
トレ前にSNSをダラダラ見ると集中が切れて追い込めない
言われていること
ジム指導者・トレーニング系インフルエンサーの間でよく言われる注意
スマホでSNSをダラダラ見てから筋トレに入ると、集中力が切れて追い込みが甘くなる。トレ前のスマホいじりは避けたほうがいい、という注意はジムでよく言われる。
研究が示すこと
- Gantoisら(2021)は、レクリエーションレベルの訓練経験を持つ成人16名を対象にクロスオーバー試験を実施した。
- トレーニング前にスマートフォンでSNSアプリを30分間使用すると、ドキュメンタリー視聴(対照条件)と比べて主観的なメンタル疲労感が有意に増加し(p=0.004)、その後のハーフバックスクワット(80%15RM×3セット)のボリュームロード(総負荷量)が有意に低下した(p=0.006)。
- ただし知覚的運動努力(RPE)やモチベーションには差がなく、対象は16名の単一研究である点は留意が必要。
トレ前のダラ見SNSがボリューム(総負荷量)を落とすという主張には、単発ながら実際のRCTの裏づけがある。ただしn=16の小規模研究のため、過度に一般化はできない。
気のせいで、最大筋力やパワーには関係ない
言われていること
一般的な反論・体感を重視する層の主張
スマホを見たくらいで筋トレの質が落ちるなんて気のせいだ。ちゃんと重量が扱えれば問題ない。
研究が示すこと
- Alix-Fagesら(2023)は、訓練経験のある成人25名を対象にランダム化二重盲検クロスオーバー試験を実施した。
- 30分間のスマホSNS利用とStroop課題(認知的干渉課題)はいずれも対照条件よりメンタル疲労の自覚を有意に高めたが(SNS: p=0.007、Stroop: p<0.001)、ベンチプレスのForce-Velocityプロファイル・1RM・垂直跳び(CMJ)のいずれにも有意な変化はなく、効果量も無視できる〜小さい範囲(≤0.24)だった。
『気のせい』は言い過ぎだが、最大筋力・パワー発揮という指標に限れば『メンタル疲労はほぼ影響しない』という主張のほうが研究に支持される。効くのは総負荷量(ボリューム)側であって、1回の最大出力ではなさそうだ。
じゃあトレ前のスマホは絶対ダメなのか
言われていること
極端な一般化・SNS上の断片的な言説
スマホは筋トレの敵。トレ前もインターバル中も触らないほうがいい。
研究が示すこと
- 両研究とも、メンタル疲労を誘発したのは『SNSアプリを受動的に見る』行為であり、スマホ利用全般を否定する結果ではない。
- 音楽再生やインターバルタイマーなど目的を持った短時間の使用と、注意資源を消耗する長時間の受動的なSNS閲覧は区別して考える必要がある。
- 現時点の研究は『総負荷量(ボリューム)を落とす可能性がある』ことと『最大筋力・パワーには出にくい』ことの両方を示しており、スマホ利用全般を一律に禁止する根拠にはならない。
『スマホは絶対ダメ』は言い過ぎ。問題になりうるのは受動的にSNSを長時間見て注意資源を消耗することで、音楽やタイマーなど目的的な使用は別物として扱ってよい。ボリュームを稼ぎたい日は、休憩中の長いSNS閲覧を控える価値はありそうだ。
関連する研究
出典
- Gantois P et al. (2021) Percept Mot Skills — Mental Fatigue From Smartphone Use Reduces Volume-Load in Resistance Training: A Randomized, Single-Blinded Cross-Over Study
- Alix-Fages C et al. (2023) Motor Control — Mental Fatigue From Smartphone Use or Stroop Task Does Not Affect Bench Press Force–Velocity Profile, One-Repetition Maximum, or Vertical Jump Performance
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