本文へスキップ
BODYDATA
研究 vs 勘

「タンパク質は体重×2g摂るべき」は本当か? 通説 vs 研究

公開日: 更新日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「筋肥大にはタンパク質を体重1kgあたり2g摂れ」はジムで最もよく聞く栄養アドバイスの一つだ。しかし科学はその数字を支持しているのか、それとも過剰なのか。メタ分析のデータをもとに、この「鉄則」を3つの角度から検証する。

Round1

筋肥大目的で体重×2gのタンパク質摂取は必要か

言われていること

ジムやSNSで広く流布されている通説

筋肉をつけたいなら体重(kg)×2gはマスト。それ未満では筋合成が不十分で、せっかくのトレーニングが無駄になる。プロもアマもこの数字を基準にしている。

VS

研究が示すこと

  • Morton ら(2018)による49件・1,800名以上を対象としたメタ分析では、タンパク質補給による筋肉量増加の効果が頭打ちになる水準が推定されている。
  • この頭打ちの水準は1.62 g/kg/日と推定された値であり、その95%信頼区間(1.03〜2.20)と、分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)は、抄録ではなく全文(PMC5867436)の記載である。確立した閾値ではない。 したがって「2 g/kgが上限を超えているかどうか」を、この解析から判定することはできない。 個人差(遺伝、トレーニング歴、年齢)もある。
判定

この解析からは「何g/kgが上限か」を決められない(頭打ちの推定値は1.62 g/kg/日だが95%CIは1.03〜2.20、分節回帰は有意でない)。2 g/kgを義務と考える根拠も、それを上限と考える根拠も、この研究からは出てこない。

信頼度:強い根拠あり
Round2

体重×2gを超えて摂ることにメリットはあるか

言われていること

ボディビルダーのSNS・ブログ等

多ければ多いほどいい。タンパク質は余分に摂っても脂肪になりにくく、満腹感も高い。3〜4g/kgを摂っているプロ選手もいる。

VS

研究が示すこと

  • 収録している Stokes ら(2018)が述べているのは、筋タンパク質合成は用量反応的に刺激されること、その主要なアゴニストはロイシンであること、そして高用量では筋タンパク質分解の抑制がレジスタンス運動後の適応を妨げる可能性があるという指摘である。
  • 腎機能も、熱産生効果も、3 g/kg という境界も、コストも、同レビューは扱っていない。2 g/kg を大きく超える摂取の安全性を調べた研究を、本記事は収録していない。
判定

2 g/kg を大きく超える摂取について、安全性も、追加効果の有無も、本記事が収録している出典からは判定できない。 収録している Stokes ら(2018)はむしろ、高用量では筋タンパク質分解の抑制が運動後の適応を妨げる可能性を指摘している——これは「多くても害はない」とは別の方向の指摘である。決着させるには、同じトレーニング条件で摂取量を 1.6 / 2.0 / 3.0 g/kg に割り付け、筋量と腎機能の指標を並べて追う試験が要る。

信頼度:研究待ち
Round3

減量中と増量中で最適なタンパク質摂取量は異なるか

言われていること

ジムの一般的なアドバイス

減量中も増量中も2gで固定でいい。とにかく2gキープしておけば間違いない。

VS

研究が示すこと

  • Helms ら(2014)の結論は「エネルギー制限下のレジスタンストレーニング実施者のタンパク質必要量は、除脂肪量1kgあたり2.3〜3.1gと考えられ、カロリー制限の程度と体脂肪の少なさに応じて高くなる」である。総体重あたりではなく除脂肪量あたりの値である点に注意がいる。 対象は成人・体脂肪率が低い(男性23%以下・女性35%以下)・6か月以上のレジスタンストレーニング経験がある人で、組み入れ試験は6件である。
  • 増量中(カロリー余剰)の必要量については、本記事は出典を示せない。
判定

エネルギー制限下では必要量が上がるという方向は、Helms ら(2014)が支持している(除脂肪量1kgあたり2.3〜3.1g)。ただし総体重あたりの具体的な目標値も、増量中の必要量も、本記事は出典を示せない。

信頼度:強い根拠あり
訂正履歴訂正1回・撤回した原文3件

公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。

  • 第2ラウンドに書いていた「タンパク質は熱産生効果が高くカロリーとして蓄積されにくいが、筋肥大への寄与はある閾値を超えると頭打ちになる」「2 g/kgを大幅に超える摂取量(例:3 g/kg以上)では、筋肉量の増加より追加カロリーとしての影響が大きくなる」「腎機能が正常な健康成人での安全性は概ね確認されている」「コスト・食事バランスの観点から過剰摂取にメリットは少ない」——を撤回した。収録している Stokes ら(2018)が述べているのは、筋タンパク質合成が用量反応的に刺激されること、主要なアゴニストがロイシンであること、高用量では筋タンパク質分解の抑制が運動後の適応を妨げる可能性があることで、腎機能も熱産生効果も 3 g/kg という境界もコストも扱っていない。2 g/kg を大きく超える摂取の安全性を調べた研究を、本記事は収録していない。英語側にだけ残っていた「実務的な余裕として 2 g/kg を狙うのは無害」という安全性の判断も撤回した。Morton ら(2018)は、その摂取量での有害事象も安全上限も検証していない。
    撤回した原文3件

    公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。

    1. Stokes ら(2018)のレビューを含む複数の研究によれば、タンパク質は熱産生効果が高くカロリーとして蓄積されにくいが、筋肥大への寄与はある閾値を超えると頭打ちになる
    2. 2 g/kgを大幅に超える摂取量(例:3 g/kg以上)では、筋肉量の増加より追加カロリーとしての影響が大きくなる
    3. 腎機能が正常な健康成人での安全性は概ね確認されているが、コスト・食事バランスの観点から過剰摂取にメリットは少ない

この記事の内容を計算する

  • タンパク質摂取量計算ツール

    体重と目的(筋肥大・減量中の筋量維持・健康維持)から、研究の対象集団・出典を明示した1日のタンパク質摂取量の目安を計算します。

    計算してみる

関連するサプリ

PR
  • ホエイプロテイン

    レジスタンストレーニングにタンパク質補給を加えると、筋力・除脂肪量が増える。 健常成人の49件のRCT(計1,863名)のメタ分析で、6週間以上のトレーニングに補給を加えると1RM筋力が+2.49kg、除脂肪量が+0.30kg、筋線維横断面積が+310µm²増えた。総タンパク質摂取量については、除脂肪量の増加が頭打ちになるブレークポイントが1.62 g/kg/日(95%CI 1.03〜2.20)と推定されている。ただし著者らはこの分節回帰が統計的に有意でないこと(p=0.079)を明記しており、確立した閾値ではない。(Morton 2018)

以下のリンクはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。

公開日: 更新日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

プロフィールを見る
染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

Read Next

次に読む