本文へスキップ
BODYDATA
JPEN
研究 vs 勘

セット間にポージングすると筋肉に効くのか? 「フレックス休憩」通説 vs 研究

公開日:

執筆: 吉村 浩嗣監修: 染田 智信

セットの合間にダンベルを置き、力こぶや大腿四頭筋にグッと力を入れてポーズを取る——ジムでよく見かける光景であり、SNSでも「休憩中にフレックスするとパンプが持続して筋肥大が加速する」という主張がよく語られる。実際にセット間の休憩中に何をするかで、筋肥大の結果は変わるのだろうか。無負荷での等尺性収縮(フレックス)を検証したRCTと、質の異なるアプローチである「セット間ストレッチ」の知見を突き合わせて確認する。

Round1

セット間にギュッとポーズ(フレックス)を取ると、通常の休憩より筋肥大が促進される

言われていること

ボディビル系のジム文化・SNSでのトレーニング解説

セットの合間に対象筋にグッと力を入れてポーズを取れば、パンプ(一時的な張り)が持続して血流も保たれるので、ただ休むよりも筋肥大の刺激になる。

VS

研究が示すこと

  • Schoenfeldら(2020)のRCTでは、訓練経験者の男性27名を、通常の受動的休息群と、各セット後30秒間・全力の無負荷等尺性収縮(フレックス)を行う群に無作為割り付けし8週間比較した。
  • 肘屈筋・上腕三頭筋・大腿外側部の筋厚には統計的に意味のある差はなく、大腿中央部のみわずかな増加傾向が見られたが、信頼区間は0をまたいでおり確定的な効果とは言えない。
  • むしろ下半身の最大筋力(レッグプレス1RM)はフレックス群がやや劣る傾向すら見られた。
判定

訓練経験者の男性においては、ほとんどの部位でセット間フレックスが筋肥大を追加で高めるという根拠はない。大腿中央部だけわずかな増加傾向が見られたが、単発の小規模研究であり過信はできない。

信頼度:根拠は弱い
Round2

休憩中は完全に脱力するより、何らかの刺激を入れ続けた方が良い

言われていること

時短トレーニング志向のコーチング解説

何もせず休むのはもったいない。休憩中も筋肉に負荷や刺激を与え続けた方が、トレーニング時間あたりの効果は高まるはずだ。

VS

研究が示すこと

  • 休憩中に何かを加える戦略として、より根拠があるのは無負荷のフレックスではなく「セット間ストレッチ」だ。
  • Schoenfeldら(2022)のレビューは、負荷をかけたまま、あるいは受動的にセット間でストレッチを挟むと、動物実験で示唆されるmTORC1経路の活性化を介して筋肥大を後押しする可能性があるとまとめている。
  • 少数だが未訓練の若年男性を対象にした8週間程度のヒト研究でも、セット間ストレッチ群のほうが筋厚増加がやや大きかった例が報告されている。
  • ただし著者ら自身がこの分野を「予備的」と位置づけており、負荷をかけたストレッチの追試(Van Everyら 2022)ではヒラメ筋にわずかな効果、腓腹筋には明確な効果がないなど、部位によって結果が割れている。
判定

休憩中に何かを足すなら、無負荷のフレックスよりセット間ストレッチの方がわずかに分があるというのが現状の研究。ただしどちらも決定的な効果とは言えず、特にストレッチは未訓練者中心のデータで対象・部位も限定的。フレックスとストレッチは別物として区別すべき。

信頼度:賛否が分かれる
Round3

研究で根拠が弱いなら、ポージングの練習自体が無意味ということか

言われていること

トレーニング効率を重視する一部の意見

筋肥大に直接効かないなら、ポージングの練習自体が時間の無駄ということになる。

VS

研究が示すこと

  • 今回検証したのは「筋肥大の直接的な手段としてのセット間フレックス」であり、ボディビル競技における「ポージング練習」そのものとは目的が異なる。
  • ポージングは大会でのステージ表現・コンディション(むくみや張りの見え方)の把握・審査でのアピール力に関わる実務的なスキルであり、この価値は今回の研究の射程外にある。
  • 研究が示したのは「セット間にフレックスを挟んでも追加の筋肥大効果は乏しい」という一点で、ポージング練習全般の意義を否定するものではない。
判定

「筋肥大の直接的な近道」としてのフレックスは根拠が弱いが、それは競技用ポージングの価値を否定する話ではない。目的(筋肥大戦略か、競技スキルか)を混同しないことが大切。

信頼度:根拠は弱い

公開日:

吉村 浩嗣

執筆

吉村 浩嗣

BODYDATA運営者 / INVOLVE代表

「なんとなく良さそう」で選ばない。データで確かめてから体で試す、を続けています。

プロフィールを見る
染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています

Read Next

次に読む