったのかを整理し、どこまで言えるかを示す。
吉崎 槙吾