ミオスタチン遺伝子変異による著しい筋肥大 ― ある小児の症例報告
Schuelke M, Wagner KR, Stolz LE, et al.
研究はまだ限定的で、今後の検証が必要な段階
サマリー
生まれつき並外れて筋肉質だった小児の症例報告。筋肥大にブレーキをかけるホルモン「ミオスタチン」をコードするMSTN遺伝子に機能喪失変異(両アレル)を持ち、筋量が同年代を大きく上回り筋力も高かった。ミオスタチンの不活化は、二重筋を示す牛(ベルギーブルーなど)や筋肉隆々の「マイティマウス」と同様に、ヒトでも著しい筋肥大を引き起こすことを初めて示した。ただしn=1の症例報告であり、まれな変異。一般集団には外挿できない。
この研究で分かること
- 1
MSTN(ミオスタチン)遺伝子の機能喪失変異を持つ小児は生後から著しく筋肉質だった
- 2
筋量・筋力が同年代を大きく上回った
- 3
ミオスタチン不活化は牛(二重筋)やマウスと同様、ヒトでも著しい筋肥大を起こす
- 4
n=1の症例報告でまれな変異。一般集団には外挿できない
関連する研究
ACTN3「スプリント遺伝子」R577X多型とパワー系エリート選手の関連 ― メタ分析
PLoS One, 2019
44研究・約2万人(パワー系エリート選手4,850名/対照15,903名)を統合したメタ分析。速筋線維で働くタンパク質α-アクチニン3をコードするACTN3遺伝子のR対立遺伝子は、パワー系エリート選手にやや多かった(R allele のオッズ比 約1.20 [1.12〜1.30])。女性ではより明確(OR 1.58)。ただし効果量は小さく、すべての遺伝子型にエリート選手は存在する。遺伝はパワー・スプリント適性の素因の一部にすぎず、単独で才能を決めるものではない。
ヒトの除脂肪体重の上限 ― 力士を対象にした研究
American Journal of Human Biology, 1994
プロ力士37名・ボディビルダー14名・非鍛錬者26名の体組成を比較した研究。力士の除脂肪体重はボディビルダーより有意に大きく、6名は除脂肪体重が100kgを超え、最大は121.3kg(身長186cm・体重181kg・体脂肪率33.0%)だった。体脂肪率は力士26.1%・ボディビルダー10.9%と力士のほうが高いが、脂肪の下の除脂肪量(筋肉・骨など)は力士が上回る。「太って見える」身体の強さの正体が脂肪ではなく圧倒的な除脂肪量であることを示す。除脂肪体重/身長比 0.7kg/cm付近がヒトの上限の可能性と示唆した。
この研究を扱った記事
最終確認: