
チートデイ(1日のオーバーカロリー)は代謝停滞を打破できるか
言われていること
ボディビル系YouTube・フィットネス系SNS全般
減量が止まったら週1回チートデイを入れるのが定番の解決策。大量に食べることで代謝が上がり、停滞が解消される。レプチンも回復するから翌週からまた落ちやすくなる。
研究が示すこと
- 正直に言うと、1日のオーバーカロリーが停滞を打破するかを直接検証した研究を、本記事は収録していない。
- 最も近いのは Dirlewanger ら(2000)だが、これは減量中の人ではなく健常で痩せ型の女性10名を対象に、1日ではなく3日間の過剰摂取を行った研究である。
- そこでは炭水化物の過剰摂取で血中レプチンが28%、24時間エネルギー消費が7%増えた——つまり「食べれば代謝が上がる」という方向自体は観察されている。
- ただし基礎代謝と身体活動中の消費は変わらず、レプチンの増加量とエネルギー消費の増加量に関連もなかった。
- 脂質での過剰摂取では、レプチンもエネルギー消費も動かなかった。
- 一方 Trexler ら(2014)は、減量に伴ってホルモン・ミトコンドリア効率・エネルギー消費が変化し、これらが減量を鈍らせ再増加を促すと整理しているが、ナラティブレビューであってチートデイの効果を定量したものではない。
- 要するに、収録している出典はチートデイを否定してもいないし、検証してもいない。
「チートデイで代謝が上がる」を確かめた研究を、本記事は収録していない。ただし否定した研究も収録していない——3日間の炭水化物過剰摂取では実際に24時間の消費量が7%上がっており、方向としては経験則と矛盾しない。分からないのは、その程度の上乗せが減量の停滞を動かすのか、そして1日だけでも起きるのかという点である。決着させるには、停滞期にある減量者を「1日だけ維持カロリー超まで戻す群」と「そのまま制限を続ける群」に割り付け、エネルギー消費とその後の脂肪の減りを追う試験が要る。現時点では、代謝への期待を根拠にチートデイを設計する材料を、本記事は収録していない、というのが誠実な言い方になる。
2週間程度のダイエットブレイクは有効か
言われていること
エビデンス系フィットネスコンテンツ、栄養コーチング界隈
チートデイよりもっと長い休止期間(ダイエットブレイク)を挟む方法もある。2週間ほど維持カロリーに戻すことで体が回復し、その後また減量を再開しやすくなると言われる。
研究が示すこと
- こちらは直接的なRCTがある。
- Byrne ら(2017)のMATADOR試験では、肥満男性を16週間の連続的なエネルギー制限群と、2週間の制限と2週間のエネルギー均衡を交互に繰り返す間欠群(計画期間30週)に割り付けた。
- 制限期の摂取量はどちらも維持必要量の67%で揃えている。
- プロトコル通り完了した36名では、間欠群の方が体重(14.1kg vs 9.1kg)も脂肪量(12.3kg vs 8.0kg)も減りが大きく、除脂肪量の減少には差が出なかった。
- 体組成の変化で調整した安静時エネルギー消費の低下も間欠群で小さかった。
- 重要なのは、間欠群の「休み」の期間の体重変化が平均0.0kgだったこと——維持カロリーに戻しただけで、過食はしていない。
- Peos ら(2019)のレビューも、制限の合間にエネルギー均衡を挟むと適応反応の一部が抑えられる可能性を整理しているが、同時に「アスリート集団での有効性のエビデンスは不足している」と著者自身が明記している。
2週間単位のダイエットブレイクには、連続的な減量より体重・脂肪の減りが大きかったRCTが1本ある。ただし対象は肥満男性で、女性・トレーニング経験者・すでに絞れている人に同じことが起きるかは分かっていない(Peos らもアスリートでのエビデンス不足を明言している)。そして条件は「維持カロリーに戻す」ことで、過食を許すチートデイとは別物である。
チートデイの心理的メリットは減量継続に寄与するか
言われていること
ダイエットコーチ・フィットネスコミュニティ全般
チートデイの一番の意味は精神的なリフレッシュ。厳しいダイエットを続けるためのガス抜きで、「今週頑張ればチートデイがある」という動機付けになる。科学的に証明できなくても、続けられることがいちばん大事。
研究が示すこと
- 「チートデイ」という形式が減量の継続率を上げるかを検証した研究を、本記事は収録していない。
- 食事制限の厳格さと食行動の乱れの関係は食行動研究の領域で長く議論されているテーマだが、本記事ではその個別の研究にあたって検証していないため、ここで数字や結論を引くことはしない。
- 分かっていないのは、(1) 週1回の無制限な食事日が継続率を上げるのか下げるのか、(2) 上げる人と下げる人を事前に見分けられるのか、の2点である。
ここは、本記事が収録している出典では答えの出せない領域である。継続率がどれだけ結果を左右するのかも、無制限のチートデイがその継続率を上げるのかも、収録している出典からは評価できない。決着させるには、減量者を「週1回の無制限な食事日」と「計画的に緩めた食事日」に割り付け、脱落率と過食エピソードを追う試験が要る。その試験が出るまでは、どちらが良いかを結論できない、というのが現時点の正直な答えになる。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文2件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第3ラウンドに書いていた「臨床の現場では『許可された過食日』が引き金になる人がいることが指摘されており、少なくとも全員に勧められる形式ではない可能性が高い」と、結論の「『続けられることがいちばん大事』という経験則そのものは否定されておらず、むしろ実務的には妥当だろう」——を撤回した。臨床での指摘も、継続率が結果をどれだけ左右するかも、それを扱った出典を本記事は収録していない。
撤回した原文2件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
臨床の現場では「許可された過食日」が引き金になる人がいることが指摘されており、少なくとも全員に勧められる形式ではない可能性が高い
「続けられることがいちばん大事」という経験則そのものは否定されておらず、むしろ実務的には妥当だろう
関連する研究
出典
- Byrne NM et al. (2017) International Journal of Obesity — Intermittent energy restriction improves weight loss efficiency in obese men (MATADOR study)
- Trexler ET et al. (2014) J Int Soc Sports Nutr — Metabolic adaptation to weight loss: implications for the athlete
- Peos JJ et al. (2019) Sports — Intermittent Dieting: Theoretical Considerations for the Athlete
- Dirlewanger M et al. (2000) Int J Obes Relat Metab Disord — Effects of short-term carbohydrate or fat overfeeding on energy expenditure and plasma leptin concentrations in healthy female subjects
公開日: / 更新日:


次に読む
- 研究 vs 勘
アルコールと筋タンパク質合成について、収録した出典が言える範囲
「週末の一杯くらいは問題ない」「飲んでも筋肉は落ちない」——アルコールとトレーニングの関係について、収録した研究は何を示し、何を示していないのか。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「炭水化物は夜に摂ると太る」は本当か? 通説 vs 研究
「夜の炭水化物は太る」という言葉はダイエット界隈で定説のように語られる。夕食のご飯を控える人は多く、カーボカットの動機になっていることも珍しくない。では研究はどう言っているか。
吉崎 槙吾
- 研究 vs 勘
「PFCさえ合えば食品の質は何でもいい(IIFYM)」は本当か? 通説 vs 研究
「タンパク質・脂質・炭水化物の数字が揃えば、食べるものは何でもいい」——IIFYM(If It Fits Your Macros)はフィットネスコミュニティで広く支持されるアプローチだ。カロリー計算の自由度を高め、食の楽しさを守れる一方、食品の質を完全に無視することへの懸念も根強い。実際のところ、研究は何を示しているのか。
吉崎 槙吾