
有酸素運動をしないと体脂肪は落とせないか
言われていること
旧来の減量指導・ランニング推奨コーチ
有酸素をやらないと脂肪は燃えない。食事制限と筋トレだけでは「引き締まった」体にはなれない。
研究が示すこと
- 収録している Ballor & Keesey(1991)が扱っているのは、運動トレーニングの種類・期間・頻度が、体重・脂肪量・除脂肪量・体脂肪率の変化に与える影響である。
- 有酸素型のトレーニングによる体重減少はわずかで、男性のほうが大きかった。
- 段階的回帰では、男女とも運動中のエネルギー消費量とベースラインの体脂肪量(または体重)が、有酸素型トレーニングに伴う体重・脂肪量・体脂肪率の変化の分散の大部分を説明した(女性ではトレーニング週数と1回あたりの運動時間も有意な予測因子だった)。
- とくに注目されるのは、ウエイトトレーニングが体脂肪の減少を促す点では有酸素運動と同様でありながら、除脂肪量を維持または増加させうるという結果である。 もう1件の Willis ら(2012)は、座位中心の過体重・肥満の成人119名を8か月間、有酸素(AT)・レジスタンス(RT)・両方(AT/RT)に無作為に割り付けた試験である。
- ATとAT/RTはRTより総体重と脂肪量を大きく減らし(P<0.05)、両者のあいだに差は無かった。RTとAT/RTはATより除脂肪量を大きく増やした(P<0.05)。 カロリー消費を測って比べた研究も、食事制限と組み合わせた条件を比べた研究も、本記事は収録していない。
収録2件から言えるのは次の2つである。Ballor & Keesey(1991)は、ウエイトトレーニングが体脂肪の減少を促す点では有酸素運動と同様であり、かつ除脂肪量を維持または増加させうるとしている。 Willis ら(2012)の119名の試験では、有酸素を含む2群のほうがレジスタンス単独より総体重と脂肪量を大きく減らした(P<0.05)。 つまりレジスタンス単独でも脂肪の減少は報告されているが、この試験では有酸素を含む群のほうが減りが大きかった、というのが収録範囲での整理になる。食事制限と組み合わせた条件を比べた研究は収録していない。なお、有酸素を含む群のほうが減りが大きかったことは、有酸素が必要条件であることを意味しない。
有酸素と筋トレを組み合わせると脂肪燃焼は「加速」するか
言われていること
フィットネス雑誌・ボディメイクコーチ
筋トレで筋肉をつけて基礎代謝を上げ、さらに有酸素でカロリーを燃やす——組み合わせれば相乗効果で激痩せできる。
研究が示すこと
- 収録している Willis ら(2012)が報告しているのは次のことである。
- 両方を行う群(AT/RT)は有酸素単独(AT)の2倍の時間を要したにもかかわらず、脂肪量・体重の減少はATを有意に上回らなかった。 著者らは、時間の負担と健康上の利益を天秤にかけると、中年の過体重・肥満者では脂肪量と体重を減らすには有酸素が最適な運動様式であり、除脂肪量を増やすにはレジスタンストレーニングを含む必要があると結論している。
- カロリー収支で説明できるかを検証した解析も、食事制限だけの減量と比べた試験も、収録2件には含まれていない。
組み合わせに「特別な相乗効果」があるかどうかを、本記事が収録している出典からは判定できない。収録している Willis ら(2012)が示しているのは、両方を行っても、2倍の時間をかけたにもかかわらず脂肪量・体重の減少で有酸素単独を有意に上回らなかったことである。除脂肪量については、レジスタンストレーニングを含む群のほうが有酸素単独より大きく増えている。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文7件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第1ラウンドに書いていた「体脂肪減少の根本はエネルギー収支(摂取カロリー < 消費カロリー)であり、そのカロリー赤字を食事制限と筋トレだけで作り出すことは可能」、「Ballor & Keesey(1991)のレビューでは、食事制限単独と食事制限+筋トレの組み合わせで、脂肪量の減少は概ね同等だった」、「有酸素はカロリー消費を増やし赤字を作る手段の一つにすぎず、『必須』ではない」、「筋トレ単独でも十分なカロリー消費は可能で、除脂肪量を維持しながらの減量に有利」、および第2ラウンドの「筋トレ+有酸素の組み合わせは筋トレ単独より体脂肪を多く減少させる可能性はあるが、その効果はカロリー収支の差で概ね説明できる(追加の有酸素分のカロリー消費量)」「『相乗効果』による特別な脂肪燃焼加速のメカニズムは確立されていない」「筋トレで除脂肪量を維持しながら有酸素でカロリー赤字を作る戦略は、食事制限だけの減量より体組成の改善に優れることは支持されている」——を撤回した。Ballor & Keesey(1991)は食事制限単独と食事制限+筋トレを比べていない。同メタ分析が扱っているのは、運動トレーニングの種類・期間・頻度が体重・脂肪量・除脂肪量・体脂肪率の変化に与える影響である。カロリー消費を測って比べた研究も、カロリー収支で説明できるかを検証した解析も、食事制限だけの減量と比べた試験も、収録2件には無い。なお「有酸素は必須ではない」という趣旨そのものは維持している。 有酸素を含む群のほうが減りが大きかったことは、有酸素が必要条件であることを意味しないため。撤回するのは、それをカロリー消費の議論に結びつけていた部分である。
撤回した原文7件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
体脂肪減少の根本はエネルギー収支(摂取カロリー < 消費カロリー)であり、そのカロリー赤字を食事制限と筋トレだけで作り出すことは可能
Ballor & Keesey(1991)のレビューでは、食事制限単独と食事制限+筋トレの組み合わせで、脂肪量の減少は概ね同等だった
有酸素はカロリー消費を増やし赤字を作る手段の一つにすぎず、「必須」ではない
筋トレ単独でも十分なカロリー消費は可能で、除脂肪量を維持しながらの減量に有利
筋トレ+有酸素の組み合わせは筋トレ単独より体脂肪を多く減少させる可能性はあるが、その効果はカロリー収支の差で概ね説明できる(追加の有酸素分のカロリー消費量)
「相乗効果」による特別な脂肪燃焼加速のメカニズムは確立されていない
ただし筋トレで除脂肪量を維持しながら有酸素でカロリー赤字を作る戦略は、食事制限だけの減量より体組成の改善に優れることは支持されている
関連する研究
出典
公開日: / 更新日:


次に読む
- 研究 vs 勘
「HIITは定常有酸素より痩せる」は本当か? HIIT vs ステディカーディオ 通説 vs 研究
「長時間ゆっくり走るより、短時間の高強度インターバル(HIIT)の方が脂肪燃焼効果が高い」——この主張はSNSやフィットネス業界で広く語られる。HIITを支持するデータは本物だが、「ステディカーディオは時代遅れ」という結論は研究が示す実態とは異なる。
吉崎 槙吾
- 解説
ケト適応(ケトアダプテーション)には何週間かかる? 脂肪を燃料にする体になるまでのプロセス
ケト適応にどれだけかかるのかを示せる出典を、本記事は持っていない。 収録している2件は期間を測る設計ではない。Volek ら(2016)は低糖質食を平均20か月続けているエリート選手10名と高糖質食10名を比べた断面研究で、ピーク脂質酸化率が2.3倍高い一方、筋グリコーゲンの利用と再充填には有意差が無かった。Burke ら(2017)はエリート競歩選手29名の3週間の介入試験で、低糖質高脂肪群は脂質酸化率が上がったのに運動エコノミーが悪化し、10kmのタイムが改善しなかった(高糖質群は6.6%改善)。空腹時運動のメタ分析(Vieira 2016)が示しているのは運動中の脂質酸化であって、ケト適応ではない。
吉崎 槙吾
- 解説
Olympia選手の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
収録している出典から言えるのは次の3点である。 (1) Wilson ら(2012)のメタ分析(21件・422効果量)は、コンカレントトレーニングの干渉が有酸素運動の様式・頻度・時間の関数だと報告している。走行と組み合わせた場合には筋肥大・筋力とも有意な低下が生じたが、自転車では生じなかった。 (2) Vieira ら(2016)のメタ分析(27件・273名)は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂質酸化を高めると報告している。 (3) Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名・4週間)と Hackett ら(2017)のメタ分析(5件・96名)は、カロリーを揃えた条件で空腹時と摂食時の体組成変化に有意な群間差が無かったと報告している。 「朝カーディオが必要か」に直接答えた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾