
トレーニング後の急性テストステロン上昇は筋肥大を促進するか
言われていること
ボディビル系トレーニング文化・ブログ記事
スクワットやデッドリフトなど大筋群の複合種目で急性テストステロンが上昇し、その後の筋肥大を促進する。だから脚トレやコンパウンド種目を先にやることが重要だ。
研究が示すこと
- West ら(2010)は、健康な若年男性12名が15週間、同じ肘屈筋を別々の日に異なるホルモン環境で鍛えた試験である。低ホルモン条件では単独のアームカールを行い、高ホルモン条件では同じアーム種目の直後に大量の脚レジスタンス運動を行った。低ホルモン条件では成長ホルモン・IGF-1・テストステロンの上昇が無く、高ホルモン条件では直後・15分後・30分後に有意な上昇があった(P<0.001)。筋断面積は低ホルモン条件で12%、高ホルモン条件で10%増加し(P<0.001)、条件間に差は無かった(交互作用 P=0.25)。I型・II型線維の断面積も条件の影響を受けず、筋力は両腕で増加したが条件間で差が無かった。 著者らは、負荷のかかった筋を運動誘発性の急性な同化ホルモンの上昇にさらしても、若年男性の筋肥大も筋力も高まらないと結論している。 収録している West & Phillips(2012)は別の研究で、若年男性56名の運動後の血清成長ホルモン・遊離テストステロン・IGF-1・コルチゾールの反応を、12週間の訓練による除脂肪量・筋線維断面積・レッグプレス筋力の増加と相関させたコホート解析である。 成長ホルモン・遊離テストステロン・IGF-1の曲線下面積と、除脂肪量やレッグプレス筋力の増加のあいだに有意な相関は無かった。一方、コルチゾールの曲線下面積は除脂肪量の変化(r=0.29、P<0.05)とII型線維断面積(r=0.35、P<0.01)と、成長ホルモンの曲線下面積は線維面積の増加(I型 r=0.36、P=0.006/II型 r=0.28、P=0.04)と相関した。筋力との相関はいずれも見られなかった。
収録している West ら(2010、12名・15週間)では、脚レジスタンス運動を併用した高ホルモン条件と併用しない低ホルモン条件で、筋断面積の増加(10%対12%)にも筋力にも差が無かった。West & Phillips(2012、56名)でも、成長ホルモン・遊離テストステロン・IGF-1の曲線下面積と除脂肪量・筋力の増加に有意な相関は無かった。
安静時テストステロン値が高い人は筋肥大しやすいか
言われていること
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テストステロン値が高い人は筋肥大しやすい。だからステロイドが効く理由も、男性が女性より筋肉がつきやすい理由も、テストステロンの差で説明できる。
研究が示すこと
- 生理的な(正常範囲内の)テストステロン差と筋肥大の関係は弱い。
- Mortonら(2018)の研究では、運動前の全身のホルモン値(テストステロン・IGF-1など)は筋肥大の大きさを予測せず、筋のアンドロゲン受容体量のほうが筋肥大と関連していた。
- 一方、薬理学的量(正常値を大幅に超えるステロイド使用)では明確な筋肥大促進効果がある。
- 生理的な変動範囲内では、テストステロン単独で筋肥大の個人差を説明するのは難しい。
正常範囲内のテストステロン値の差は筋肥大の予測因子として弱い。薬理学的量での効果は別問題。テストステロンが「高い方が有利」という単純な解釈は過大評価。
「テストステロンを自然に上げる」ことで筋肥大は促進されるか
言われていること
健康系ウェブメディア・サプリメーカー広告
睡眠を十分取ったり、亜鉛やビタミンDを補給したりしてテストステロンを自然に上げれば筋肥大が加速する。テストステロンブースターサプリも一定の効果がある。
研究が示すこと
- 睡眠不足・亜鉛欠乏・ビタミンD欠乏などの「欠乏状態」を改善することでテストステロンが正常範囲に戻り、それが筋肥大を含む全体的なコンディションを改善する可能性はある。
- しかし既に正常範囲内にある人が「さらに上げる」ことで筋肥大が促進されるかどうかは別。
- 市販のテストステロンブースターサプリ(トリビュラスなど)が筋肥大を有意に増加させるというエビデンスは現時点ではない。
欠乏状態の改善は有意義だが、正常範囲内でさらに「上げる」ことによる筋肥大促進効果は証明されていない。市販テストステロンブースターの筋肥大への明確なエビデンスはない。
訂正履歴訂正2回・撤回した原文4件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 片腕デザインの試験を West & Phillips(2012)に帰属させていたが、それは West ら(2010)であり、2012年のほうは56名のコホート解析である。 取り違えていた記述を本文から撤回して訂正履歴に移した(West ら 2010 は先の訂正で sources に追加してある)。 ①「Westersら(2010, 2012)の重要なRCTでは、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった。」(第1ラウンドの研究側)── 著者名の誤記(Westers)と、2010年と2012年の論文を1つのRCTとして扱っていた点。 ②「West と Phillips(2012)は、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった。」(第1ラウンドの研究側)── 片腕デザインの試験を West & Phillips(2012)に帰属させていた。その試験は West ら(2010、健康な若年男性12名・15週間)で、2012年のほうは若年男性56名のコホート解析である。 期間も「12〜15週」ではなく15週である。 ③「この研究は「急性ホルモン上昇は筋肥大の直接因子ではない可能性」を強く示唆している。」(第1ラウンドの研究側)── 「強く示唆している」という重みづけ。
撤回した原文3件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
Westersら(2010, 2012)の重要なRCTでは、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった。
West と Phillips(2012)は、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった。
この研究は「急性ホルモン上昇は筋肥大の直接因子ではない可能性」を強く示唆している。
- 片腕デザインの試験を West と Phillips(2012)に帰属させていたのを撤回した。片腕デザインは West ら(2010)である。同論文を出典に追加し、両者の設計と結果を分けて記述した。
撤回した原文1件
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West と Phillips(2012)は、片腕のアームカールを急性テストステロン上昇条件(脚トレ直後に実施)と上昇なし条件(単独実施)で比較したところ、12〜15週後の上腕二頭筋の筋肥大に差がなかった
関連する研究
出典
- West DWD, Phillips SM (2012) Eur J Appl Physiol — Associations of exercise-induced hormone profiles and gains in strength and hypertrophy
- West DWD, et al. (2010) J Appl Physiol — 運動に伴う同化ホルモンの上昇は筋タンパク質合成や筋肥大の増大に必要ではない
- Morton RW et al. (2018) Front Physiol — 筋アンドロゲン受容体量は筋肥大と関連するが全身のホルモン値は関連しない
- Schroeder ET et al. (2013) Med Sci Sports Exerc — Hormonal Response to Training — Not a Direct Predictor of Hypertrophy
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