
通常の有酸素運動は筋肉量の低下を引き起こすか
言われていること
筋トレ優先主義者・ボディビル系コーチ
有酸素をやると体が「省エネモード」に入り、筋肉を分解して燃料にする。筋肉を守りたいなら有酸素は避けるべき。
研究が示すこと
- 収録している Wilson ら(2012)は、持久系トレーニングのどの要素がレジスタンストレーニングの結果に不利に働くかを調べた21件・422効果量のメタ分析である。筋肥大の平均効果量は筋力トレーニング単独1.23、持久系単独0.27、コンカレント0.85で、筋力トレーニング単独とコンカレントはいずれも持久系単独より有意に大きかった。 調整変数の解析では、走行と組み合わせた場合に筋肥大・筋力とも有意な低下が生じ、自転車では生じなかった。持久系トレーニングの頻度(-0.26〜-0.35)と時間(-0.29〜-0.75)は、筋肥大・筋力・パワーと有意な負の相関を示した。 著者らは、干渉効果は選んだ持久系トレーニングの様式・頻度・時間の関数だと結論している。
収録している Wilson ら(2012)が示すのは、干渉が持久系トレーニングの様式・頻度・時間の関数だということまでである(走行では筋肥大・筋力とも有意に低下し、自転車では低下しない)。
筋トレと有酸素を同じプログラムで行う(コンカレントトレーニング)と筋肥大が妨げられるか
言われていること
ボディビル系コーチ・高度なプログラミング推奨者
筋トレと有酸素を同時に行うと、シグナルが干渉して筋肉がつきにくくなる。ガチ勢は有酸素と筋トレのシーズンを分けるべき。
研究が示すこと
- 収録している Wilson ら(2012)のメタ分析(21件・422効果量)では、筋肥大の平均効果量が筋力トレーニング単独1.23に対しコンカレント0.85、筋力では1.76に対し1.44、パワーでは0.91に対し0.55だった。
- 走行と組み合わせた場合には筋肥大・筋力とも有意な低下が生じ、自転車では生じていない。 収録している Chtara ら(2008)は、体育学生48名を5群に割りつけ週2回・12週間の訓練を行わせた研究で、同一セッション内の「有酸素→サーキット」と「サーキット→有酸素」を比べている。
- すべてのテストで両群に有意差は出なかった。 同じ試験で差が出たのは順序ではなく、組み合わせた両群がサーキット単独群より1RM(p<0.01)・片脚ハーフスクワット(p<0.02)・5段跳び(p<0.01)・跳躍の最大力(p<0.05)・最大パワー(p<0.02)・最大跳躍高(p<0.05)の伸びが小さかった点である。
収録した2件が示すのは、干渉が持久系トレーニングの様式・頻度・時間の関数であること(Wilson 2012)と、同一セッション内の順序が12週間の筋力・パワーの適応に影響しなかったこと(Chtara 2008)である。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文9件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。本記事が収録している2件(Wilson ら 2012・Chtara ら 2008)は、タンパク質摂取量もカロリー収支も扱っていない。
①「有酸素運動が筋肉量を減少させるかどうかは「カロリー収支・タンパク質摂取・有酸素の種類と量」に大きく左右される」、②「十分なタンパク質摂取(体重1kgあたり1.6g以上)とカロリーが維持されている場合、通常の有酸素(週3〜5回・中程度の強度)が筋肉量を大幅に低下させるエビデンスは弱い」、③「問題になるのは「極端なカロリー不足+大量の有酸素」の組み合わせ」、④「適切なタンパク質と筋トレを維持することで有酸素による筋肉量への悪影響は最小化できる」、⑤「適切なタンパク質摂取と筋トレを維持すれば、通常量の有酸素は筋肉量を大幅に低下させない」、⑥「問題は有酸素そのものではなく「カロリー不足+タンパク質不足」の組み合わせ」——いずれも収録した2件が扱っていない。
⑦「ただし効果量は小さく、フィットネス目的(最大競技力より健康・体型を重視)の一般人では有酸素+筋トレの組み合わせがデメリットを上回るメリットをもたらす」、⑧「干渉効果は存在するが効果量は小さく、一般的なフィットネス目的ではデメリットは小さい」——Wilson ら(2012)は効果量の大小の評価も、目的別の損得も述べていない。
⑨「最大の筋肥大を狙うなら、順序を気にするより有酸素と筋トレのセッションを分けるほうが理にかなう」——セッションを分けた場合と同一セッションで行った場合を比べた研究を収録していない。Chtara ら(2008)が比べたのは同一セッション内の順序である。
あわせて、本文からタンパク質の記述が無くなったため、第2ラウンドと記事全体の関連研究から`protein-intake-muscle-meta` を外した。
撤回した原文9件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
有酸素運動が筋肉量を減少させるかどうかは「カロリー収支・タンパク質摂取・有酸素の種類と量」に大きく左右される。
十分なタンパク質摂取(体重1kgあたり1.6g以上)とカロリーが維持されている場合、通常の有酸素(週3〜5回・中程度の強度)が筋肉量を大幅に低下させるエビデンスは弱い。
問題になるのは「極端なカロリー不足+大量の有酸素」の組み合わせ。
適切なタンパク質と筋トレを維持することで有酸素による筋肉量への悪影響は最小化できる。
適切なタンパク質摂取と筋トレを維持すれば、通常量の有酸素は筋肉量を大幅に低下させない。
問題は有酸素そのものではなく「カロリー不足+タンパク質不足」の組み合わせ。
ただし効果量は小さく、フィットネス目的(最大競技力より健康・体型を重視)の一般人では有酸素+筋トレの組み合わせがデメリットを上回るメリットをもたらす。
干渉効果は存在するが効果量は小さく、一般的なフィットネス目的ではデメリットは小さい。
最大の筋肥大を狙うなら、順序を気にするより有酸素と筋トレのセッションを分けるほうが理にかなう。
関連する研究
出典
公開日: / 更新日:


次に読む
- 解説
Olympia選手の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
収録している出典から言えるのは次の3点である。 (1) Wilson ら(2012)のメタ分析(21件・422効果量)は、コンカレントトレーニングの干渉が有酸素運動の様式・頻度・時間の関数だと報告している。走行と組み合わせた場合には筋肥大・筋力とも有意な低下が生じたが、自転車では生じなかった。 (2) Vieira ら(2016)のメタ分析(27件・273名)は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂質酸化を高めると報告している。 (3) Schoenfeld ら(2014)のRCT(若年女性20名・4週間)と Hackett ら(2017)のメタ分析(5件・96名)は、カロリーを揃えた条件で空腹時と摂食時の体組成変化に有意な群間差が無かったと報告している。 「朝カーディオが必要か」に直接答えた研究を、本記事は収録していない。
吉崎 槙吾
- 解説
減量期の朝カーディオについて、収録した出典が言える範囲
朝に有酸素を行うことの効果を検証した研究を、本記事は収録していない。 収録している出典が示すのは次の2点だけである。Wilson ら(2012)のメタ分析は、持久性トレーニングによる干渉が種目(走行では低下するが自転車では低下しない)・頻度・時間の関数であるとしている。 Vieira ら(2016)のメタ分析は、空腹時の有酸素運動が摂食時より運動中の脂肪酸化を高めるとしている。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「有酸素なしでは痩せられない」は本当か? 筋トレだけダイエット 通説 vs 研究
「痩せるにはランニングやバイクなどの有酸素運動が必須」——この常識は長年ダイエット文化に根付いている。一方で「筋トレだけで体脂肪を落とした」という体験談も多い。有酸素は本当に必須なのか、研究を確認する。
吉崎 槙吾