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研究 vs 勘

強くなるトレーニングと大きくなるトレーニングは違うのか? 筋力と筋肥大の関係

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「筋力は神経適応、筋肥大は筋肉の大きさの変化」——これはスポーツ科学の基本的な説明だ。この記事では、収録している3件が筋力と筋肥大について示している範囲と、判定できない範囲を整理する。

Round1

筋肥大しないと筋力は上がらないか

言われていること

一般的なフィットネス情報

筋肉が大きくなれば自動的に強くなる。筋力と筋肥大は不可分で、一方が増えれば他方も増える。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Folland & Williams(2007)の結論はこうである。
  • 「筋力の向上は神経系と形態の要因の広い組み合わせによる。神経系の要因はトレーニングプログラムの初期段階でもっとも大きく寄与しうるが、筋肥大の過程もトレーニング開始時から始まる。」 同レビューが挙げている形態の適応は、筋全体および個々の筋線維の横断面積の増加(筋原線維のサイズと数の増加による)が主要なもので、衛星細胞はトレーニングのごく初期に活性化され、その増殖と既存線維への融合が筋肥大反応に深く関わるとみられるとしている。
  • 神経系の適応の証拠は、適応の特異性・片側トレーニングの反対側への転移・イメージ収縮から間接的に得られるものである。
判定

「筋肥大しないと筋力は上がらないか」を、本記事が収録している出典からは判定できない。収録している Folland & Williams(2007)が述べているのは、筋力の向上が神経系と形態の要因の広い組み合わせによること、神経系の要因は初期にもっとも寄与しうるが、筋肥大の過程もトレーニング開始時から始まることである。

信頼度:研究待ち
Round2

高重量低レップのパワーリフティング的トレーニングは筋肥大に不向きか

言われていること

ボディビル対パワーリフティングの比較論

1〜5レップの高重量トレーニングは筋力には最高だが筋肥大には非効率。筋肥大には8〜12レップ中重量が必要で、パワーリフターの体型をみればわかる——筋力は高いが見た目はボディビルダーに遠い。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Schoenfeld ら(2017)のメタ分析(21件)が比べたのは低負荷(1RMの60%以下)と高負荷(60%超)で、いずれの条件もすべてのセットを一時的な筋の破綻まで行った試験に限っている。
  • 結果は、1RM筋力の増加が高負荷で有意に大きく、等尺性筋力にも筋肥大の指標にも条件間の有意差は検出されなかった。 著者らはこれを受けて、最大筋力の利益は高負荷から得られる一方、筋肥大は幅広い負荷域で同等に達成されうると述べている——ただしこれは著者らの解釈であって、同等性の許容幅を決めて検証した結果ではない。 同メタ分析はボリュームを等量に揃えた比較ではなく(破綻まで行う条件で統一している)、代謝ストレスも扱っていない。
判定

収録しているメタ分析が示しているのは、1RM筋力の増加は高負荷で有意に大きく、筋肥大の指標には低負荷と高負荷の有意差が検出されなかった(有意差が検出されなかったことは同等性の証明ではない)ことである。ただし比べているのは負荷の高低であってレップ数ではなく、また総ボリュームを揃えた比較でもない。

信頼度:賛否が分かれる
Round3

筋力と筋肥大を同時に最大化できるか

言われていること

ピリオダイゼーション設計の古典的アプローチ

ある時期は筋力特化、別の時期は筋肥大特化で切り替えるべき。同時に両方を最大化しようとすると両方が中途半端になる。

VS

研究が示すこと

  • 収録3件のいずれも、筋力と筋肥大の同時最大化を扱っていない。 収録している Issurin(2010)は、トレーニングのピリオダイゼーションの方法論に関するレビューである。
  • 同抄録が述べているのは、従来型のピリオダイゼーションの限界として(i)多くの能力に向けた「混合」トレーニングが相反する生理学的応答を生むこと、(ii)多目標のトレーニングを長期間続けることで過度の疲労が生じること、(iii)「混合」トレーニングに典型的な中〜低集中の負荷では刺激が不十分であること、(iv)シーズンを通じて複数回のピークを作れないことの4点を挙げ、その代替としてブロック・ピリオダイゼーション——最小限の目標能力に集中した高濃度の負荷を持つ専門的なトレーニングサイクル(ブロック)を順に並べる考え方——を提示していることである。
  • 筋力と筋肥大を同時に最大化できるかを検証したものではなく、対象はハイパフォーマンスのアスリートである。
判定

筋力と筋肥大を同時に最大化できるかを、本記事が収録している出典からは判定できない。収録している Issurin(2010)はハイパフォーマンスのアスリートに向けたピリオダイゼーションの方法論のレビューであり、この問いを検証したものではない。

信頼度:研究待ち
訂正履歴訂正1回・撤回した原文21件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 収録している3件(Folland & Williams 2007 のレビュー、Schoenfeld ら 2017 のメタ分析、Issurin 2010 のレビュー)に対する帰属が3つとも実際の記載と違っていた。Folland & Williams は「筋肥大の過程もトレーニング開始時から始まる」と述べており、神経適応が先行して筋肥大が遅れるとはしていない。 Schoenfeld ら(2017)が比べたのは負荷の高低でレップ数ではなく、ボリュームを等量に揃えた比較でもない。 Issurin(2010)はハイパフォーマンスのアスリートに向けたピリオダイゼーションの方法論のレビューで、筋力と筋肥大の同時最大化を検証していない。 該当する記述を本文から撤回して訂正履歴に移した。あわせて、撤回のときに書いた説明自体の直しも2件記録する。 ①「しかし実際のトレーニング設計では「強くなること」と「大きくなること」はどこまで一致し、どこで乖離するのか。」(導入)── どこまで一致しどこで乖離するかを示せる前提だった。 ②「筋力と筋肥大の関係を理解することで、自分の目標に最適なプログラム設計ができる。」(導入)── 関係を理解すれば最適なプログラム設計ができるという帰結。収録3件はプログラム設計を評価していない。 ③「初心者期の筋力増加の大部分は神経適応(運動単位の動員効率・筋間協調・発揮タイミングの改善)によるもので、筋断面積の増加なしに筋力が向上する時期がある(Folland & Williams 2007)。」(第1ラウンドの研究側)── Folland & Williams(2007)への帰属。同レビューの結論は「筋力の向上は神経系と形態の要因の広い組み合わせによる。神経系の要因は初期段階でもっとも大きく寄与しうるが、筋肥大の過程もトレーニング開始時から始まる」である。 ④「筋肥大は後続して起き、長期的な筋力増加にはより大きな役割を果たす。」(第1ラウンドの研究側)── 筋肥大が後続して起きるという時系列。同上。 ⑤「一方、上級者では神経適応が頭打ちになり、さらなる筋力増加には筋断面積増加(筋肥大)がより重要になる。」(第1ラウンドの研究側)── 上級者で神経適応が頭打ちになるという記述。同抄録に無い。 ⑥「初〜中級者では筋肥大なしに筋力が上がる時期がある(神経適応)。」(第1ラウンドの判定)── 初〜中級者では筋肥大なしに筋力が上がるという判定。 ⑦「長期的には筋断面積が筋力増加の基盤になる。筋力と筋肥大は強く相関するが、完全に同一ではない。」(第1ラウンドの判定)── 長期的には筋断面積が基盤になるという判定。 ⑧「Schoenfeldら(2017)のメタ分析では、ボリュームを等量にした場合、1〜5レップの高負荷と8〜12レップの中負荷で筋肥大の差は有意ではなかった。」(第2ラウンドの研究側)── Schoenfeld ら(2017)への帰属。同メタ分析が比べたのは低負荷(1RMの60%以下)と高負荷(60%超)で、レップ数ではない。またボリュームを等量に揃えた比較でもない(すべてのセットを一時的な筋の破綻まで行った試験に限っている)。 ⑨「ただし「高重量でのトレーニングは同等のボリュームを確保しにくい」という問題があり、1〜5レップでは1セットあたりの代謝ストレスも低い。」(第2ラウンドの研究側)── 高重量でボリュームを確保しにくいという問題と、代謝ストレスが低いという記述。同メタ分析は扱っていない。 ⑩「実際のパワーリフターが「週ボリューム」を確保したプログラムを行えば筋肥大も十分に起きる。」(第2ラウンドの研究側)── パワーリフターが週ボリュームを確保すれば筋肥大も十分に起きるという記述。 ⑪「高重量低レップが「筋肥大に不向き」という解釈は「週の総ボリューム」を無視した過剰な一般化。」(第2ラウンドの研究側)── 「過剰な一般化」という評価。 ⑫「ボリュームが等量なら高重量低レップでも筋肥大は同等に得られる。」(第2ラウンドの判定)── ボリュームが等量なら同等という判定。 ⑬「実際問題として週ボリュームを確保しにくい点は課題だが、パワーリフティング的トレーニングが筋肥大に向かないという解釈は過剰。」(第2ラウンドの判定)── 週ボリュームを確保しにくい点が課題だという判定。 ⑭「「ボディコンポジションの変化(筋肥大)」と「筋力増加」は高い相関があり、大部分のトレーニングプログラムで両方が同時に向上する。」(第3ラウンドの研究側)── 筋肥大と筋力増加に高い相関があり両方が同時に向上するという記述。収録3件は相関を測っていない。 ⑮「特に中〜上級者では「筋力特化ブロック」(高強度・低ボリューム)と「筋肥大ブロック」(中強度・高ボリューム)を周期的に切り替えるブロックピリオダイゼーションが有効とされている」(第3ラウンドの研究側)── 中〜上級者でブロックピリオダイゼーションが有効という記述。収録している Issurin(2010)はハイパフォーマンスのアスリートに向けた方法論のレビューで、訓練段階で層別していない。 ⑯「これは「別々に最大化」するためではなく、各フェーズの特異的適応を引き出しながら双方を高める戦略。」(第3ラウンドの研究側)── 各フェーズの特異的適応を引き出す戦略だという解釈。 ⑰「筋力と筋肥大の完全分離は現実的ではなく、多くの場合で両者は相補的に向上する。」(第3ラウンドの研究側)── 完全分離は現実的でなく相補的に向上するという評価。 ⑱「筋力と筋肥大は多くの場合で同時に向上する。」(第3ラウンドの判定)── 多くの場合で同時に向上するという判定。 ⑲「ブロックピリオダイゼーションは両者を切り替えるためではなく、特異的適応を引き出しながら双方を伸ばすための戦略。」(第3ラウンドの判定)── ブロックピリオダイゼーションの目的についての判定。 ⑳「つまり同レビューは、筋肥大が後から始まるとは述べていない。」(第1ラウンドの研究側)── 上を直したときに書いた説明だが、同レビューが「後から始まるとは述べていない」という否定形は、引用した結論(筋肥大の過程もトレーニング開始時から始まる)を言い換えたものなので、結論そのものを引く形に改めた。 ㉑「結果は、1RM筋力の増加が高負荷で有意に大きく、等尺性筋力には条件間の有意差が無く、筋肥大の指標の変化は条件間で同程度だった。」(第2ラウンドの研究側)── 上を直したときに「筋肥大の指標の変化は条件間で同程度だった」と書いたが、同抄録が報告しているのは条件間の有意差が検出されなかったことで、同程度であることの証明ではない。
    撤回した原文21件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. しかし実際のトレーニング設計では「強くなること」と「大きくなること」はどこまで一致し、どこで乖離するのか。
    2. 筋力と筋肥大の関係を理解することで、自分の目標に最適なプログラム設計ができる。
    3. 初心者期の筋力増加の大部分は神経適応(運動単位の動員効率・筋間協調・発揮タイミングの改善)によるもので、筋断面積の増加なしに筋力が向上する時期がある(Folland & Williams 2007)。
    4. 筋肥大は後続して起き、長期的な筋力増加にはより大きな役割を果たす。
    5. 一方、上級者では神経適応が頭打ちになり、さらなる筋力増加には筋断面積増加(筋肥大)がより重要になる。
    6. 初〜中級者では筋肥大なしに筋力が上がる時期がある(神経適応)。
    7. 長期的には筋断面積が筋力増加の基盤になる。筋力と筋肥大は強く相関するが、完全に同一ではない。
    8. Schoenfeldら(2017)のメタ分析では、ボリュームを等量にした場合、1〜5レップの高負荷と8〜12レップの中負荷で筋肥大の差は有意ではなかった。
    9. ただし「高重量でのトレーニングは同等のボリュームを確保しにくい」という問題があり、1〜5レップでは1セットあたりの代謝ストレスも低い。
    10. 実際のパワーリフターが「週ボリューム」を確保したプログラムを行えば筋肥大も十分に起きる。
    11. 高重量低レップが「筋肥大に不向き」という解釈は「週の総ボリューム」を無視した過剰な一般化。
    12. ボリュームが等量なら高重量低レップでも筋肥大は同等に得られる。
    13. 実際問題として週ボリュームを確保しにくい点は課題だが、パワーリフティング的トレーニングが筋肥大に向かないという解釈は過剰。
    14. 「ボディコンポジションの変化(筋肥大)」と「筋力増加」は高い相関があり、大部分のトレーニングプログラムで両方が同時に向上する。
    15. 特に中〜上級者では「筋力特化ブロック」(高強度・低ボリューム)と「筋肥大ブロック」(中強度・高ボリューム)を周期的に切り替えるブロックピリオダイゼーションが有効とされている
    16. これは「別々に最大化」するためではなく、各フェーズの特異的適応を引き出しながら双方を高める戦略。
    17. 筋力と筋肥大の完全分離は現実的ではなく、多くの場合で両者は相補的に向上する。
    18. 筋力と筋肥大は多くの場合で同時に向上する。
    19. ブロックピリオダイゼーションは両者を切り替えるためではなく、特異的適応を引き出しながら双方を伸ばすための戦略。
    20. つまり同レビューは、筋肥大が後から始まるとは述べていない。
    21. 結果は、1RM筋力の増加が高負荷で有意に大きく、等尺性筋力には条件間の有意差が無く、筋肥大の指標の変化は条件間で同程度だった。

公開日: 更新日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

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