
重曹摂取で高強度・短時間運動のパフォーマンスが向上する
言われていること
スポーツ栄養系コンテンツ、一部のアスリート
重曹を運動前に飲むと筋肉の酸性化を防いで疲労が遅れ、スプリントや筋力発揮が長く続く。
研究が示すこと
- Carr, Hopkins & Gore(2011、Sports Med)のメタ分析(重曹は38報・137推定値)が報告しているのは、男性アスリートが盲検下で1分間のスプリント1本を行う条件で、典型量である体重1kgあたり3.5 mmol(約0.3g)の摂取により平均パワーが1.7%向上する「おそらく中程度の(possibly moderate)」効果である。
- 90%信頼限界は ±2.0% で0をまたいでおり、効果の向きを確定できる結果ではない。 同論文は小さい効果の閾値を0.5%、中程度を1.5%としている。
- 研究・被験者の特徴による修飾効果として、同論文は次の「小さい」効果を挙げている。いずれも90%信頼限界を併記する。 用量が1 mmol/kg増えるごとに +0.5%(±0.6%)/スプリントの本数が5本増えるごとに +0.6%(±0.4%)/テスト時間が10倍になるごとに −0.6%(±0.9%。例: 1分→10分)/非アスリートで −1.1%(±1.1%)/女性で −0.7%(±1.4%)。 5つのうち4つは信頼限界が0をまたぐ。研究環境間の説明できないばらつきは典型的に ±1.2% だった。 同じメタ分析は、クエン酸ナトリウム(16報・45推定値、典型量1.5 mmol/kg ≒ 0.5 g/kg)については「不明瞭(unclear)」な0.0%(±1.3%)、塩化アンモニウム(5報・6推定値、典型量5.5 mmol/kg ≒ 0.3 g/kg)については「おそらく中程度の」1.6%(±1.9%)の低下を報告している。 著者らの推奨は「個人差はありうるが、短時間の高強度レースで平均パワーを1.7%(±2.0%)高めるために0.3〜0.5 g/kg/BM の摂取を推奨する」である。
短時間の高強度で、平均パワーの向上は1.7%(90%CL ±2.0%)。この信頼限界は0をまたぐ。 著者らは0.3〜0.5 g/kg/BM の摂取を推奨している。 修飾効果として、テスト時間が10倍になるごとに −0.6%(±0.9%)、非アスリートで −1.1%(±1.1%)、女性で −0.7%(±1.4%)と報告されているが、これらの信頼限界も0をまたぐため、方向の示唆として読むにとどめる。
重曹の消化器系副作用は避けられない
言われていること
重曹を試して失敗した経験者、一部のコーチ
重曹を飲むと必ずお腹を壊す。副作用が強すぎて実用的ではない。
研究が示すこと
- Carr, Hopkins & Gore(2011、Sports Med)のメタ分析は、重曹とクエン酸ナトリウムの消化器症状の定量化を「重要な今後の研究課題」として挙げている。副作用の頻度を報告した論文ではない。 消化器症状を実際に測っているのは、同じ2011年に別の著者構成で出た論文(Carr 2011、Int J Sport Nutr Exerc Metab)である。 身体活動のある13名が8通りの摂取プロトコル(+プラセボ)を試したクロスオーバー試験で、食事と一緒に摂った条件で消化器症状の発生が最も少なく、[HCO3-](30.9 mmol/kg)とpH(7.49)も最も高かった。発生が最も多かったのは0.3g/kgを溶液で摂ってから90分後である。 著者らは、高炭水化物食と一緒に摂る場合は運動の120〜150分前に摂ることで消化器症状を減らせると示唆しつつ、「8つのプロトコルのpHと[HCO3-]の変化は同程度だったので最適なプロトコルは推奨できない」と結論している。 Siegler ら(2012、男性8名)でも、消化器の不快感は180分前を除くすべての時点で摂取前より有意に高かった。著者らは、摂取から180分後には有意な消化器の不快感を経験しにくいとしている。 実際の発生頻度を示せる出典を、本記事は収録していない。
副作用の発生頻度について、本記事は出典を示せない。 対策については、食事と一緒に摂った条件で消化器症状の発生が最も少なかったという13名のクロスオーバー試験がある(Carr 2011、Int J Sport Nutr Exerc Metab)。ただし著者ら自身が「最適なプロトコルは推奨できない」としている。 摂取から180分後には有意な消化器の不快感を経験しにくい、という報告もある(Siegler 2012、男性8名)。
訂正履歴訂正1回・撤回した原文4件
公開後に撤回・訂正した内容です。本文は現在の知見だけを書いています。何をどう直したかを確かめられるように、経緯をここに残しています。
- 第2ラウンドに書いていた「吐き気・膨満感・下痢といった消化器系の副作用は実践の場で広く報告されている」、「『参加者の30〜50%が経験する』といった具体的な数字も、『運動90〜120分前に食事と一緒に摂ると軽減できる』といった対策も、本サイトが根拠を示せるものではない」、およびその結論の「副作用が実在することは広く語られているが、頻度も対策も本サイトが根拠を示せる段階にない」「実際に使うなら、競技当日ではなく練習日に少量から試すのが妥当だろう——これは経験則であって、研究に裏づけられた手順ではない」——を撤回した。「対策も本サイトが根拠を示せるものではない」という判断そのものが誤りだった。 サイト内の別記事が収録している Carr ら(2011、Int J Sport Nutr Exerc Metab)が、まさに8通りの摂取プロトコルで消化器症状を測っている。本記事にもこの出典を追加し、Siegler ら(2012)とあわせて、対策について言えることを本文に書いた。どの程度広く語られているかを示す資料も、実際の発生頻度を示せる出典も、本記事は収録していない。練習日に少量から試すという手順も、それを検証した研究を収録していない。
撤回した原文4件
公開されていた本文の文字列です(運営者による要約ではありません)。現在の本文に残っていないことは、ビルドのたびに機械で検査しています。過去の公開内容に含まれることは、変更履歴の全体と突き合わせる検査を用意していますが、これは全履歴が必要なため公開ビルドでは自動実行していません。どちらの照合も、また上の表示も、強調の印(アスタリスク2つ)と改行・空白の違いは無視します。1件に複数の記述が含まれる記録もあるため、件数は原文の件数であって撤回した主張の数ではありません。
吐き気・膨満感・下痢といった消化器系の副作用は実践の場で広く報告されている
したがって「参加者の30〜50%が経験する」といった具体的な数字も、「運動90〜120分前に食事と一緒に摂ると軽減できる」といった対策も、本サイトが根拠を示せるものではない
副作用が実在することは広く語られているが、頻度も対策も本サイトが根拠を示せる段階にない
実際に使うなら、競技当日ではなく練習日に少量から試すのが妥当だろう——これは経験則であって、研究に裏づけられた手順ではない
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関連する研究
出典
- Carr AJ, Hopkins WG, Gore CJ (2011) Sports Med — 急性のアルカローシス・アシドーシスがパフォーマンスに与える影響(メタ分析、重曹は38報・137推定値)
- Matson LG & Tran ZV (1993) IJSN — メタ分析
- Carr AJ, et al. (2011) Int J Sport Nutr Exerc Metab — 重炭酸ナトリウムが [HCO3-]・pH・消化器症状に与える影響(クロスオーバー、13名、8つの摂取プロトコル)
- Siegler JC, et al. (2012) J Strength Cond Res — 重炭酸ナトリウムの摂取タイミングは影響するか(男性8名、運動の60/120/180分前)
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吉崎 槙吾
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重曹(重炭酸ナトリウム)─ 収録した3件が示している用量・タイミング・消化器症状
用量。 メタ分析(Carr 2011、Sports Med。重曹は38報・137推定値)が典型量として挙げているのは体重1kgあたり3.5 mmol(およそ0.3g/kg)で、男性アスリートが盲検下で1分間のスプリント1本を行う条件で平均パワーが1.7%向上した(90%信頼限界 ±2.0%)。この限界は0をまたぐ。 タイミング。 摂取時刻を直接比べた Siegler ら(2012、男性8名)では、運動の60分前・120分前・180分前のあいだで血中の緩衝能にもスプリント成績にも差が無かった。 消化器症状。 13名のクロスオーバー試験(Carr 2011、Int J Sport Nutr Exerc Metab)では、食事と一緒に摂った条件で症状の発生が最も少なく、[HCO3-]とpHも最も高かった。最も多かったのは溶液で摂ってから90分後である。 著者らは、高炭水化物食と一緒なら運動の120〜150分前に摂ることを示唆しつつ、8つのプロトコルの変化は同程度だったので最適なプロトコルは推奨できないとしている。 著者らの推奨は「短時間の高強度レースで平均パワーを1.7%(±2.0%)高めるために0.3〜0.5 g/kg/BM」である。
吉崎 槙吾


