葉酸サプリ ─ コクランレビューが示していること、示していないこと
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妊娠前後の葉酸補給について、コクランレビューは何を示し、何を示していないのか?
コクランレビュー(De-Regil ら 2015、5試験・女性7,391名)では、妊娠前後の葉酸補給が神経管閉鎖障害を予防することが示されている(リスク比0.31、95%CI 0.17〜0.58、6,708出生、質の高いエビデンス)。 内訳は次のとおりである。 再発の予防は有意だった(リスク比0.34、95%CI 0.18〜0.64、4試験1,846出生)。初発の予防を評価したのは1試験のみで、効果の証拠は得られていない(リスク比0.07、95%CI 0.00〜1.32。ただし葉酸群では発生が0件)。初発の点推定(0.07)は1未満で予防の向きだが、95%信頼区間は0.00〜1.32で1をまたいでおり、効果の有無も大きさも確定できない。 効果は1日400µg以上という検討された範囲では用量によらず、単独か他のビタミン・ミネラルとの併用かでも変わらなかった。 同じレビューは、口蓋裂・口唇裂・先天性心血管欠損・流産・その他の先天異常については明確な効果を示していない(いずれも信頼区間が1をまたぐ)。 組み入れられた5試験のうち、バイアスのリスクが低いと判定されたのは1試験だけである。 「メチル化サイクルでの役割」「MTHFR遺伝子多型と活性型葉酸の選択」「加熱調理で失われやすい」「日本人の平均摂取量は推奨量を下回る」「妊娠前4週〜妊娠12週」については、いずれも出典を示せない。
神経管閉鎖障害を予防する——ただし「再発」と「初発」は分けて読む
コクランレビュー(De-Regil ら 2015)は5試験・7,391名の女性を組み入れ、妊娠前後の葉酸補給が神経管閉鎖障害(二分脊椎・無脳症など)を予防することを示しました(リスク比0.31、95%CI 0.17〜0.58、6,708出生、質の高いエビデンス)。 ここは分けて読む必要があります。再発の予防——過去に神経管閉鎖障害のあった妊娠を経験した人での再発——には有意な効果が認められています(リスク比0.34、95%CI 0.18〜0.64、4試験・1,846出生)。一方初発の予防を評価したのは1試験のみで、効果の証拠は得られていません(リスク比0.07、95%CI 0.00〜1.32。ただし葉酸群では発生が0件でした)。効果は1日400µg以上という検討された範囲では用量によらず、単独か他のビタミン・ミネラルとの併用かでも変わりませんでした。
- リスク比0.31
- 神経管閉鎖障害のリスク比(95%CI 0.17〜0.58)
- 7,391人
- メタ分析の対象人数
用量と形態について ─ コクランレビューが述べている範囲
コクランレビューが形態について述べているのは次の1点だけである。 葉酸を単独で与えても、他のビタミン・ミネラルと一緒に与えても、神経管閉鎖障害への効果は変わらなかった。 また1日400µg以上という検討された範囲では、用量による違いも見られなかった。 抄録にあるのは「400µg(0.4mg)以上」であって、上限は示されていない。
- 400µg以上
- コクランレビューが検討した1日量の範囲(この範囲では用量による違いは見られなかった)
「食事だけでは足りない」「妊娠前4週から」について ─ 出典を示せない
収録しているもう1件はWHO(2012)のガイドラインだが、これは「妊娠中の女性への鉄と葉酸の毎日の補給」についてのものであり、妊娠前(受胎前)の補給を扱ったものではない。 妊娠前から始めることの根拠として、本記事はこれを引くことができない。 いつから補給を始めるべきかについて、本記事は出典を示せない。 収録したコクランレビューは開始時期も期間も比較していない。 本記事の情報は教育・参考目的であり、医療上のアドバイスではありません。
同じレビューが「明確な効果を示さなかった」項目
葉酸補給が予防するとコクランレビューが結論しているのは、神経管閉鎖障害である。それ以外の先天異常については明確な効果を示していない。 著者らの結論は「葉酸は単独でもビタミン・ミネラルとの併用でも神経管閉鎖障害を予防するが、他の先天異常に対する明確な効果は無い」である。 具体的には次のとおりで、いずれも信頼区間が1をまたいでいる。 信頼区間が1をまたぐことは「効果が無い」ことの証明ではない。予防的とも有害とも判定できていない、という意味である。 口蓋裂(リスク比0.73、95%CI 0.05〜10.89、3試験5,612出生、質の低いエビデンス)、口唇裂(0.79、0.14〜4.36、同)、先天性心血管欠損(0.57、0.24〜1.33、同)、流産(1.10、0.94〜1.28、5試験7,391妊娠、質は中程度)、その他の先天異常(0.94、0.53〜1.66、同3試験)。 新生児死亡、母体の血中葉酸、満期時の貧血を評価した試験は、このレビューに組み入れられていない。 組み入れられた5試験のうち、バイアスのリスクが低いと判定されたのは1試験だけである。 残りは無作為化の方法や割り付けの隠蔽が明確でなかった。参加者の盲検化は5試験とも行われているが、アウトカム評価者の盲検化は5試験とも不明である。
- 5試験中1件
- バイアスのリスクが低いと判定された試験の数
- 流産 RR 1.10
- 95%CI 0.94〜1.28(5試験7,391妊娠)。効果の向きを確定できていない(最大28%の相対増加とも矛盾しない)
訂正履歴訂正1回・撤回した原文10件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 出典を照合した結果、以前この記事が公開していた次の記述を撤回した。
①「ただしこの効果の大部分は「再発の予防」で確かめられたものである」——サブグループが有意か非有意かということから、全体の推定値への寄与の割合を読み取ることはできない。初発の点推定(0.07)は1未満で予防の向きだが、95%信頼区間は0.00〜1.32で1をまたいでおり、効果の有無も大きさも確定できない。非有意であることは、効果が無いことも、全体への寄与が小さいことも意味しない。
②「なお神経管の閉鎖は妊娠3〜4週頃に完了するため、妊娠に気づく前から補給を開始することが重要とされています(これはコクランレビューの所見ではなく、発生学と各国の推奨に基づく一般的な考え方です)」——収録したコクランレビューは補給の開始時期も期間も比較しておらず、この週数の出どころを本記事は示せない。
③「葉酸(フォレート)は一炭素代謝(メチル化サイクル)において中心的な役割を果たします」、④「ホモシステインをメチオニンに変換する反応や、DNAのメチル化・合成に不可欠な補酵素です」、⑤「MTHFR遺伝子多型を持つ人は葉酸の活性型(メチルテトラヒドロ葉酸)への変換効率が低い場合があり、活性型葉酸(メチル葉酸)のサプリを選択することが考慮されます」——収録した出典にこれらの記載は無く、遺伝子型によって葉酸の形態を選び分けることを検証した研究も収録していない。
⑥「葉酸は緑色野菜・豆類・レバーなどに多く含まれますが、加熱調理で失われやすく、日本人の平均摂取量は推奨量を下回ることが多いとされています」——日本人の摂取量を調べた資料を収録していない(含有する食品の例示についても出典を示せない)。⑦「世界保健機関(WHO)や各国の保健機関は、妊娠を計画しているすべての女性に対して葉酸サプリの補給を推奨しており、妊娠前4週〜妊娠初期12週の継続摂取が特に重要とされています」——妊娠前からの補給の推奨と妊娠前4週〜妊娠12週という期間の2つを撤回した。収録しているWHO(2012)のガイドラインは「妊娠中の女性への鉄と葉酸の毎日の補給」についてのもので、妊娠前(受胎前)の補給を扱ったものではない。コクランレビューも補給の期間を比較していない。
⑧「「400〜800µg/日」という上側の数値」——抄録にあるのは「400µg(0.4mg)以上」であって、上限は示されていない。この数値は統計カードの値で、日本語として連続した原文を取り出せないため `removed` には収められない。原文は「400〜800µg/日」/「妊娠前・妊娠初期の推奨葉酸補給量」である。
公開時にあった統計カードのうち、次の3枚も今の記事には無い。「約72%」/「神経管閉鎖障害の相対リスク低下率」と「6,105人」/「メタ分析の対象人数」は、抄録の値(リスク比0.31、5試験7,391名)に置き換えられている。「妊娠前4週〜妊娠12週」/「特に重要な補給期間」は、⑦と同じ理由で外されている。
あわせて、第2節の見出しを「メチル化サイクルとMTHFRについて ─ 出典を示せない」から「用量と形態について ─ コクランレビューが述べている範囲」に変えた。③〜⑤を撤回した結果、その節に残ったのが用量と形態の話だけになったため。
見出しとタイトルにも撤回した命題が残っていた。⑨「食事だけでは足りない?補給が推奨される理由」(第3節の見出し)——食事からの摂取量と補給の必要性を比べた資料を収録していない。⑩「神経管閉鎖障害を72%減らすという強いエビデンス」(第1節の見出し)——抄録が報告しているのはリスク比0.31で、72%という相対リスク低下率は記事側の換算である。また「強い」という評価は、5試験中4試験がバイアスのリスクを低と判定されていない点と合わない。
このほか、「メチル化サイクルと葉酸の役割」(第2節の見出し)と「同じレビューが「効果を示さなかった」項目」(第4節の見出し)も撤回した。前者は③〜⑤と同じ理由で、後者は非有意を「効果を示さなかった」と書いていたためである(現在は「明確な効果を示さなかった」に改めてある)。この2つは現行の本文・見出しとの語の重なりが大きく `removed` に収められないので、ここに原文で記録する。
タイトルも「葉酸(フォレート)サプリの使い方:妊娠前から飲むべき理由とメチル化の役割」から「葉酸サプリ ─ コクランレビューが示していること、示していないこと」に変えた。妊娠前からの補給を推奨する根拠も、メチル化の役割も、収録した出典からは示せないため。
撤回した原文10件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
ただしこの効果の大部分は「再発の予防」で確かめられたものである
なお神経管の閉鎖は妊娠3〜4週頃に完了するため、妊娠に気づく前から補給を開始することが重要とされています(これはコクランレビューの所見ではなく、発生学と各国の推奨に基づく一般的な考え方です)。
葉酸(フォレート)は一炭素代謝(メチル化サイクル)において中心的な役割を果たします。
ホモシステインをメチオニンに変換する反応や、DNAのメチル化・合成に不可欠な補酵素です。
MTHFR遺伝子多型を持つ人は葉酸の活性型(メチルテトラヒドロ葉酸)への変換効率が低い場合があり、活性型葉酸(メチル葉酸)のサプリを選択することが考慮されます。
葉酸は緑色野菜・豆類・レバーなどに多く含まれますが、加熱調理で失われやすく、日本人の平均摂取量は推奨量を下回ることが多いとされています。
世界保健機関(WHO)や各国の保健機関は、妊娠を計画しているすべての女性に対して葉酸サプリの補給を推奨しており、妊娠前4週〜妊娠初期12週の継続摂取が特に重要とされています。
食事だけでは足りない?補給が推奨される理由
神経管閉鎖障害を72%減らすという強いエビデンス
葉酸(フォレート)サプリの使い方:妊娠前から飲むべき理由とメチル化の役割
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出典
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吉崎 槙吾
