
同じ時間で比べると、HIITは定常有酸素よりカロリー消費が多いか
言われていること
フィットネスYouTuber・HIIT推奨トレーナー
20分のHIITは1時間の軽いランニングより消費カロリーが多い。時間効率でHIITの圧勝。
研究が示すこと
- Wewege ら(2017)は、過体重・肥満の18〜45歳を対象にHIITと中強度持続トレーニング(MICT)を比べた13件を統合したレビューである(平均で週3回・10週間)。
- HIITもMICTも全身の脂肪量と腹囲を有意に減らし、どの体組成の指標でも両者に有意差は無かった。 HIITは約40%少ないトレーニング時間で済んでいる、というのが同レビューの記述である。なお有意差が検出されなかったことは、両者が同等であることの証明ではない。 もう1つ、同レビューが挙げている条件差がある。
- 走行によるトレーニングはHIIT・MICTのいずれでも全身の脂肪量に大きな効果を示した(標準化平均差 −0.82 と −0.85)一方、自転車によるトレーニングでは脂肪の減少が生じなかった。
収録しているレビューでは、HIITとMICTの体組成の指標に統計的有意差は検出されなかった。 またHIITのトレーニング時間は約40%少なかった。 有意差が検出されなかったことは同等性や非劣性の証明ではない。 同等性の許容幅を決めて検証した解析ではなく、各試験の時間も揃っていない。総消費カロリーの比較は、収録2件が扱っていないため判定できない。 なお同レビューでは、走行では両方式とも脂肪量に大きな効果が出た一方、自転車では脂肪の減少が生じていない。
HIITは定常有酸素より「後燃え(EPOC)」で余分に脂肪を燃焼させるか
言われていること
HIIT商品の広告・一部のパーソナルトレーナー
HIITは運動後も何時間も脂肪が燃え続けるから総合的な脂肪燃焼量はケタ違いに高い。
研究が示すこと
- Laforgia ら(2006)のレビューは、運動後過剰酸素消費(EPOC)について次のように整理している。
- 運動強度とEPOCの大きさには、特定の運動時間において指数関数的な関係があり、最大酸素摂取量の50〜60%以上では運動時間が延びるほどEPOCが直線的に増える。
- 適切な刺激(最大酸素摂取量の70%以上で50分以上、あるいは105%以上で6分以上)では3〜24時間の長いEPOCが生じうる。 ただし、そうした長いEPOCを生じた研究でも、EPOCは運動の正味の総酸素コストの6〜15%を占めるにすぎない。 著者らは、EPOCが減量で重要な役割を果たすという初期の研究の楽観論はおおむね根拠がなく、体重の維持における運動の役割は主として運動中のエネルギー消費の積み重ねによって媒介されると結論している。
- 長いEPOCを生む運動刺激は、非アスリートには耐えられない可能性が高いとも述べている。
- EPOCの大きさについて誇張されているのは持続時間ではなく、その大きさである——同レビューは条件次第で3〜24時間のEPOCが生じうるとしつつ、EPOCは運動の正味の総酸素コストの6〜15%にとどまるとしている。 HIITとMICTのEPOCを比べた研究を、本記事は収録していない。同レビューが述べているのは強度とEPOCの関係である。
EPOCは実在し、条件によっては3〜24時間続きうる。誇張なのは持続時間ではなく大きさで、EPOCは運動の正味の総酸素コストの6〜15%にとどまる。 著者らは、体重の維持における運動の役割は主として運動中のエネルギー消費によると結論している。HIITとMICTのEPOCを比べた研究を、本記事は収録していない。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文9件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。
①「Wewege et al.(2017)の系統的レビューでは、運動時間を同等にした比較でHIITとMICT(中強度持続有酸素)の体脂肪減少量に有意差は認められなかった」——比較条件が逆である。 同レビューが報告しているのは、HIITが約40%少ないトレーニング時間で済んでいるということで、運動時間を揃えた比較ではない。②「HIITは単位時間あたりのカロリー消費は高いが、実際のプロトコルでは休憩時間が含まれるためセッション全体の総消費カロリーは定常有酸素と大きく変わらないことが多い」、③「EPOCを加味しても総カロリー差は50〜100kcal程度と試算されている」——総消費カロリーの比較を、収録した2件はどちらも扱っていない。
④「時間については、HIITのほうが約40%短い時間で同じ結果に達している」——有意差が検出されなかったことは、同等性や非劣性の証明ではない。同等性の許容幅を決めて検証した解析ではなく、各試験の時間も揃っていない。「約40%短い時間で済んだ」ことと「体組成の指標に有意差が検出されなかった」ことは、別々に書くべきものだった。
⑤「高強度運動後のEPOCは確かに存在し、定常有酸素より大きいことが示されているが(Laforgia et al. 2006)、その絶対量は誇張されている」、⑥「高強度セッション後のEPOCは100〜200kcal程度(チョコレートバー半分以下)に過ぎず、「何時間も燃え続ける」という表現は研究と乖離している」、⑦「HIITのEPOCは実在するが、量は少なく「何時間も燃え続ける」は誇張」——同レビューはHIITとMICTのEPOCを比べたものではなく、述べているのは強度とEPOCの関係である。100〜200kcalという数値も抄録に無い。また同レビューは、適切な刺激では3〜24時間の長いEPOCが生じうるとしているので、「何時間も燃え続ける」が誇張だという判定も誤りだった。誇張なのは持続時間ではなく、その大きさ(運動の正味の総酸素コストの6〜15%)のほうである。
⑧「体脂肪減少の主決定要因はカロリー収支であり、EPOCはその補助的な要素に留まる」、⑨「継続しやすさ・好み・ケガリスクを考慮して有酸素の種類を選ぶのが合理的」——カロリー収支も、継続率も、ケガのリスクも、収録した2件は扱っていない。
撤回した原文9件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
Wewege et al.(2017)の系統的レビューでは、運動時間を同等にした比較でHIITとMICT(中強度持続有酸素)の体脂肪減少量に有意差は認められなかった。
HIITは単位時間あたりのカロリー消費は高いが、実際のプロトコルでは休憩時間が含まれるためセッション全体の総消費カロリーは定常有酸素と大きく変わらないことが多い。
EPOCを加味しても総カロリー差は50〜100kcal程度と試算されている。
時間については、HIITのほうが約40%短い時間で同じ結果に達している(同等の時間で比べた結果ではない)。
高強度運動後のEPOCは確かに存在し、定常有酸素より大きいことが示されているが(Laforgia et al. 2006)、その絶対量は誇張されている。
高強度セッション後のEPOCは100〜200kcal程度(チョコレートバー半分以下)に過ぎず、「何時間も燃え続ける」という表現は研究と乖離している。
HIITのEPOCは実在するが、量は少なく「何時間も燃え続ける」は誇張。
体脂肪減少の主決定要因はカロリー収支であり、EPOCはその補助的な要素に留まる。
継続しやすさ・好み・ケガリスクを考慮して有酸素の種類を選ぶのが合理的。
関連する研究
出典
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- 研究 vs 勘
「有酸素なしでは痩せられない」は本当か? 筋トレだけダイエット 通説 vs 研究
「痩せるにはランニングやバイクなどの有酸素運動が必須」——この常識は長年ダイエット文化に根付いている。一方で「筋トレだけで体脂肪を落とした」という体験談も多い。有酸素は本当に必須なのか、研究を確認する。
吉崎 槙吾
- 解説
ケト適応(ケトアダプテーション)には何週間かかる? 脂肪を燃料にする体になるまでのプロセス
ケト適応にどれだけかかるのかを示せる出典を、本記事は持っていない。 収録している2件は期間を測る設計ではない。Volek ら(2016)は低糖質食を平均20か月続けているエリート選手10名と高糖質食10名を比べた断面研究で、ピーク脂質酸化率が2.3倍高い一方、筋グリコーゲンの利用と再充填には有意差が無かった。Burke ら(2017)はエリート競歩選手29名の3週間の介入試験で、低糖質高脂肪群は脂質酸化率が上がったのに運動エコノミーが悪化し、10kmのタイムが改善しなかった(高糖質群は6.6%改善)。空腹時運動のメタ分析(Vieira 2016)が示しているのは運動中の脂質酸化であって、ケト適応ではない。
吉崎 槙吾
- 解説
Olympia選手の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
収録している出典から言えるのは次の3点である。 (1) Wilson ら(2012)のメタ分析(21件・422効果量)は、コンカレントトレーニングの干渉が有酸素運動の様式・頻度・時間の関数だと報告している。走行と組み合わせた場合には筋肥大・筋力とも有意な低下が生じたが、自転車では生じなかった。 (2) Vieira ら(2016)のメタ分析(27件・273名)は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂質酸化を高めると報告している。 (3) Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名・4週間)と Hackett ら(2017)のメタ分析(5件・96名)は、カロリーを揃えた条件で空腹時と摂食時の体組成変化に有意な群間差が無かったと報告している。 「朝カーディオが必要か」に直接答えた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾