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研究 vs 勘

「テストステロンが高いほど筋肉は増える」は本当か? ホルモンと筋肥大の関係

公開日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「男性ホルモン(テストステロン)が多いほど筋肥大しやすい」——この通説はボディビル文化で長年信じられてきた。トレーニング直後の急性テストステロン上昇が筋肥大を促進すると考えられてきたが、2010年代以降のRCTがこの前提を覆した。テストステロンと筋肥大の関係は思われているよりずっと複雑だ。

Round1

トレーニング後の急性テストステロン上昇は筋肥大を促進するか

言われていること

ボディビル系トレーニング文化・ブログ記事

スクワットやデッドリフトなど大筋群の複合種目で急性テストステロンが上昇し、その後の筋肥大を促進する。だから脚トレやコンパウンド種目を先にやることが重要だ。

VS

研究が示すこと

  • Westersら(2010, 2012)の重要なRCTでは、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった。
  • この研究は「急性ホルモン上昇は筋肥大の直接因子ではない可能性」を強く示唆している。
判定

トレーニング後の急性テストステロン上昇は筋肥大の直接因子ではない可能性が高い。「脚トレ→上半身トレ」の順にこだわる理由としてのホルモン説は支持されない。

信頼度:中程度の根拠
Round2

安静時テストステロン値が高い人は筋肥大しやすいか

言われていること

ホルモン最適化系コンテンツ・テストステロンブースター広告

テストステロン値が高い人は筋肥大しやすい。だからステロイドが効く理由も、男性が女性より筋肉がつきやすい理由も、テストステロンの差で説明できる。

VS

研究が示すこと

  • 生理的な(正常範囲内の)テストステロン差と筋肥大の関係は弱い。
  • Robertsら(2020)のコホート研究では、トレーニング前のテストステロン値は筋肥大の大きさを予測しなかった。
  • 一方、薬理学的量(正常値を大幅に超えるステロイド使用)では明確な筋肥大促進効果がある。
  • 生理的な変動範囲内では、テストステロン単独で筋肥大の個人差を説明するのは難しい。
判定

正常範囲内のテストステロン値の差は筋肥大の予測因子として弱い。薬理学的量での効果は別問題。テストステロンが「高い方が有利」という単純な解釈は過大評価。

信頼度:中程度の根拠
Round3

「テストステロンを自然に上げる」ことで筋肥大は促進されるか

言われていること

健康系ウェブメディア・サプリメーカー広告

睡眠を十分取ったり、亜鉛やビタミンDを補給したりしてテストステロンを自然に上げれば筋肥大が加速する。テストステロンブースターサプリも一定の効果がある。

VS

研究が示すこと

  • 睡眠不足・亜鉛欠乏・ビタミンD欠乏などの「欠乏状態」を改善することでテストステロンが正常範囲に戻り、それが筋肥大を含む全体的なコンディションを改善する可能性はある。
  • しかし既に正常範囲内にある人が「さらに上げる」ことで筋肥大が促進されるかどうかは別。
  • 市販のテストステロンブースターサプリ(トリビュラスなど)が筋肥大を有意に増加させるというエビデンスは現時点ではない。
判定

欠乏状態の改善は有意義だが、正常範囲内でさらに「上げる」ことによる筋肥大促進効果は証明されていない。市販テストステロンブースターの筋肥大への明確なエビデンスはない。

信頼度:賛否が分かれる

公開日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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